猫が母になつきません 第374話「整形外科ふたたび」
脱臼で再び整形外科に入院した母。ところがその病院ではクラスターが発生していたため入院中は面会ができなくなっていました。とにかくここに入院している間に新しい受け入れ先を見つけようと思いました。地元の役場に相談し母の状況を説明して条件に合った探してもらうのと同時に民間の高齢者住宅の仲介センターでも探してもらい、紹介されたところを見学してまわりました。施設に行くたびに母の現状やこれまでの経緯、薬を減らしたいという希望などを伝えました。結果母の回復に一番協力してくれそうな施設を選びました。現状維持ではなく少しでも回復させたいと思っていました。ただ、こちらが決めても施設側で母の受け入れが可能かどうか確認する必要があります。母の入院している病院が遠方な上に面会禁止なのでケアマネさんの情報や病院からもらう《診療情報提供書》から判断するしかありません。向精神薬を飲んでいるため、こちらでの精神科のかかりつけ医を決める必要もありました。
山ほどある準備事項をひとつひとつクリアしてついに母を迎えに行く日が。整形外科に入院してすでに23日。初日の手術の日以来会えていないので母がどんな状態なのかわかりません。担当医から順調に回復しているという事は聞いていましたが、入院した日の状態は最悪だったし、3週間以上会わない事なんてなかったので、今度こそ「どちらさま?」と言われてもおかしくありません。前日の夜はなかなか寝付けず、不安な気持ちいっぱいで病院に向かいました。
病院に着いて母のベッドに行き「おはよう」と声をかけると、母は目を見開いて「あら」という顔をしました。私のことをちゃんとわかってくれたようでした。顔色も良く元気そう。脱臼は不運でしたが、整形外科でリハビリをしながらしばらく過ごせたことは母にとっては幸運だったのかもしれません。4ヶ月の間に2度の骨折と脱臼で3度の手術、整形外科と精神科を行ったり来たり。「迎えに来たよ」というと母はどこに行くかも聞かないまま「じゃ、行こうか」と応えました。入所から《199日目》のことでした。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。