兄がボケました~認知症と介護と老後と「第33回 絶賛、筋肉痛でございます」
認知症を患う兄と長年暮らし、サポートを続けてきたライターのツガエマナミコさんによる日常エッセイ。自分のことをずっと後回しにしてきたマナミコさんでしたが、運動不足の解消のために、ついに動き始めたようです。
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水泳、開始
十数年振りにAmazonさまで書籍を購入いたしました。
極力書店で探す派ですし、書店になければ取り寄せてもらう派なのですが、時間がなかったのでやむを得ずトライいたしました。奇跡的に過去、やはりやむを得ず書籍を購入したときに作ったアカウントが残っておりました。でも案の定パスワードでつっかえ、お約束通りの難航ぶり。それでもなんとか「完了」までたどり着き「ご注文の確認メール」が届いたときはほっといたしました。が、ふと住所が以前のままになっていることに気づき大慌て。こういうときはどうすればいいのかと脳みそをフル回転させた結果、一度注文をキャンセルし、アカウントの住所を変更したのちに再度注文し直すという解を導き出しました。「我ながら天才」と自画自賛した次第でございます。支払いは「コンビニ」を選択し、無事に済ませましたが、本当に届くのか自信がなく、賭けのような気持ちでおりました。
翌日、ピンポーンと届くのを今か今かと待っていると、「注文の品は配達済みです!」というメールが入っているではありませんか。「え?届いてないよ⁉ やっぱり前の住所に行っちゃった?」と焦り、よくメールを見てみると「郵便受けに配達しました」とあったので、ダッシュで郵便受けを見に行くと現物があって大安堵したという顛末でございます。
Amazonさまでのお買い物はあまり好きではありません。でも世の中の常識として「Amazonなら翌日届く」が知られている以上、「時間がなくて間に合いませんでした」という言い訳は通用いたしません。次はいつAmazonさまを使うことになるかわかりませんが、新たに作りなおしたパスワードの保存場所を忘れぬようにしたいと思っております。
それはそうと、先週予告いたしました通り、ついにプールに行ってまいりました。
結果を先に申しますと、現在、絶賛!筋肉痛でございます。
そのプールは、25メートルの室内温水プールで、1日600円という格安。水着と水泳帽とタオルを持参すれば予約不要で利用できる市民プールのようなスポーツ施設でございました。
利用条件は「小学生以上」と「医師から運動を制限されていない人」の2点のみ。細かい注意事項はありますが、どれも常識の範囲でございます。
特殊だったのは、IDカードが必要なことでございます。それも初回は無料で作っていただけて、おまけに施設内にはスポーツジムや整形外科や内科もあり、カードがあればそちらも利用できるという特典付き。基本は市民のスポーツ促進や健康維持などを目的としているので、地味ながら非常に充実した施設なのでございます。
朝9時半、プールには高齢の男女が4~5人と人影はまばら。学校のプールぐらいの大きさで、周囲にはベンチがあり、20代と思しき若いスタッフが3~4人、常に利用者の安全を見守っているので、とても安心でございました。
「初めてなんですけど」と大学生のようなイケメンスタッフに声をかけると、おばあちゃんに話すように、ゆっくりとにこやかに「ここは歩くだけのコースで、行きも帰りもなるべく右側を歩いてください。こちらの3コースは泳ぐだけのコースです。途中で足はつかないでください。そしてあちらの2コースは途中で足をついてもいいですけど歩くのはダメで、基本25メートル泳いでください」などとコースの説明をしてくださいました。準備運動の指導もなく、泳ぐのも休むのもオールフリーで逆に戸惑ったくらいでございます。
数十年振りのプールなので歩くコースから入水いたしました。しばらく水に体を慣らしたところで、途中立ってもいいけれど基本25メートル泳がなければならないコースへ移動! 種目は平泳ぎ。久しぶりすぎて無駄な力が入りまくりでしたが、なんとか1本目を泳ぎ切ることができました。しかし息切れが激しく、呼吸が整うまで数分を要しました。
その後、2往復しては一旦プールから上がってベンチで休むのを5セットいたしました。でも実は1往復した時点で、すでに胸から腕にかけての筋肉が悲鳴を上げておりました。己の運動不足と、普段使っていない筋肉がハッキリクッキリわかった次第でございます。1時間もすると全身が限界。腕は上がらず、足も攣りそうな気配だったのですごすごとプールを後にしてまいりました。
正直ボロボロでございます。いかにポンコツかを思い知った1時間。でも「運動した!」という達成感で気分は爽快。1週間でこの筋肉痛が癒えるかどうかわかりませんが、ツガエは老骨に鞭を打ち来週も行く所存でございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ