コーラやサイダーにとろみをつける【とろみ炭酸】は高齢者におすすめ!その理由と上手なとろみのつけ方を写真入りでわかりやすく解説
「炭酸にとろみをつけると、すっきりとしたのど越しや爽快感で、嚥下機能が落ちがちな高齢者にも喜ばれます」と、介護施設で高齢者に向けた栄養サポートなどを行っている管理栄養士の川鍋仁美さん。炭酸飲料に特化したとろみ調整材も登場するなど、とろみ食市場の中でも注目の「とろみ炭酸」。炭酸のメリットや、とろみのつけ方を川鍋さんに教えてもらった。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
「とろみ炭酸」が高齢者の水分補給におすすめの理由
高齢者は1日1200ml程の水分を摂取するのが目安とされています。コップ1杯=200mlとするなら、だいたい6杯以上は飲んでほしいところです。水分を摂るとき、飲み込む力が弱くなってきた場合は、とろみをつけているかたも多いと思います。
多くの場合は、水やお茶にとろみをつけていると思いますが、味が薄い飲料にとろみがついていると、「たくさん量が飲めない」「味が苦手」「おいしくない」といった声も聞かれます。
そこで注目なのが、炭酸飲料にとろみをつけた「とろみ炭酸」です。炭酸飲料は、のど越しが良く爽快感もあり、お茶や水よりもおいしく飲めるという高齢者は多いようです。炭酸には、そのほかにもメリットがあります。
介護が必要なかた、高齢者や嚥下機能が弱っているかたの水分補給に「とろみ炭酸」がおすすめの理由を解説していきます。
食が進みやすくなる
炭酸水を食前に適量飲むことで胃粘膜に刺激が加わり、食が進みやすくなります。また、腸の動きも活発になり、消化・排泄をスムーズにするサポートにもなると考えられます。
嚥下改善の研究結果も
また、東京医科歯科大学が2023年に発表した論文「高齢嚥下障害患者に対するとろみつき炭酸飲料の効果の検証」によると、「炭酸飲料がのどの粘膜を刺激し、嚥下運動が促進され、嚥下改善効果がある」という研究結果も報告されています。
むせたり飲みにくかったりするのを心配して、炭酸水を避けるというかたもいらっしゃいますが、嚥下機能が衰えてくる高齢者こそ、とろみのついた炭酸を活用してみるといいかもしれません。
おやつ感覚でとろみ炭酸を
水分摂取が進まない高齢者には、おやつ感覚でとろみ炭酸を摂るのもおすすめです。
昔から慣れ親しんだ味としてサイダーやコーラは高齢者にも人気の飲み物です。懐かしい味に喜ばれるかたも多いのではないでしょうか。
ただし糖分が高いものもあるので、摂りすぎてしまうと糖尿病などの生活習慣病のリスクの心配もあります。そんなときは、無糖の炭酸水にレモン・ゆず、しょうがなどを少量入れて風味を楽しんでみるのはいかがでしょうか。
とろみ炭酸の作り方
材料は一般的なとろみ調整剤を使用した場合、スプーンを傾けるととろとろ流れる程度(中間のとろみ)の目安量です。分量はとろみ調整剤によって変わります。
【材料】
・お好みの炭酸飲料 200ml
・とろみ調整剤 4.0g
【とろみのつけ方】
【1】コップに半量(100ml)の炭酸飲料を注ぎ、とろみ調整剤を加えてよく混ぜる。
【2】残りの炭酸水をそそぎ、ゆっくりやさしく30秒程度よく混ぜる。
とろみ炭酸を作るときのポイント
・混ぜる際の吹きこぼれを防ぐために少し大きめのコップを用意しましょう。
・作る途中に炭酸が抜けやすいので、直前まで冷蔵庫で冷やしておきましょう。
・かき混ぜるときは、できるだけゆっくりやさしく混ぜましょう
・残りの炭酸水を混ぜるときにとろみにムラができやすいのでよく混ぜましょう。
上記のポイントに注意して作ることで、舌にやさしい刺激が感じられるとろみ炭酸水ができあがります。
なお、作った後、ラップをして冷蔵庫で保存すると、時間経過とともに炭酸のシュワシュワ感は減っていきます。できるだけ飲む直前に作るようにすると、より炭酸の爽快感を感じやすいでしょう。
炭酸飲料に使いやすいとろみ調整剤も登場
炭酸飲料のとろみづけに使いやすいとろみ調整剤も登場しています。炭酸に溶けやすい設計で使い勝手もよく、簡単にとろみ炭酸ができあがります。
実際に試飲してみましたが、一般的なとろみ調整剤で作るよりも、泡までしっかりととろみがつき、炭酸も抜けにくいと感じました。何より炭酸の特性であるシュワシュワ感がいつまでも損なわれないのがメリット。しばらく置いておいても、おいしく味わうことができました。
試してみた商品は、以下の2つです。使ってみた感想をレポートします。
『液体とろみ かけるだけ』(ピジョン)
液体だからサッと溶けて泡まで爽快!
とろみ調整剤には珍しい「液体状」です。液体状なのでダマになりにくく、混ぜやすいため、作っている途中に炭酸が抜けてしまう心配もありません。
また、粉末タイプの調整剤だと粉を加えた際に一気に泡が一気に立ってしまうのですが、この調整剤だとゆっくりと混ぜながら少しずつとろみがついていくので吹きこぼれの心配もありません。混ぜる過程で少しずつできる泡にも、ふんわりととろみがついていて、炭酸の泡まで楽しむことができます。
作ってからラップをして冷蔵庫に1時間ほど保存しておきましたが、炭酸のシュワシュワした感じがしっかりと残っていました。
【データ】
『液体とろみかけるだけ』(ピジョン)
容量/14g×14包
価格/900円(編集部調べ)
https://www.pigeontahira.co.jp/products/special/toromi/
『とろみ調整食品 つるりんこシュワシュワ』(森永乳業クリニコ)
炭酸飲料用に開発!シュワシュワが長持ち
ペットボトル入りの炭酸飲料にそのまま加えて振るだけで、簡単にろみをつけることができます。分量は、350mlに1本(2.5g)を溶かすのが推奨されています。500mlのペットボトルの約2/3くらいの炭酸飲料に、スティック1本を使ってみました。とろみ剤を加えて30秒ほどしっかりと振ってよく混ぜ、3時間ほど冷蔵庫で冷やしてから提供します。
ペットボトルを振ってしまうと炭酸が抜けてしまうのでは?と思いましたが、そんなことはなく、できあがったものをグラスにそそいで飲んでみると、しっかりとシュワシュワとした炭酸の刺激を感じ、おいしく飲めました。
グラスで作るよりもペットボトルの中で混ぜるほうが、炭酸が抜けるのを防げるのかもしれません。
【データ】
『とろみ調整食品 つるりんこシュワシュワ』(森永乳業クリニコ)
容量/2.5g×30本
価格/1500円(編集部調べ)
https://www.clinico.co.jp/products/adjustment/syuwa.html
とろみ炭酸でおいしく楽しく水分補給を【まとめ】
高齢者にとって水分補給は、栄養補給と同じくらいに大切なことです。しかし、1日コップ6杯以上の水分をコンスタントに摂るのは、なかなか大変なので、とろみ炭酸も活用してみてはいかがでしょうか。
たくさん飲んでしまうとお腹が一杯になってしまうので、少量(100ml程度まで)を飲んで胃を刺激することで食欲増進に。また、おやつの時間に甘みのある炭酸飲料をコップ1杯プラスして間食として楽しむのもいいでしょう。好みの味や風味、シュワシュワした刺激を楽しみながら、水分摂取に役立てて欲しいと思います。
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