白内障とは?|美智子さまも受けられた|症状・治療・手術のタイミングなど名医が解説
●1.眼内レンズの種類をチェック
白内障手術の知識と技術が広く普及している日本では、全国どこの医療機関を選んでも手術の質にさほどバラつきはないという。だが調べてみると、手術に用いている眼内レンズの種類と数は千差万別。単焦点眼内レンズのみを扱うクリニックもあれば、厚労省の認可・不認可に関わらずあらゆる眼内レンズを導入しているクリニックもある。これはどのような違いだろう。
「『医師やその医療機関のポリシーの表れ』といえるかもしれませんね。保険診療が適応される単焦点眼内レンズのみで十分と考える医師もいますし、現時点で可能な限りの選択肢を提供したいと考える医師もいるでしょう。白内障手術を受ける病院やクリニックを選ぶときはあらかじめそこが使用している眼内レンズの種類を調べ、ご自分が術後に得たい見え方を実現できるかどうか確かめたほうが賢明です」
●2.先進医療の実施機関か否か
ところで「先進医療」をご存じだろうか。多くの民間生命保険会社が販売する医療保険のなかで、「先進医療保障」や「先進医療特約」の文字を見たことがあるかもしれない。
白内障手術のうち、一般的な多焦点眼内レンズを用いた手術は「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」の名で厚労大臣が定める先進医療に含まれている(6月1日現在)。先進医療は手術の技術料だけ全額自己負担だが、診察料・検査料・投薬料などは保険診療が適応される。
さらに生命保険会社の保障や特約に加入している場合、自己負担の先進医療費が全額、生命保険会社の給付金として戻ってくる。
ただし、医療機関によっては先進医療扱いにならないケースもある。厚労省は先進医療の種類と同時に、それを実施できる医療機関を選定しているからだ。つまり、同じ多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を受けても、先進医療扱いになる病院・クリニックと、自由診療扱いになる病院・クリニックがあるということだ。先進医療として実施している医療機関は、厚労省のホームページ「先進医療を実施している医療機関の一覧」で確認することができる。
「しかし近年、気がかりなニュースが入ってくるようになりました。多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を、先進医療の保障対象から外そうとする生命保険会社が増えてきたのです。もともと『白内障手術は対象外』としている保険もありますし、『契約開始から2年間は対象外』と条件を付けている場合もあります。多焦点眼内レンズを用いた白内障手術の支払い件数が急増し、生命保険会社も自衛策に乗り出したのでしょう。これから契約を考えている人はその点に注意してください」
●3.担当医のコミュニケーション能力
「私はそれ以上に、医療機関を選ぶときは担当医師とコミュニケーションが円滑に進むかどうかを重視してほしいと考えています。これまで見てきたように、白内障手術は患者さんと医師との意思の疎通が大切です。饒舌である必要はありませんが、患者さんの視力に関する希望をきちんと把握し、その上で納得のいく説明を返してくれるかどうか。術後に後悔する人の問題点は、実はこの部分から発生している場合が最も多いのです」
たとえば「近くがはっきり見えるようになりたい」と言っても、その“近く”は新聞か携帯電話かパソコンか、はたまたスーパーの棚かで距離に差がある。「スポーツをするときメガネがいらないように」もゴルフか、テニスか、ジョギングかによって最適なレンズ選びが異なってくる。患者側もできるだけ具体的に日常生活の様子を話したほうがよさそうだ。
情報は眼から入るものが80% 明るい視界でQOL向上を
藤本医師は最後にこう語った。
「人間が得られる情報のうち、約80%は眼から入ってくるものだといわれます。たとえ耳が遠くなったり、足腰が弱って移動が困難になったりしても、明るい視界を保つことができれば日常のなかでより多くの楽しみを見つけられるのではないでしょうか。白内障手術は日帰りで受けられますが、術後しばらくは定期的に通院して診察を受ける必要があります。日に3回の点眼や患部に触れないなどの必須事項もありますので、高齢の方は介護が必要な状態になる前に白内障手術を受けておくことをおすすめしたいですね」
藤本雅彦(ふじもと・まさひこ)さん
日本眼科学会認定眼科専門医。医療法人敬生会フジモト眼科 理事長・院長。
2000年、大阪大学医学部附属病院眼科学教室入局。東大阪市立総合病院眼科医長などを経て2008年よりフジモト眼科勤務。2012年に理事長、2015年に院長就任。同クリニックは1987年に父・隆生氏(故人)が開業。当初より日帰り白内障手術を手がけている。近著に『「白内障手術」で絶対に後悔しないための本』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。
取材・文/菅田よし子