「長生き心臓」に鍛える5つの方法 心不全になりにくい人の特徴とは?【医師解説】
コロナ禍の陰で静かに増え続けている「心不全」。厚労省の推計では、心不全の患者数は1996年に約21万人だったが、2017年になると約34万人と、約20年で激増している。心臓の専門医によると、心不全は死亡率も再入院率も、実はがんより高いという。心臓をいたわり、長生きするための生活習慣について、専門医に教えてもらった。
「長生き心臓」の鍛え方・生活習慣5つのルール
国立循環器病研究センター心臓外科部門長の藤田知之さんによれば、“長生き心臓”を持っている人の特徴は「動脈硬化がなく、脈拍がゆっくり」だという。
「動脈硬化がないということは、血管と心臓がやわらかくしなやかだということ。ゆっくりと拍動し、そのたびに心臓が大きくふくらんで、血液をしっかりと押し出すことができています。若い頃に運動習慣があった人は特にその傾向が強い」(藤田さん・以下同)
若い頃から運動が苦手でも、慌てる必要はない。いまからでも心臓を“鍛える”ことは可能だ。
1.週3回30分程度の運動を
「最低週に3回、30分程度の運動をおすすめします。心臓のためには、ラクすぎるものでは意味がありませんし、キツすぎるものはかえって心臓に負荷をかける。1回30分程度のジョギングなど、少し息が上がって“ややきつい”と感じるくらいがベスト。
すでに心不全の兆候がある場合でも、1日7000~1万歩ほどのウオーキングは、悪化を防ぐことにつながります。筋肉を動かすことで血管が心臓の拍動に合わせてポンプのように動き、血流を促進する。筋肉が“第二の心臓”となって、負担を減らしてくれるのです」
2.日々を穏やかに過ごす
小倉記念病院副院長で循環器内科主任部長の安藤献児さんは「穏やかであること」も重要な条件の1つだと語る。
ストレスを抱えると交感神経が優位に働いて心身が“戦闘モード”になることで血圧が上昇し、脈拍も速くなるからだ。小倉記念病院副院長で循環器内科主任部長の安藤献児さんが言う。
「ストレスは心臓病の大きな要因です。また、精神的な負荷で交感神経が優位になると、寝つきが悪くなり、睡眠の質も落ちる。すると、血圧や脈拍が上がったままの状態が続き、心臓に負担をかけます。日々を穏やかに過ごし、毎日7時間以上、ぐっすり眠っている人は、心不全になりにくいと言えるでしょう」
食生活の乱れに運動不足、ストレスと、ここ数年のコロナ禍で思い当たる節がある人は多いだろう。また、コロナ感染によって急性心筋梗塞のリスクが上がるというデータもある。
3.心臓をいたわるには血圧を下げることが大切
心臓をいたわり、長生きさせるためにもっとも大切なのは、血圧を下げることだと、藤田さんは言う。
「110~130ほどが理想的な血圧で、下げすぎもよくありません。血圧を下げれば心臓の負担が減り、ラクに血液を拍出できる。そのためには、運動のほか減塩など、生活習慣で意識できることはたくさんあります」(藤田さん)
高血圧等を防ぐ塩分摂取量の目安は、1日6g未満だと、日本抗加齢医学会指導士で管理栄養士の森由香子さんが言う。
「試しに、110mlの水に6g(小さじ1ほど)のしょうゆをまぜて、なめてみてください。“薄い”と感じるなら、日頃から濃い味つけを好んでいる証拠。しょうゆや漬けものなどは減塩タイプを選ぶなど、塩分を減らした食事を続けて、舌を慣らしていった方がいい。DHAやEPAが豊富な青魚も、開きやみりん干しは塩分が多いため、できるだけ生で食べてほしい」
4.肥満を改善し適正体重を目指す
糖質や脂質に気をつけて肥満を改善し、動脈硬化を防ぐのも重要。肥満ぎみならまず、適正体重を目指すのが第一歩だと、森さんは言う。
「腹八分目を心がけるのはもちろんのこと、缶コーヒーやスポーツドリンクなどが盲点になりがちです。果糖ブドウ糖液糖は体内への吸収が速く、血糖値を急激に上げ、太りやすい。肥満ぎみの人は、飲み物を無糖のものに変えるだけでも大きな効果が見込めるでしょう」(森さん・以下同)
動物性脂肪に多い「飽和脂肪酸」、使いまわした揚げ油などに発生する「トランス脂肪酸」などはLDL(悪玉)コレステロールを増やすほか、血管をふさいで動脈硬化を引き起こすプラークができる原因になる。
また、糖質を摂りすぎると「AGEs」という物質が血管を傷つけるとも。
「血中で酸化したLDLコレステロールが増加すると動脈硬化が悪化するため、抗酸化作用のあるβカロテン、ビタミンC、Eと食物繊維の豊富な緑黄色野菜や果物を積極的に摂ること。
5.極端な糖質制限に注意
体重を減らしたいからといって、極端な糖質制限はおすすめしません。糖質制限はもともと糖尿病患者のための食事法で、コレステロール値の高い人が糖質制限をすると、塩分や脂質の摂りすぎにつながり、動脈硬化を悪化させる恐れがあるのです。血糖値に異常がない限り、炭水化物は抜かず、毎食適量食べてください」
心臓とは文字通り、一生のつきあい。末永くいたわって。
教えてくれた人
藤田知之さん/国立循環器病研究センター心臓外科部門長、安藤献児さん/小倉記念病院副院長で循環器内科主任部長、森由香子さん/日本抗加齢医学会指導士で管理栄養士
※女性セブン2022年9月15日号
https://josei7.com/
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