健康

自律神経とは?|乱れの原因、自律神経バランスのチェック、整える方法【まとめ】

 季節の変わり目には体調を崩しがち。梅雨入り後は夏のような暑い日が続いたかと思えば、急に涼しくなり…と、気候の変動が激しく、体調を崩す人も増えている。

 また、季節の変わり目に関係なく、一年中起きうる体調不良の原因は自律神経の乱れかも。そこで、自律神経の役割や、整え方をいくつか紹介しよう。

 * * *

自律神経は体を操る「縁の下の力持ち」

 介護中は、「睡眠時間をとっているのに眠い」「休息をとっても疲れが抜けない」そんな体の不調に悩まされることがある。ほかにも、頭痛、肩こり、めまい、耳鳴り、便秘や下痢など、病院へ行くほどではないけれど、いつもどこか調子が悪く、気分が滅入ると嘆いている人は、実はとても多いという。

 いわゆる「不定愁訴」と呼ばれる何となく不調の多くは、自律神経の乱れによって起きていると語るのは、医療法人永光会理事長で医学博士の新井幸吉さんだ。

 新井さんは簡単に行える「自律神経の整え方」を提唱し、最小限の薬で辛い症状を癒す「最高のかかりつけ医」と呼ばれる存在である。著書に『生涯健康に暮らしたければ 「自律神経」を整えなさい』(幻冬舎)がある新井さんが語る。

自律神経は身体を裏でこっそり操る役目をする神経です。私たちは呼吸や消化を意識しては行っていません。眠っている間でも息はしますし、血流が止まることもありません。無意識のうちに身体をコントロールする、縁の下の力持ちのような存在が自律神経であると考えてください。

 自律神経の働きは脳の間脳が多くを担っていて、「交感神経」と「副交感神経」というふたつの神経から成り立っています。簡単に言えば、交感神経はアクティブ、副交感神経はリラックスの神経で、環境や時間帯、状況に応じてどちらかが働き、どちらかは力を弱めます。シーソーのようにバランスをとって、状況に応じた身体の働きができるようにコントロールしているのです。

 昼間、元気に活動できるのは交感神経が優位になっているからですし、夜ぐっすり眠ることができるのは副交感神経が正しく働いているからです。ところが、夜になっても交感神経が強く働いてしまうと、脳が休めず良い睡眠が取れません。逆に昼間副交感神経が優位になってしまうと、身体がだるくやる気も起きない状態が起きてしまうのです」

→詳しくはこちらの記事をチェック

自律神経のバランスをセルフチェック

 だるい、肩こりや腰痛、食欲不振など、病院に行くほどではないが、何となく体調がすぐれない。そんな人は交感神経と副交感神経のレベルが低くなっている可能性があると、前出の新井幸吉さんはいう。

「自律神経にはアクティブな活動を司る交感神経と、心身をリラックスさせる副交感神経の2種類があり、どちらかが強く働く時は、もう片方の働きは抑えられるようにできています。しかしバランスがとれていたとしても、それぞれの神経の働き方が弱い状態では、体調を整えることはできません。

 交感神経と副交感神経のレベルが、どちらも適度な強さを持っていて、それぞれが適した時間に優位になることで、休息、栄養摂取、活動が身体にとって負担なく行えるようになります。

 私の考案した「自律神経バランスチェックテスト」では、40の質問に答えることで、交感神経、副交感神経の現在の状態をセルフチェックすることができます。理想は両方の神経が適度なレベルでバランスが保たれていることです」(新井さん)

●質問1

□朝の気分はすっきりしている
□頭痛がよく起きる
□口が乾きやすい
□体温は低いほうだ
□手足が冷える
□血圧が高めである
□肩こりがよくある
□たばこを吸う
□仕事や家事に費やす時間帯は不規則だ
□趣味より仕事に生きるタイプ
□トラブルや悩みがあると、すぐに肌が荒れる
□比較的緊張しやすい
□仕事にはいつも全力を傾けている
□人の評価を気にするタイプだ
□口内炎ができやすい
□胸焼けや胃痛がよくある
□集中力はあるほうだ
□就寝2時間前に食事することが週2回以上
□目標や夢に向けて努力している
□他人のミスや成果が気になる

チェックの数が10~20個→A
チェックの数が6~9個→B
チェックの数が1~5個→C

●質問2

□エスカレーターより階段を使う
□肉と野菜、どちらかといえば野菜が好き
□夏と冬、どちらかといえば冬が得意
□あまり風邪をひかない
□どちらかといえばのんびりした性格
□集中力がなく、気持ちが散漫になりがち
□寝付きは良いほうだ
□三日坊主になることが多い
□ひとりになれる時間が好きだ
□職場や家族以外に趣味の仲間がいる
□週5日以上は睡眠を6時間以上とっている
□午前中はやる気が起こらない
□どちらかといえば太りぎみ
□仕事など少し頑張るとすぐに疲れてしまう
□ストレッチや柔軟運動を週に3回以上している
□人間関係はうまくやれるほうだ
□メールやLINEの返信が遅いと悲しくなる
□失敗すると人一倍落ち込む
□疲れやすい
□昼間でも眠くて仕方ない日がよくある

チェックの数が10~20→D
チェックの数が6~9→E
チェックの数が1~5→F

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●テストの結果:A-Dの人

交感神経・副交感神経ともにレベルの高い「スーパーマンタイプ」

 活動的でエネルギッシュな状態。他の人よりもパワフルに動けているはず。現在、このタイプに当てはまったとしても、一生涯、そのまま走り続けられる人は極少数です。現役アスリートでもない限り、無理にこの域にたどり着こうとする必要はありません。

●テストの結果:A‐E、A‐Fの人

交感神経が優位になっている「オーバーワークタイプ」
 
 自分の体力や気力以上に頑張ろうとする、現代人がもっとも陥りやすい状態です。無理をすれば仕事を成し遂げられるのですが、車にたとえるならオーバーヒート寸前。このまま無理を続けると、循環器や血管の異常をともなう病気を発症しかねません。副交感神経が働くように、ゆっくりくつろげる時間を設けることと、良い睡眠が取れる生活習慣を身に付ける必要があります。

●テストの結果:C-D 、B-Dの人

副交感神経が優位になっている「まったりタイプ」

 カリカリし過ぎず、適度なリラックスができている状態です。しかし、まったりし過ぎると倦怠感が募るようになり、やる気を失うことや、食欲のコントロールがうまくいかず食べ過ぎて太ってしまう人もいます。また、大人になってから発症するアレルギー疾患や喘息などは、「まったりタイプ」の自律神経バランス時に多く起こります。朝、交感神経を高める工夫が必要でしょう。

●テストの結果:B-Eの人

交感神経と副交感神経のバランスがちょうどいい「安定タイプ」
 
 交感神経と副交感神経が程よいレベルでバランス良く整っています。集中力や意欲を持って仕事に取り組むことができる上に、趣味の時間や余暇はスイッチを切り替えて、うまくリラックスモードに入っていけます。ただし、年齢とともに自律神経バランスは崩れやすくなります。意識して自律神経を整える生活を心がけてください。

●テストの結果:B-F 、C‐E、C‐F

交感神経・副交感神経ともにレベルの低い「ぐったりタイプ」

 シーソーバランスだけを考えると、交感神経と副交感神経の機能レベルは同じくらいで安定した状態ですが、いずれもレベルが低過ぎます。エンジンがかかりづらく疲れやすいため、仕事をこなしきれないこともあるはずです。人から苦言を呈されても奮起する力は沸かず落ち込むばかり。放置しておくとうつ病などの精神疾患を発症する恐れもあります。活動と休息のメリハリをつけることを第一に、生活習慣を見直す必要がありそうです。

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筋肉量が多い部分を温めて血流を良くする

 体全体を温めるより、適切な場所をピンポイントで温めた方が、効率よく体が温まるという。その理由は、血流に関係する。たとえば、太い血管の通る部分や大きな筋肉がある部分などを温めると血流がよくなる。そうなると、おのずと体全体が温まるというわけだ。

 また、「二の腕」「お腹」「お尻」「太ももの前面」。この4か所を温めると、高血圧をはじめ、自律神経の不調から来るさまざまな症状が改善されるという。自律神経免疫治療に詳しい青山・まだらめクリニック院長の班目健夫さんが説明する。

「この4か所は、筋肉の量が多い部分です。特にひざからお尻にかけては、全身の筋肉の70~80%が集中しています」(班目さん。「」内以下同)

 なぜ、筋肉を温めると高血圧などの改善につながるのだろうか。

「筋肉には、伸び縮みをして血液を送り出す働きがあります。筋肉の温度が上がると、筋肉の動きがよくなり、体の隅々まで血液が流れやすくなります。そのため、筋肉量の多い部分を温めて筋肉を動きやすくし、血液の流れをよくすることが大切なのです」

 高血圧は、動脈が縮んで流れる血液量が少なくなるため、なんとか体の隅々まで血液を送ろうと、血液を流す圧力が高くなることで起こる。そのため、血流がよくなれば、圧力を上げる必要がなくなるので、高血圧も改善されるというわけだ。

 血液の流れがよくなれば、内臓機能や自律神経の働きもよくなるため、頻尿やむくみなどさまざまな症状も改善されるという。

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自律神経の乱れを整える、目覚めの「ダーウィン体操」

 体調がなんとなくすぐれない、いわゆる「不定愁訴」は自律神経を整えることで解消できると提唱する前出の新井幸吉さんは、朝目覚めに行うダーウィン体操をおすすめする。

「就寝中は身体に対して一定の重力がかかっていますが、いきなり起き上がってしまうと重力に急激に逆らうことで交感神経と副交感神経のバランスが乱れてしまうのです。

 また、直前まで眠っていた筋肉をいきなり大きく動かすことは、交感神経に刺激を与えすぎて肩こりや腰痛を引き起こす原因にもなりかねません。この体操は、「ダーウィン体操」と名付けました。生物が魚類から爬虫類、鳥類、哺乳類へ進化していったように、少しずつ重力に身体を慣らすイメージで、朝、目が覚めたら布団の中で行ってください。身体への負荷の少ない体操ですから、高齢者の方にもおすすめです」

【1】卵から生まれた魚

1

 手を頭の上で組み、上半身は頭側、下半身はつま先に向かってゆっくり10秒間伸ばす。腰を床に押し付け、背中を反らさないのがコツ。

【2】ゆらゆら泳ぐ魚

2

【1】の姿勢のまま、肘と膝を軽く緩め、お尻を左右に10往復滑らせる。顔とへそが天井を向いたまま行なうようにする。

【3】昆虫のポーズ

3

 仰向けのまま膝を立て、足の裏は床に。両手は腰の横に、手のひらと肩で床を押すようなイメージで腰を持ち上げる。太ももの内側に力が入っていることを意識して10秒間キープ。

【4】猫の休息

4

 ゆっくりと寝返りをしてうつ伏せに。膝を曲げて上半身と腕を伸ばし、ゆっくり大きく3回呼吸する。肩甲骨周りが伸びていることを意識。

【5】羽ばたく鳥

5

 ゆっくりと立ち上がる。両手を一度真横に広げ、そこからゆっくりと両手の指を肩に乗せる。そのまま肩回しを前後10回ずつ。肩甲骨が動くことを意識して。

【6】ゴリラのポーズ

6

 足を肩幅に開き、膝を軽く曲げると同時に左右の肩を前方に回す。一回転したら膝を伸す。首の力は脱力して、リズミカルに10回。

【7】熊のダンス

7

 両足を肩幅に開き、息を吸いながら腕を上げる。膝をできるだけ深く曲げながら、肘が背中側に引っ張られるようなイメージで曲げ、胸を開く。ゆっくりした動作で10回。身体が前に倒れないように注意。

【8】人間に進化

8

 2秒で吸って5秒で吐く深呼吸を3回繰り返す。

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イラスト/中島慶子

初出:女性セブン、介護ポストセブン

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