解熱鎮痛薬と胃腸薬は要注意!ドラッグストアで購入できる「第1類医薬品」に潜む急性腎障害の副作用リスク【医師監修リストつき】
小林製薬の紅麹サプリによる健康被害問題では、「腎臓」という臓器に障害が生じることの怖さを知るきっかけとなった。気づかぬうちに悪化し、死に至ることもある腎機能の低下だが、普段飲んでいる「薬」がきっかけで腎障害を誘発する可能性もあるという。市販薬の「腎障害」の副作用リスクについて専門家に聞いた。
教えてくれた人
谷本哲也さん/医師・ナビタスクリニック川崎院長、長澤育弘さん/薬剤師・銀座薬局代表
厚労省が注意喚起!発熱時に飲む「市販薬」にリスクあり
腎臓に影響を及ぼす原因は様々あるが、日常的に服用する薬の「副作用」がきっかけで問題が起こるケースについても知っておきたい。
医薬品の審査や安全対策を担う独立行政法人PMDA(医薬品医療機器総合機構)で審査員も務めた谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎院長)が語る。
「薬の副作用で起こる腎障害は『薬剤性腎障害』と呼ばれています。頻繁に起こるわけではないが、長期に薬を服用する場合などには、副作用リスクを評価するため、定期的に尿検査や血液検査を行ない、腎臓の機能に異常がないかを確かめる必要があります」
腎障害のなかでも特に注意が必要なのは「急性腎障害」だ。
「急性腎障害は数時間から数日の間に急激に腎機能が低下します。尿から老廃物を排泄できず、体内の水分量や塩分量などが調節できなくなり、無尿(尿が出なくなる)やむくみ、倦怠感といった初期症状が現われます。重症化すると呼吸不全や痙攣、昏睡状態に陥ることもある」(谷本医師)
薬局やドラッグストアで購入できる「市販薬」にも、腎障害の副作用リスクはある。
「市販薬は急な症状が出た時などにすぐ利用できるメリットがありますが、『効果が低い』と勘違いしている患者さんが多いので注意してほしい。『第1類』の一般用医薬品の有効成分は処方薬と同じです」(谷本医師)
薬剤師の長澤育弘氏(銀座薬局代表)は第1類医薬品の購入時に行なわれる「薬剤師とのやり取り」についてこう語る。
「第1類医薬品を購入する際には店の薬剤師から説明を受ける必要がある。ですが、その確認は注意事項が書かれた書類を見せながら『これらに該当しませんよね?』『体調は大丈夫ですよね?』など流れ作業で行なう形式的なものになりやすいです。その場で購入者の腎機能の数値を確かめるのは難しい。患者さん自身が薬のリスクについて知っておく必要があります」
市販薬で「腎障害」の副作用リスクが多いのは、解熱鎮痛薬だ。
コロナ禍で利用が増えたこともあり、厚労省はホームページで「お店でよく見かける解熱鎮痛薬」として具体的な製品をリスト化し、成分を明示している。そのうえで、薬ごとに「飲んではいけない人」を明記するなど注意喚起している。
「バファリンやイブ、セデスといった名称で知られ、よく買われている製品にも(急性腎障害の副作用がある)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が含まれていて、腎臓の状態などによっては副作用の腎障害リスクが高まる薬があります。市販薬には『添付文書』の代わりに重要な注意事項が書かれた『説明文書』が入っています。処分してしまう人が多いですが、しっかり目を通し、用法・用量や注意を必ず確認してください」(谷本医師)
市販薬のなかで、もう一つ副作用リスクが多いのは胃腸薬だという。
「処方薬と同様、H2ブロッカーを長期的に使用すると、腎臓に負担がかかる場合がある。調子が悪いからといって市販薬を長期間使うのではなく、せいぜい2週間など一時的に留め、症状が改善しないのであれば医療機関を受診してください」
市販薬の安易な使用は、医師の処方にも影響を及ぼすリスクもある。
「市販薬は病院で診察を受ける必要がないため、入手こそ便利ですが、頼りすぎる弊害もある。特に持病がある人は、検査データを元に体質や体調に合った薬を処方してくれる信頼できるかかりつけ医を探すことが重要です」(谷本医師)
市販薬も医師や薬剤師との対話が重要なのだ。
「腎障害」の副作用リスクがある市販薬リスト
PMDAのHPに掲載されている一般的医薬品の添付文書「使用上の注意」内にてまれに起こる重篤な症状の項目として「腎障害」の記載がある医薬品から、胃腸薬は「消化器官用薬」の薬効分類のすべての薬、解熱鎮痛剤は厚生労働省「市販の解熱鎮痛剤の選び方」掲載の製品を抽出。薬は分類ごとにPMDAのHP上で表示される順に記した。
厚労省のHPにある「市販の解熱鎮痛剤の選び方」も併せて確認してみよう。
写真/PIXTA
※週刊ポスト2024年10月18・25日号
●改めて考えたい「紅麹サプリの問題点」腎機能障害のリスクや課題を医師が解説「腎臓は重大疾患の元凶だった」