変形性膝関節症の痛みを軽減する1日1分!の東京医科歯科大学式『お皿八方ほぐし』の方法を解説「始めるのに年齢は関係なし」
少し動くだけでもひざが痛む「変形性膝関節症」は、手術か薬で改善するしかない――そう思っていないだろうか。ひざの名医が教える、1日1分の「ひざ皿ほぐし」を試してみて欲しい。毎日継続して行うことで痛みが軽減するのだという。家で簡単にできるやり方を紹介する。
教えてくれた人
東京医科歯科大学大学院運動器外科学教授・医師 古賀英之さん
変形性膝関節症の痛みを軽減する東京医科歯科大学式『1分ほぐし』とは
変形性膝関節症の根本治療のためには軟骨のすり減りを防ぐことが重要だ。痛みや腫れのきっかけとなる「ひざ関節への衝撃」を緩和するクッション機能を維持・増強する必要がある。
体重の数倍にもなるひざへの負荷を軽減させるには、太ももやひざ周りに筋肉を付けることが理想だ。だが、そのために無理な運動をして、ひざを痛めては本末転倒。
『運動を頑張らなくてもひざ痛がよくなる1分ほぐし大全』(文響社)の著者でもある、ひざの名医として知られる東京医科歯科大学大学院運動器外科学教授の古賀英之医師が患者に指導するのは「東京医科歯科大学式『1分ほぐし』」だ。
「重い負荷をかける筋トレや、長時間にわたってひざに衝撃を与えるジョギングは症状を悪化させる可能性があるため、運動療法としては不向きです。その点、『1分ほぐし』は“きつい”も“つらい”もなく、自分で簡単にできるので、誰でも無理に頑張ることなく続けられます」(古賀さん・以下同)
「1分ほぐし」で重要なポイントは、「ひざのお皿(膝蓋骨)の動きを滑らかにする」こと、「ひざをピンと伸ばせるようにする」ことの2つだ。
「ひざ関節はまっすぐ伸びた時に安定する構造です。お皿の動きを滑らかにして、しっかり伸ばせるようにほぐせば、各組織がうまく連携して動くようになり、痛みも軽減されます」
一口に「ひざ痛」といっても、複雑な構造を持つひざ関節の症状は「伸ばす時」「着地の時」「ひざの内側または外側」など、痛みが出る動きや場所がそれぞれ異なるが、多くの人にまず実践してほしいというのが「お皿八方ほぐし」だ。
「変形性膝関節症の初期ではほとんどの場合、『ひざ皿まわり』が硬くなってひざを伸ばせなくなっています。そこで、症状改善には手でお皿を前後・左右・斜めの8方向に動かす『お皿八方ほぐし』が有効です」
ひざのお皿の場所は、足を前に伸ばして座り、手を太もも中央からなで下ろした時に硬い骨に触れたところが上縁、脛の中央からなで上げた時に少しくぼんで硬い骨に触れたところが下縁となる。
「両手の親指を合わせて上縁や下縁に当て、8方向それぞれに5秒ほど強めに押し動かします。痛みや硬さを感じる方向が、ひざ痛の発生部位と考えられます。その方向に5秒押してから緩める動作を1分間、繰り返します」
1日1分「お皿八方ほぐし」のやり方
古賀医師が監修する「お皿八方ほぐし」のやり方をご紹介する。
1:痛むほうの足を延ばす
壁などに寄りかかり、痛むほうの足を伸ばす
2:痛みのある場所を特定する。
ひざのお皿のまわりを、前後左右斜めに指を押しながらスライドさせる。このときは、左右の親指を合わせ、お皿(ひざの丸い骨)の縁に合わせてひざ側に動かす。
3:「1分」かけてほぐしていく
痛みを感じた方向に5秒ほど押し、少し緩めて押すことを繰り返す。
「お皿八方ほぐし」は継続が大事
どの程度の頻度で行なうべきか。
「1日1セットからでも効果はあります。1回1分を1日2〜3セット行なうのが理想ですが、とにかく続けることが大事。
変形性膝関節症は高齢者に多い疾患ですが、『1分ほぐし』を始めるのに年齢は関係ありませんし、特別な筋力や心肺機能も必要ありません。ほぐしていくなかで徐々に感じている痛みが減り、可動域が広がれば、力強く歩けるようになります」
※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号
●1000万人が悩む変形性膝関節症 ひざ痛におすすめ「ひざ皿ストレッチ」を医師が指南