健康

コロナ禍のストレスで縮んだ“心臓の健康寿命”を取り戻そう!名医が教える100年動く「長持ち心臓」の鍛え方

 日本人の平均寿命は年々延び続け、「人生100年時代」といわれて久しい。だがその一方で、心疾患や脳血管疾患で亡くなる人は増加の一途をたどっている。生まれた瞬間から1秒も休むことなく働き続ける「心臓」を強く保ち、少しでも長持ちさせるための秘策を専門家に聞いた。

教えてくれた人

南和友さん/心臓外科医。南和友クリニック理事長・院長

新型コロナのストレスで“寿命”が縮んだ?

 女性の平均寿命が87.09才、男性は81.05才と、わが国は知ってのとおり、世界有数の長寿国だ。だが、すべての女性が87才まで健康な体でいられるわけではない。生活習慣病やがんなどの病気のリスクは常に隣り合わせにあり、加齢とともに増していく。早期発見できたり、治療でよくなる病ならまだしも、ある日突然命を落とすこともある。

 事実、日本人の死因は循環器疾患である「心疾患」と「脳血管疾患」を合わせると、死因第1位の「がん」に迫る割合。私たちに死の危険をもたらす「心臓病」だが、回避するためにできることは少なくない。

 24時間休むことなく、全身にくまなく血液を送り出す「ポンプ」の役割を果たす心臓は、生きていくためになくてはならない臓器だ。しかし、その健康寿命は100年どころかその半分もないという。

 これまで2万件以上の手術を執刀してきた心臓外科医で南和友クリニック理事長・院長の南和友さんが解説する。

「心臓の健康寿命は短く、いまは女性50才、男性なら40才前後です。この年代になると、心臓の血液が逆流する心臓弁膜症や不整脈の一種である心房細動になる人が増加するほか、心不全も増えてきます。しかも、こうした心臓の病気は、血液検査では前兆を見いだすことはできません。不整脈の有無まではわかっても、心筋梗塞や心臓弁膜症、心不全といった命にかかわることもある病気の早期発見は不可能なのです」(南さん・以下同)

 驚くほど健康寿命が短い理由は、心臓の“新陳代謝”の速度にある。

「皮膚なら4週間前後で古くなった細胞が死んで新しいものに生まれ変わります。ところが、心臓と脳だけは例外的に新陳代謝のスピードが極めて遅く、細胞がほぼ再生しません。それゆえ、心臓はほかの臓器よりも早く老化しやすく、全身に血液を送り出すポンプとしての大切な役割を、次第に充分に果たせなくなっていくのです」

 見過ごせないのは、コロナ禍を経て心臓の寿命がさらに縮まっていることだ。

「新型コロナのパンデミックによって日常生活のあらゆるストレスが増し、心臓にかかる負荷は増大しています。老化のスピードが上がり、もはや心臓は60才まで持てばいい方だと言えるでしょう」

 心臓が老化することで現れる症状は、動悸や息苦しさ、めまいなどがある。弱った心臓や血管を酷使し続けて老化が進めば、体内に血液や酸素が行き渡りにくくなり、体の機能が低下し、死を招く。すなわち、「心臓を鍛える」ことこそが、寿命を延ばすことに直結するのだ。

心臓を鍛えるカギは「自律神経」だった

 心臓を正しく鍛える方法について、真っ先にあげられるのが適度な運動だ。

「全身の筋肉を鍛えることで、血液の循環がよくなり心臓の働きを助けます。特にふくらはぎは第二の心臓ともいわれ、下半身の血液を心臓に戻す際に大きな役割を果たすため、心臓の負担や疲労が軽減します」

 とはいえ、過度な運動や心拍数が上がりすぎるようなトレーニングを続けていると心臓のオーバーワークになり、心筋肥大が起きて不整脈や心不全が生じる。そこで南さんは、心臓の寿命を延ばすカギは運動や筋トレよりも自律神経にあると断言する。

「自律神経が強ければ、心臓の健康は守られ全身の健康が保たれるといっても過言ではありません。自律神経を鍛えることが、心臓を鍛えることになる」

 自律神経は、心臓や血管の動きをコントロールする働きを持ち、主に活動的になっているときに優位に働く「交感神経」と、リラックスしているときに優位になる「副交感神経」の2つからなる。

「交感神経が優位になっている間は、心臓が活発に動いて血流が激しくなっています。この状態が長く続くと、自律神経のバランスが乱れて心臓にはかなりの負担がかかり、血管も疲労する。これまで自律神経をコントロールすることは不可能と解釈されてきましたが、鍛えることは可能です。例えば、人前に出て緊張する、誰かに対してイライラするといったとき、自律神経は交感神経が優位になっていますが、ある程度慣れてやり過ごせるようになれば過度に交感神経が優位になることが少なくなります。この自律神経の“閾値(いきち)”を上げる』ことこそが、トレーニングなのです」

 閾値とは、感覚や反応を起こさせるのに必要な最小の強度のこと。

 例えば、少し大きな音がしただけで飛び上がって逃げ出したりする人は自律神経の閾値が低いが、何があっても動揺せず、落ち込まない冷静さがある人は閾値が高いということになる。閾値を高めることで自律神経のバランスが保たれ心臓への負担が減り、寿命を延ばすことができるのだ。

“長生き心臓”の要は自律神経

【心臓】→ 酸素・血液 →【脳】

【脳】→交感神経・副交感神経 →【心臓】

<シグナル>

洞結節(どうけつせつ)が刺激されて心臓が動く。

※出典:南和友『名医が教える! 心臓の強化書』

サウナで「自律神経」をととのえよう!

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