コロナ禍のストレスで縮んだ“心臓の健康寿命”を取り戻そう!名医が教える100年動く「長持ち心臓」の鍛え方
自律神経を鍛える方法の1つに「サウナに入ること」があると、南さんは言う。
「本来、自律神経は交感神経が優位に働いた後で副交感神経が働くもの。自律神経が弱いと高温によって交感神経が強く刺激されたままの状態が長く続いて毛細血管が収縮し、体の中に熱がこもってしまうのです。一方、自律神経が強ければ、交感神経が優位になった後にすぐ副交感神経が働くことで毛細血管が開いて汗が出て、熱を放散することができる。サウナに入る習慣をつけることで次第に自律神経の閾値が高まり、強化されていきます」
食事の仕方でも鍛錬する方法がある。早食いは交感神経ばかりを高めるため、食事は「ゆっくり、満足感を得られるように」食べるのが正解。
「そもそも、食べることそのものが交感神経を刺激する行為。よくかまずに大急ぎでかき込むような食べ方は、交感神経だけが活発になってしまいます。大切なのは味覚だけでなく、嗅覚、視覚、触覚、聴覚も充分に働かせて味わうこと。すると、副交感神経もきちんと働くようになり、自律神経の閾値を高めることにつながります」
すなわち、自律神経の閾値を高めるために重要なのは、副交感神経が充分に働くようにすること。それがひいては心臓の“過重労働”を防ぐことになる。サウナに行くのが難しくても、自宅のソファや布団で簡単にできる「自律訓練法」(下参照)もある。
心臓を強くする!1回5分の「自律神経セルフトレーニング」
【1】明るすぎない静かな場所で、背もたれのあるいすに背筋を伸ばして座るか、あおむけに寝る。腕時計やメガネ、ベルトなど、体をしめつけるものは外す。
【2】姿勢を整えて目を閉じる。
【3】心の中で数回「気持ちが落ち着いている」と唱える。
【4】心の中で数回「右腕(利き手)が重たい」と唱える。
【5】両手をグー・パーする、腕を伸ばす、背伸びするなど、気持ちをリセットする「消去動作」を行い、目を開ける。
5分ほどを目安に、【2】~【5】を数回繰り返す。1日3、4回行うことで、腕が重たい感覚がなんとなくわかるようになり、自律神経を間接的に鍛えられ、疲労回復、精神状態の向上、生産性のアップなどの効果が得られる。
※出典:南和友『名医が教える! 心臓の強化書』
絵画や演劇鑑賞で「感動」することも効果的
日頃から腹式呼吸を意識することも効果的だ。
「副交感神経の1つである『迷走神経』は肺のすぐ下にある横隔膜に集まっているので、肺とお腹を動かす深い腹式呼吸は、自律神経を鍛えるのに効果的です。鼻からお腹に息を入れるように吸い、その倍の時間をかけて口から吐くことで迷走神経が刺激されて気持ちがしずまり、リラックスできます」
心がおだやかになれば、副交感神経が働き、自律神経の閾値が高まる。同様に、深くおだやかな「感動」にも、高い効果があるとされている。
「花を愛(め)でたり、名画や美術品、クラシック音楽、古典芸能、演劇などの鑑賞は、副交感神経の閾値を高めます。特に中高年以上の女性は神経が過敏になりやすく、不整脈が出ることが多いため、こうした“感動体験”を自分へのごほうびにするのもいいでしょう」
前述したように、キツい筋トレや激しいランニングなどは心臓にとっては逆効果。南さんが推奨するのは、おだやかな有酸素運動だ。特に「パワーウオーキング」(※)と呼ばれる“早歩き”は、ふくらはぎの筋肉を鍛え、末梢の血液を心臓に戻す効果があるため、心臓の補助になる。
「通常の歩行が時速4kmほどとすると、時速6kmくらいの速さで歩きます。かかとから着地してつま先に向かって足裏全体で蹴り出すようにして歩くとより効果的です。特に大切なのは心拍数(脈拍)で、220から自分の年齢を引いた数の7~8割くらいの数値になるように意識しましょう」
あなたの心臓は文字通り“一生もの”。しっかり鍛え、心を込めていたわれば、必ず応えてくれるはずだ。
(※)競歩オリンピック金メダリストのドイツ人、ハートヴィッヒ・ガウダー氏の発案した有酸素運動
写真/PIXTA
※女性セブン2024年3月14日号
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