高齢者がむせやすいさつまいも、ぬめりで誤嚥が心配な里いもをおいしく食べやすくするレシピ【いも羊羹】【ツナと里いものサラダ】NG調理法も【管理栄養士解説】
ホクホクの甘いさつまいも、ねっとりと味わい深い里いも。「どちらも秋冬が旬で今が一番おいしく栄養価が高いんですよ」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。ただし、介護食で使うときには「やってはいけない」NGポイントがあるという。誤嚥を防ぎ、旬の食材をおいしく食べてもらうための調理ポイントを教えてもらった。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」
さつまいも・里いもを介護食に使うときの注意ポイント
秋から冬が本格的な旬のいも類の中でも、さつまいもや里いもは、ぜひ旬のおいしい時期に食べてほしいのですが、介護食に使うときに注意が必要です。
ホクホクしたさつまいも、ぬめりのある里いもは、その食感から、調理方法によっては高齢者にとって食べにくくなってしまいます。
電子レンジ加熱は甘みが引き出せない
さつまいもの主成分はでんぷんです。ビタミンCのほか、余分な塩分を体の外に排出する働きのあるカリウムも豊富。いも類の中でもとくに食物繊維が多いのが特徴です。
さつまいもは、ゆっくり加熱することで酵素の働きが活発になり、甘みを強く感じられるようになります。さつまいもの甘みを最大限に引き出すには、電子レンジで一気に加熱するよりも、「蒸す」「オーブンでじっくり加熱」する調理が向いています。
ホクホク食感はむせやすいので注意
さつまいもの種類も豊富で、日本でも多くの品種が流通しています。紅はるか、安納芋、鳴門金時、シルクスイートなどはその代表格です。
さつまいももじゃがいもと同様に種類によって「ほくほく」、「しっとり」など少しずつ食感に違いがあります。
紅あずまや鳴門金時はホクホクした食感、安納芋はしっとりした食感が特徴的です。
ホクホクした状態ものだと、口の中の唾液が吸収されてむせやすくなります。水分を一緒にとったり、ペースト状にする際に牛乳・バターなど加えてパサつきを抑えたりする工夫が必要です。
高齢者には、焼きいもが好きというかたがとても多い印象です。一度に多くの量を食べるとのどに詰まらせて誤嚥の原因になりやすいので、少しずつお茶などの水分と一緒に食べるようにしましょう。
満腹感を得やすいので食べ過ぎに注意
いもを使った料理は1日に70~140g程度が目安(農林水産省『食事バランスガイド』より)とされています。さつまいもなら約1/3〜1/2本、さといもは1~1個半くらいが目安量となっています(皮つきの状態)。
ただし、どちらも満腹感を感じやすいので、食欲があまりない高齢者の場合は100g程度までにしておくといいでしょう。
とくに高齢者の場合、食事でいも類をしっかり食べてしまうとお腹が一杯になってしまうので、3度の食事では、筋肉を作るもとになるたんぱく質を豊富に含む肉や魚、卵、大豆製品をしっかり摂ることが大切。
食が細い高齢者にはとくに、いも類は“間食”として取り入れるのがおすすめです。
むせやすいさつまいもを、滑らかな羊羹に
やわらかいも羊羹
<材料>
・さつまいも…大1本
・砂糖…30g
・粉寒天…3g
・水…100ml
<作り方>
【1】さつまいもの皮をむいて、1cm幅程度の輪切りにして水にさらす。
【2】【1】の水を切り、ひたひたの水が入った鍋に入れて柔らかくなるまで茹でる。
【3】熱いうちにつぶして砂糖を加えてよく混ぜる。
【4】【3】を裏ごしする。
【5】鍋に水・寒天を煮溶かしてから、【4】を加えてよく混ぜる。
【6】滑らかになったら、水でぬらした型に流し入れて冷蔵庫で冷やし固める。
【7】固まったら適当な大きさに切り分けて出来上がり。
里いもはぬめり成分による誤嚥に要注意
里いもの主成分はでんぷんです。ほかの芋類とくらべると水分が多くカロリーは比較的低く、カリウムも多く含まれています。
里いものぬめり成分であるガラクタン・グルコマンナンと呼ばれるものは、食物繊維の一種で、便秘予防や血中コレステロールの排出を促す働きが期待できます。
ぬめり成分は、皮の近くに多く含まれています。皮付きのまま茹でると、ぬめりや栄養成分が残りやすく、里いも特有の味をしっかり感じられます。
里いも自体、水分を多く含むので高齢者でも比較的食べやすい食材です。一方で、ぬめりが強すぎると誤嚥につながる恐れもあるので、だしやゆで汁を加えてマッシュ状にしたほうがより安心です。
熱いうちに調理しないと粘り気が出る
いも類は加熱して柔らかくなっても、その後冷めてしまうと粘りがでて、裏ごししたりつぶしたりすることが難しくなります。できたものも口触りが悪く食べにくくなってしまうので熱いうちに調理することが基本です。
熱々をマッシュして口当たりよく
ツナと里いものサラダ
<材料>
・里芋…3個
・ツナ缶…1缶
・粉チーズ…大さじ1
・マヨネーズ…大さじ3
・塩こしょう…少々
・青のり…少々
<作り方>
【1】里いもはよく洗い、表面に1周切り込みを入れておく。
【2】ひたひたの水が入った鍋に入れて柔らかくなったら鍋に水を入れ、竹串がスッと通るまで茹でる。
【3】皮をむいて熱いうちによくつぶす。
【4】【3】に油切りしたツナと調味料を加えてよく混ぜ、塩こしょうで味を調える。
秋が旬のいも類の栄養と介護食向けの調理のポイント、調理例をご紹介しました。「旬」の時期の食べものは栄養価も高く、自宅で過ごす機会が多くなった高齢者にとっては季節を感じられるものはよりおいしく感じられると思います。
ぜひご自宅での介護食作りにご活用ください。