キレる老人その理由|老化による「性格の先鋭化」」とは?対処法を解説
【ケース1】定年退職して家にいる父が、何かにつけて家族を怒鳴り散らし困っています。
完全にリタイアしたあとは肩書も人間関係もなくなり、プライドが揺らぐ時期。しかも自宅で何もしないと存在感がなくなり、自尊心が脅かされることから、怒りとなって家族に向けられ、粗暴な言動に出る人もいる。
「機嫌のよい時に電球交換などを頼み、“さすがお父さん!”などと感謝を伝えるのも一案。日頃から敬い、立てることも大切です」(田辺さん・以下同)
【ケース2】介護施設にいる父が、ほかの入居者の面会家族がうるさいと言って怒るクレーマーに!
面会家族への苦情は、「うるさいなら自分の部屋に戻ればいいのに」と、ほかの入居者や職員から疎ましく思われて、ますます孤立を深めることになりかねない。「怒ってクレームをつける行動の陰には、自分には面会者がいない寂しさが潜んでいる可能性があります。その感情を見極めて、寂しさをフォローすることが先決です」。
【ケース3】認知症が進んできた母が「タンス貯金を盗んだ!」と娘の私を疑って…。
認知症の進行によっては「財布を盗られた」などの被害妄想があらわれ、身近な人に敵意が向けられやすいもの。応戦すると、言い争いで疲弊してしまう。
「まずは“相手にとっての事実”に合わせること。そして、“財布がどこにあるかわからず、なくしたかもしれないと不安に思っている”などの第1次感情に寄り添うこと。説得ではなく、納得してもらうことが大切です」。
【アンガーマネジメントでの主な対処ポイント】
(1)すぐ応戦しない
家族だと「だから違うでしょ!」と正論や事実で応戦しがちだが、怒りを感じた瞬間、意識的に「一呼吸おく」こと。「売り言葉に買い言葉」を避けるのに有効だ。
(2)ペースや場所を変える
怒りを抑えきれない高齢者に対して、口調や話す速度・トーンを変えたり、部屋を変えたり、「まず座りましょうか」などと状況を変え、落ち着かせるのも重要だ。
(3)第1次感情に寄り添う
怒りは第2次感情。その下には心配、寂しさ、不甲斐なさ、恥ずかしさ、残念、不安、悲しみなどの第1次感情がある。そこに注目すると受け入れられやすい。
教えてくれた人
和田秀樹さん/精神科医。老年精神医学の専門医。著書に「困った老人のトリセツ」(宝島社)などがある。
イラスト/たばやん
※女性セブン2019年7月11日号
https://josei7.com/
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