キレる老人その理由|老化による「性格の先鋭化」」とは?対処法を解説
感情の老化を防ぐには、前頭葉を刺激して鍛えることが大切だ。日常に取り入れやすい次の5ポイントをすぐに実践しよう。
【1】 新しいことにチャレンジする
「前頭葉を刺激するなら、ふだんと違うことをするのがいちばん」(和田さん・以下同)。
たとえば、入ったことのない店に入ってみる、初めての料理にトライする、行きたいと思っていた場所に出かけてみるなど、新しいことに挑戦しよう。
【2】人とコミュニケーションを取る
前頭葉が衰えると意欲がなくなり、引きこもりがちになる。そうなる前に、友達同士の集まりや地元のイベント、ご近所の井戸端会議などにも積極的に参加しよう。コミュニケーションを取ることが前頭葉の活性化につながる。
【3】答えを求める前にまずは行動
何か行動を起こす前から“こうすべき” “こうなるに決まってる”などと決めつけるのはNG。時には答えを求めず行動してみること。「たとえ失敗したとしても、その想定外の出来事が前頭葉を刺激し、感情の老化を防いでくれるのです」。
【4】投資などで一喜一憂してみる
たまには、ワクワク、ドキドキできることに挑戦しよう。たとえば株式投資など、何が起こるかわからないリスキーなことに挑戦してみるのもいい。
「節度を持ってやることが大切ですが、予測のつかない展開は老化防止にも一役買います」。
【5】恋愛のトキメキが若さの秘訣
人間はいくつになっても“トキメキ”が必要。たとえ配偶者がいても、魅力的な異性にトキメクことで脳も心も若返る。
「リアルな恋愛だけでなく、好きなアイドルや韓流スターの追っかけなど“疑似恋愛”でも同じ効果があります」。
中高年の女性が社交的なのはホルモンのせい
また、人との交流や新しいことに挑戦する柔軟さも前頭葉を鍛えるのに重要だ。
「そこで見逃せないのが、女性は、閉経後に男性ホルモンの分泌量が増え、外交的で活動的になる点です。前頭葉の衰えが進行すると、意欲が低下しがちですが、男性ホルモンは性欲のホルモンであるとともに意欲のホルモンでもあるので、意欲面の衰えをカバーしてくれます」
ある程度の年齢を重ねた女性が元気なのは、男性ホルモンの増加による影響が少なからずあるということだ。
「前頭葉の若さが保たれれば、キレまくる老人や暴走ドライバーなどに、ならずにすむ可能性があります。逆に、ある日を境に急に意欲をなくした場合は、うつ病の可能性があるので、早めに受診しましょう」
うつ病であれば、ほぼ確実に治療できるので、長い期間をかけて徐々に悪化する認知症と混同せぬよう、早めにしっかりとケアすることだ。
怒るシニアの気持ちを軽くする接し方
介護施設や自宅介護の現場でも、感情に火がつくと手がつけられなくなる老人は多い。
「ふだんはおとなしくても、いったん気に障ることがあると大声で怒鳴り散らす、机や壁を叩いて威嚇する、詰め寄ってくるなど、感情をコントロールできない高齢者がいるのは事実です」
と、横浜市立大学医学部看護学科講師・一般社団法人日本アンガーマネジメント協会トレーニングプロフェッショナルの田辺有理子さんは言う。
「なかには、一般社会ならどう考えてもセクハラと思われる下ネタやセクシャルな言動をとる男性の高齢者もいます。女性も恋多き乙女に戻って、デイサービスなどで目に余るような嫉妬や恋愛関係が渦巻き、恋話やガールズトークで盛り上がるケースもあるんです」(田辺さん・以下同)
これらも、若い頃には理性で抑えがきいていたのが、脳の衰えで性格の先鋭化が進んだためと考えられる。
正論ではなく、納得してもらうこと
では、怒りっぽくなった高齢者と接する際、私たちはどう対処したらいいのだろう?
「介護を行う家族が怒りの感情をうまく処理できないと介護が適切にできなくなる可能性があります。そこで役立つのがアンガーマネジメントです。大切なのは、相手を変えようとしたり、怒る状況を解決しようとするのではなく、日々変わりゆく高齢者の状況に自分を合わせること。つまり、自分が変わることです」
さらに、後述する3つのケーススタディーでも、【1】には自尊心、【2】には寂しさ、【3】には不安といった怒りの原因となるそれぞれ異なった感情が隠れている。そこに着目するのもポイントだ。
「高齢者は家族やなじみのヘルパーなどの身近な人につい感情をぶつけやすく、家族も“それは違うと言ったでしょ!!”などと応戦しがち。事実や正論で説得しても怒りを増幅させ、お互いに疲弊するだけ。説得よりも納得してもらうことが大切なのです」
ある程度の年齢になれば親子の立場は逆転し、子が親に指図しがちだが、そこで親の気持ちに寄り添うことでも、怒りの感情を和らげられる。
「高齢者に敬意を払い、ユーモアのある切り返しで和やかな雰囲気を作り出すのも、効果的です」
家族全員、穏やかな老後を送るヒントがここにある。