世界の偉人【長生き習慣】ココ・シャネルさん「粗食とモンブラン」緒方貞子さん「ご褒美のアルコール」
日本人の平均寿命は年々延び続けており、厚生労働省の簡易生命表によると女性は2人に1人が90才まで、16人に1人は100才まで長生きをする時代になった。歴史に輝く偉人たちも自身の健康に注意を払いながら新境地を切り拓いたという逸話もある。世界の偉人から長生きするための生活習慣を学び、健康長寿を目指そう!
教えてくれた人
日置千弓さん/ファッションジャーナリスト、久保公子さん/元市川房枝参議院議員秘書、佐々木欧さん/医師・秋葉原駅クリニック
美を追求したシャネルの創業者も「モンブラン」には目がなかった?
“質素な食事”を心がけていたのは20世紀におけるファッション界で最も影響力が大きいとされるココ・シャネルさん(享年87)も同様だ。ファッションジャーナリストの日置千弓さんが語る。
「服を愛し、きれいに着こなすために彼女が何よりも重視したのが足元。実際、シャネルのスカートや靴は足が美しく見えるようにデザインされています。しかも彼女は自身が最大の広告塔だったので、細くて美しい足を生涯キープした。あらゆる名言を残したシャネルですが、食べ物についての言及がほとんどなかったのは、それほど関心を持たず粗食だったことの表れでしょう。特にバターを大量に使うフランス料理は食べすぎないようにしていたはずです」
簡素な食生活の中で唯一自分に許したのが「甘いもの」でホッと一息つくことだった。
「第二次大戦後にナチスへの協力を疑われてスイスに亡命していた際は、カフェで牛乳1杯とカスタードタルトを食べるのが至福の時間で、パリに戻ってからは老舗洋菓子店アンジェリーナのモンブランを好んだ。もちろん、体形維持のため制限はしていたでしょうが、スイーツには目がありませんでした」(日置さん)
自分へのご褒美にアルコールをたしなんだ緒方貞子さん
嗜好品を“相棒”に生涯現役を貫いた女性は日本にも存在する。
日本人として初めて国連難民高等弁務官に就任した緒方貞子さん(享年92)は、身長150cmの小さな体で世界を飛び回った。元市川房枝参議院議員秘書で緒方さんと親交があった久保公子さんが語る。
「とにかく現場主義でフットワークが軽い。旧ユーゴスラビア紛争中、小柄な体に防弾チョッキをまとって紛争下のサラエボをツカツカと歩く姿が忘れられません。特に何十回も訪れたアフリカでは難民の母親たちに尊敬されて、現地には『サダコ』と名付けられた女の子がたくさんいます」
そんな緒方さんがたしなんだのが少量のアルコールだった。2016年10月の朝日新聞のインタビューで彼女はこう語っている。
<夕食前にはスコッチ。水割りでちょっと飲んだら、食中酒はワインか日本酒。あとはジントニックも>
アルコールをたしなんだ日本の女性偉人は緒方さんのほかにも少なくなく、平塚らいてうは雑誌『青鞜(せいとう)』の編集作業の息抜きにビアホールに通い、与謝野晶子の詠んだ歌の中には日本酒の清廉なおいしさを表現したものがあることが記録されている。
秋葉原駅クリニックの佐々木欧医師はスイーツやアルコールといった「適度なご褒美」は体にいいと指摘する。
「過度にならない程度ならストレス緩和に役立ちます。もちろん大量にとり続けるのはよくありませんが、食べることに伴う喜びは健康を呼び寄せます。実際にアメリカのテキサス州では、100才を超えて生きた人が『長寿の秘訣はドクターペッパーを飲み続けたことさ。飲むなと言った医者が先に死んだよ』と明かした例もあります」
2022年に96才で旅立つ直前まで辣腕を振るったイギリスのエリザベス女王も、じゃがいもやパスタを控えめにしていた一方、死の間際まで毎日のチョコレートケーキや英国伝統のアフタヌーンティーを欠かさなかった。加えてその際はテーブルマナーを徹底し、皮つきのバナナをナイフとフォークでエレガントに切り分けて食したと報じられている。
「医療の現場では病気のために口から食事をとれなくなり、点滴で必要な栄養素を投与するとめっきり元気がなくなる患者が多い。人間にとって、食事は単なる栄養補給ではなく、心を満たす場でもある。意識的に食材と向き合って一口ずつ味わおうとすることも、心身の健康にとても大切だといえます」(佐々木さん)
文/池田道大 取材/小山内麗香、桜田容子、田村菜津季、祓川学、平田淳 写真/写真AC、時事通信社、アフロ
※女性セブン2023年10月26日号
https://josei7.com/
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