老後ストレスのない人間関係の築き方「夫婦の会話は“盛る”」「気の進まない誘いは断る」
80才を超えても元気に過ごしている人は、どのような生活をしているのだろうか――。それは、ストレスのない人間関係にあるという。実際に80代でも活躍する人や専門家によると『夫婦の会話は“盛る”』『気の進まない誘いは断る』『ときめきを感じる』など、少しの工夫で健康寿命を延ばすことに繋がるそうだ。さあ、あなたも実践してみてはいかがですか。
87才現役最高齢アナウンサーの活力源は夫婦の会話
2度の大病にもめげず、87才にして現役最高齢アナウンサーとして完璧に仕事を全うする押阪忍(87才)。その活力の源は妻・栗原アヤ子(81才)だ。
「私と同じくアナウンサーだった妻とはいわば“職場結婚”。とにかく明るい人で、私の原動力の半分はアヤ子さんです。今日も『いってらっしゃい』と見送ってくれたし、毎日の夕食をその日あったことを話しながら一緒に食べるのが、何よりも楽しみなんですよ」(押阪・以下同)
来年で結婚60年を迎えるおしどり夫婦だが、けんかをすることも珍しくない。
「お互い負けずに、言い合います。だけど結局、いつも最後は私が折れて、仲直りしますね(笑い)。私たちにとって、夫婦げんかはコミュニケーション手段のひとつ。お互いに思ったことを言って、どこかで引いて、互いに言いすぎたと反省するんです。会話のない夫婦よりも、けんかになったとしても何でも話し合える方がいいんじゃないでしょうか」
普段の夫婦の会話では、多少話を“盛る”ことも大事だと話す。
「闘病中、食欲が落ちてしまったときアヤ子さんは『これを食べると元気になるわよ』といつも一言添えて食事を出してくれていました。するとこちらも“あぁそうか、じゃあ一生懸命食べよう”と明るい気持ちになって、プラスワンの効果が生まれるんです。夫婦間でお互いに励ましたり、優しい言葉をかけたりするのって、たとえ少し誇張しているとわかっていてもうれしいものですよ」
家族や親戚付き合いは大切に
人生の終盤の過ごし方「ラストプランニング」の専門家として多くの高齢者の相談に乗るファイナンシャルプランナーの岡本典子さんは、家族や親戚との仲は良好に維持しておくべきとアドバイスする。
「80才以降の人生を不安なく生きていくためには、配偶者や子供、孫との関係をしっかり築いておくことを忘れずに。高齢になるとさまざまな局面で若い人の手を借りる場面が出てきます。高齢者住宅や有料老人ホームに入る場合、身元引受人が必要になります。『施設に入るから頼むね』と言えるくらいの人間関係を築いておかなければなりません」(岡本さん)
ファイナンシャルプランナーの澤木明さんも家族仲の大切さをこう話す。
「預貯金などの老後計画は、夫婦仲が悪いと現実的な話ができません。実際にファイナンシャルプランナーとして相談に乗っていると、家族や夫婦仲のいい人たちは資産の額にかかわらずお金の運用の相談もスムーズで、幸せな老後を過ごせる傾向にある」(澤木さん)
昔の友人に連絡を
気の置けない友人も、生活にゆとりをもたらしてくれる。
「相談者を見ていると、お金のほかに体と心の“3K”が必要だと実感します。心の支えになるのは友人です。お金のかからないつきあいができる気の合う友人はいくつになっても大切にしてほしい」(岡本さん)
新たな出会いがなければ、昔の友人に連絡をとってみるのもひとつの手と澤木さんは言う。
「学生時代や昔の職場の仲間に連絡して、実際に会わなくても、Zoomなどのオンラインで話をするといい。昔の仲間とつながれば、 “だらしないところは見せたくない”という気持ちにさせられて、生活にハリがでます」(澤木さん)
高齢者専門の精神科医で、『80歳の壁』(幻冬舎新書)の著書があるこころと体のクリニック院長・和田秀樹さんは、「こうした交友関係には、たとえおむつをはいてでも出るべし」と断言する。
「80代に入るとおむつが必要になる人も少なくありませんが、そのことを気にして、家から出たがらない人も。しかし、気にする必要はありません。大企業の社長や音楽家など、おむつをして活躍している人はたくさんいます。ただし、高齢者にとって人づきあいは諸刃の剣。無理な人づきあいは大きなストレスになって健康を害するので、嫌だと思ったらやめること。いい人を演じる必要はありません。無理をせず、『私は不良老人だから』と笑って断ればいいんです」(和田さん・以下同)
いつも『ときめき』を忘れない
和田さんのもとに訪れる元気な80代の中で共通するのは“ときめき”を持っていることだ。
「いくつになっても恋や性欲は大切。高齢男性がアダルトビデオを見ることを否定する人もいますがそれは大きな間違いです。男性ホルモンが増えることは健康な体を保つことにつながります。女性も、それがたとえテレビの向こうのアイドルだったとしても、恋をしたりときめいたりすると、女性ホルモンが増えて肌つやがよくなり、骨粗しょう症など加齢による病気の予防や改善にもつながります」
こまどり姉妹の姉・栄子は「いま生きていられることそのものにときめきを感じる」と目を輝かせる。
「ときめきは、異性に限ったことではありません。おいしいものを食べたとき、太陽の光が気持ちよかったときに、両親やご先祖様に感謝しようという気持ちになる。姉妹そろってこんなに長生きするとは思っていませんでしたからね。こうやって日々の小さな幸せに感謝することも80代を楽しく生きるためには必要だと思うんです」(栄子)
和田さんは最後にこんな生きるヒントをくれた。
「どんなに健康な人でも80代は体の動きも頭の回転も、10年前20年前と同じとはいきません。そうなったときに、“あれができない”“これもできなくなった”と、引き算で考えるとつらくなる。できることに目を向けて行動すると、より幸せな毎日が送れます」(和田さん)
今日一日生きてきたことに感謝して、「80才の壁」を越えるための準備を入念に行いたい。
80才からの人間関係5か条
【その1】夫婦の会話は「盛ってナンボ」
感謝やほめ言葉は少し誇張してもいいから相手に伝えること
【その2】子供や孫との関係は良好に
介護施設に入るときなど、手を借りるときがやってくる
【その3】昔の仲間と連絡を取る
「みんなに恥ずかしいところを見せたくない」と気が引き締まる
【その4】おむつを恥ずかしがらない
社交の場に出る機会が減ってしまうことの方が問題
【その5】ときめきを忘れない
テレビの向こうのアイドルでも恋することは健康につながる
※女性セブン2022年6月2日号
https://josei7.com/
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