白内障とは?|美智子さまも受けられた|症状・治療・手術のタイミングなど名医が解説
6月に白内障手術を受けられた上皇后美智子さま。白内障はかつては「老化現象だから」と諦める人がほとんどだったが、ここ30年ほどで治療技術が飛躍的に進歩したという。現在、国内だけで年間140万件もの白内障手術が行われている。
上皇美智子さまは数年前から視力を落とされ、ものが見えにくい状態を抱えていらした。医師に白内障と診断されたが、美智子さまはご公務を優先なさったという。そしてご退位後の6月16日に右眼、23日に左眼の白内障手術をそれぞれ日帰りで受けられた。
「白内障手術は、白内障の症状のあるほうの眼だけに行います。美智子さまのように両方の眼に白内障がみられる場合、1週間ほど空けて片眼ずつ手術するのが一般的です。手術後数日間は眼帯で保護する必要があり、同じ日に手術すると両眼が使えない状態になってしまいますので。無事に手術を終えられたようで何よりです。『視界が明るくなった』と感じていらっしゃるのではないでしょうか」
そう語るのは、大阪市東住吉区にあるフジモト眼科の藤本雅彦院長。同クリニックが行っている年間1000件以上の日帰り白内障手術のうち、約400件を自身で問診から執刀、術後ケアまで担当する現場志向の名医だ。
白内障とは?80才以上の罹患率は100%! 海外では失明原因1位の国も
まず白内障とはどういうものか聞いた。
「白内障は眼球の水晶体という部分に濁りが生じ、視力が低下してものが見えにくくなる病気です。約90%が加齢性白内障なので老化現象と思われがちですが、ほかに糖尿病性白内障、アトピー白内障、外傷性白内障などもあります。加齢性白内障は、80才を超えるとほぼ100%の人が発症するといわれています」(藤本院長、以下「」同)
●白内障の罹患率
上の表を見ると50才代は37~54%、60才代は66~83%、70才代は84~97%、80才以上は100%の率で白内障を発症することがわかる。「進行した水晶体混濁」は、さらに白内障が悪化した状態を指す。
「初期の水晶体混濁は、濁りが水晶体のどの部分に生じているかによって自覚症状の現れ方が異なります。水晶体中心部の核が濁ると症状を感じやすく、反対に、濁りが周辺部にあって核は透明なままの場合はあまり症状を感じません。いずれにしても放置すると、60才代で26~33%、70才代で51~60%、80才代で67~83%の人が治療を必要とするところまで進行してしまいます。日本の白内障手術は世界的に見てもトップクラスの技術と手術件数を保っているので失明の危険に及ぶケースは滅多にありませんが、海外では今なお白内障が失明原因の1位に挙げられる国が数多くあります」
●眼の構造
老眼とはここが違う――白内障を察知できる自覚症状
ところで年齢を重ねて眼の機能に違和感を覚えると、最初に思い浮かべやすいのは「老眼(老視)が進んだかな?」ということだ。老眼の進行か白内障か、自分で見分けることはできるのだろうか。
「老眼は簡単にいうと、眼のピントの調節機能が衰えたことによって起きる視力低下です。メガネやコンタクトレンズの度数を変えてよく見えるようになったら老眼、見えにくさが同じだったら白内障が疑われます。でも、もし白内障で手術が必要だった場合、手術後の視力に合わせてメガネを新調しなければならないことも少なくありません。そう考えると先に眼科へ行って、老眼か白内障か診断してもらったほうがムダがないと思いますね」