「慢性膵炎の母、フレイル克服の奇跡」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第33話
漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさんは、原因不明の慢性膵炎を抱える母とふたり暮らし。白内障の手術をきっかけに母は一気に老いが加速し、フレイル状態に…。のぶさんは母の介護を見越して生活を一新し、通院介助の日々が始まって―――。
フレイルの母との「新しい生活」
母のフレイルがきっかけで始まった「新しい生活」はこんな感じでした。
朝食作りと洗濯をすませてから病院の付き添い、途中4時間外で仕事して、仕事帰りにまた病院、その後買い物に行って、帰って夕食を作って夜は描き仕事。
毎日2~3軒の病院通いをして、時々は慢性膵炎の検査も入るので、「あの病院は〇時に行くと空いてる」とか「どの病院から先に行く?」とか……。毎日テーマパークのアトラクションか!ってくらい攻略法を考えてました。
友人知人には「描く仕事をする時間あるの?」と心配されましたが、スマホやタブレットがあるおかげで、母の付き添いの合間に仕事ができたんです。
病院の待合室で担当さんとメールで打ち合わせをしたり、資料を読んだりラフを描いたりしました。締め切りギリギリになったときは病院に行く時間を変えたりして調整しました。
働き方を変えたことで、これまでイベントを入れていた土日祝日が空いたので、そこに描き仕事のスケジュールを合わせ、急に入る案件もこなせました。
→「慢性膵炎の母、人生の節目に食べたアジフライを年1回のご褒美に!」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第32話
私の場合、こんな風に「時間のやりくり」ができたので、病院通いと仕事の両立ができたと思います。これが会社勤めだったら無理だったなぁと思います 。
フレイルは、食事量が減って低栄養も心配。しかし母は食欲が落ちなかったのです。慢性膵炎の食事制限(脂質1食10g)を心がけつつ、ご飯をやわらかく炊いたり固い食材を避けたりはしましたが、基本何でもよく食べてくれました。
通院生活1年が経ち…
病院通いメインの生活を淡々と1年続けました。
白内障の手術の後視力は徐々に戻り、歯の治療も終わって普通に食べられるようになり、今年の春先には杖なしで歩けるようになってきて、夏にはなんと「のぶちゃん、足の痛みがなくなった!」と言ったんです。
現在、母の視力は両目1.2、普通に歩き、毎日もりもり食べています。病院通いは月に数回になり、家事も分担できるようになりました。
あまりの回復ぶりに「去年のできごとは夢だったの???」と思いますが、何か特別な事をしたわけでもなく、地道な病院通いが功を奏したとしか考えられません。
私自身、仕事に慣れて新しい生活のリズムで穏やかに生活できるようになったこと。
母としては、病院は送迎付き、昼間私が仕事に出かけている間は好きにできるし、これまで忙しかった土日祝日には私が家にいて、たまに外食や遊びにも連れ出して…と、のびのび過ごせていたと思います。
母の介護を見据えた新たな生活の中で、お互いの気持ちに余裕ができたのかもしれません。
もちろん、この先もいつ介護の扉を開けることになるかはわかりませんし、何が起きても不思議じゃありません(先日も道ですっ転んで膝から流血!)。
あれから1年、母は見事にフレイルから脱出。私は介護の心構えができ、ご縁があって一旦やめたイベントも再開できることになりまして、新しい生活は今のところ順調です。この連載を読んでいる友人知人から、「うちも最近介護が始まってね」と、経験談や情報をたくさんもらったことも心強かったです。
そうそう、母は「骨量」も回復したんです。80代で減ってしまった骨量が増えるというミラクル! もしかして私の食事管理の賜物か!?(その話は次回に!)
NOオイルMemo「病院帰りの外食」
病院の待ち時間が長くて、診察が終わったらちょうどお昼時、晩ごはん時となると、ついつい「何か食べて帰る?」という流れになります。
外食は脂質が多くなりがちなので、低脂質な食事ができるお店(回転寿司やうどん屋さんなど)を選んで、連れて行きます。
「今日は何食べて帰るぅ~?」と
ワクワクした顔で聞いて来る母を見るたびに、私が子どもの時は、「うちは外食しないの!」って言ってたのに。なんかズルいよなあ~と、心の中で苦笑してます。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。57才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
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