90代の祖父母の暮らしを発信する人気YouTube<チロちゃん>「当たり前の日常が愛おしい」孫が明かす制作秘話
シニア世代のスマートフォン所有率が上昇し、YouTubeを知っている60代以上も9割を超え、約5割の人たちが視聴しているという。高齢者もスマホやSNSを使いこなすようになった今、好きなことを発信して人生を輝かせている「シニアインフルエンサー」に注目が集まっている。フォロワー数約29万人を誇るYouTubeチャンネル「チロちゃん」で、90代の祖父母の日常を発信する孫のともひろさんに、動画投稿を始めてどのような変化があったのか、制作秘話を聞いた。
教えてくれた人
ばあちゃん(91才)、じいちゃん(94才)/YouTube「チロちゃん」。総フォロワー数約29万人。
高知県在住。1932年生まれのばあちゃんは、アパレルで働いていた経験がありおしゃれ。1930年生まれのじいちゃんは、厳格で亭主関白気質だがおちゃめな一面も。
フォロワー数29万人「チロちゃん」祖父母の動画を発信
動画では、おしゃれな帽子がトレードマークのばあちゃんと、時々、おちゃらけたじいちゃんが登場する。ちなみにYouTubeのチャンネル名である「チロちゃん」とは、撮影を担当している孫のともひろさんが、18年間共に暮らした愛犬の名前だ。
「ぼくは子供の頃から祖父母と同居していて、根っからのおばあちゃんっ子なのですが、ふと10年くらい前に、家族のアルバム感覚で祖父母との思い出を残したいと思って、YouTubeに投稿を始めたんです」(ともひろさん・以下同)
祖父母のありのままの姿を撮るために、特に段取りを決めることなくカメラを回すという。
「たとえば、お誕生日プレゼントをもらって、驚いているじいちゃんとばあちゃんの姿や、台所で料理しながら作り方をぼくに教えるばあちゃんの様子など、その時々の姿から、ありのままの面白さが伝わればいいなと思っています」
再生回数が大きく増えた「孫のために作ったばあちゃんの弁当」
そんなともひろさんの意図が伝わったのだろう、じいちゃん、ばあちゃんの何気ない日常は、大きな反響を呼ぶことに。
「再生回数が大きく増えたのは、ばあちゃんの弁当の回ですね。手作りの卵焼きやウィンナー、きんぴらなどをきれいに並べるばあちゃんの姿を追っている動画なのですが、ちょうどコロナ禍の行動制限中で、実家に帰ることすらままならない時期でしたから、ばあちゃんを、自分の祖母と重ねて見ていた人も多く、『早く実家に帰りたいと思った』『祖父母の声が聞きたくなり電話しました』などのコメントをたくさんいただきました」
動画が人気になるにつれ、外出中に「チロちゃんのおばあちゃんですね」と声をかけられることも増えたという。
「“見ました”なんて言われると、ただただ恥ずかしいですね(笑い)。お料理をするといっても、煮物とか卵焼きとか昔の料理ですし。いまどきのもんは、よう作れません。調味料も昔ながらのもんばっかりですし…」
と、シャイな性格のばあちゃんは、照れるばかりだ。
最近は、ばあちゃんが新しい料理に挑戦し始めているという。
「反響があるのをばあちゃんもわかっているようで、応援してくれている人のためにも『レパートリーを増やさないかんね』と、レシピ本を読むようにもなりました。とにかく健康でいないと、とも思っているようです」(ともひろさん・以下同)
動画を撮り、配信することで、「当たり前の日常がより一層、愛おしく感じるようになった」と、ともひろさんはしみじみ語る。
「『サザエさん』のように、チロちゃん動画を見て、ご自身の故郷や何気ない日常を大切にしてもらえればいいなと思います。ただ、その日常はいつまでも続くわけではない。それは、ばあちゃんの味も同じ。だからこそ、大切にして動画にして後世に残せたらいいなと思っています」
「チロちゃん」に聞いた一問一答!
【Q1】家族構成は?
現在はじいちゃん、ばあちゃん、孫のともひろさんの3人暮らし。「両親は同居していませんが元気です」(ともひろさん)。
【Q2】健康に気をつけていることは?
じいちゃん、ばあちゃんのモットーは、「よく食べること、よく動くこと、新しい刺激などを受けること」ですね。
【Q3】好きな食べ物は?
ばあちゃんは、かつおのたたき。じいちゃんは、えびやトマト。
【Q4】推しはいますか?
地元高知の宣伝を頑張っている三山ひろしさんと、ご当地タレント見習いの柴田恵介さんが、2人とも好きですよ。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2024年2月15日号
https://josei7.com/
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