家事や介護の動作が劇的にラクになる!【古武術的体の動かし方】「筋肉に頼らず全身を連動させるのがコツ」【理学療法士監修】
気象庁は2023年6~8月の全国の平均気温が1898年に統計を開始して以来最高だったと発表した。暑さのせいか「最近疲れやすい」 と体の不調を訴える人も増えているが、「ふだんの体の使い方」も大きく影響しているという。体の負担を減らし、疲れにくい体にする「古武術的な動き」を理学療法士に聞いた。
教えてくれた人
岡田慎一郎さん
理学療法士、介護福祉士。武術研究家の甲野善紀氏と出会い、古武術の体の動きを参考にした独自の介護法を編み出す。介護や医療から育児、消防救命など多岐にわたる分野で指導を行う。著書に『図解でわかる! 古武術式疲れない体の使い方』(三笠書房)ほか。
古武術的な動きで、日常動作が軽やかに!
痛みに強く、疲れにくい体をつくるには体の使い方が大切になる。「ポイントは全身の連動性です」と言うのは、古武術の動きを日常動作に取り入れた「体の使い方」を提唱する岡田慎一郎さんだ。
※古武術的な体の使い方の入門編は以下を参照してください。
→「肩甲骨と腕は一緒に動かせる?」疲れない・痛まない体を作る筋トレ不要の夏バテ解消法
今回紹介するのは、日々の動きをラクにする古武術の動きを日常動作に取り入れる方法。
<古武術的上半身の使い方>:買い物バッグを持つ→手の甲を内側に返して持つ
「買い物バッグを持つ手がつらくなったら、手の甲を内側に返し、肩甲骨を広げながら持つと負荷が分散されてラクに運べます」(岡田さん・以下同)
<古武術的上半身の使い方>:ビジネスバッグを持つ→肩甲骨を広げながら腕にかける
<古武術的体幹の使い方>:スマホを見る→骨盤を前傾させて腰骨、背中、肩を少しずつ曲げる
「首だけを動かすのは×。骨盤を少し前傾させ、腰骨、背中、肩を少しずつ曲げて首への負担を減らします」。
<古武術的下半身の使い方>:ぞうきんがけ→片ひざを立て、つま先を外に広げる
「ぞうきんがけは片ひざを立て、つま先を外に広げると左右の股関節が広がり、姿勢が安定します」また、物を拾うときは腰から曲げるのではなくお尻から上体を倒すようにすると、腰への負担が軽減します」
<古武術的下半身の使い方>:物を拾う→お尻から上体を倒す
「物を拾うときは腰から曲げるのではなくお尻から上体を倒すようにすると、腰への負担が軽減します」
<古武術的全身の使い方>:重い荷物を持ち上げる→つま先を外に、股関節を開いて、肩甲骨を広げて持つ
「つま先を外に開き、股関節を開きながら上体を倒し、肩甲骨を広げて荷物を持ちます。そうすることで荷物と体が一体化し、持ち上げやすくなります。そして、股関節から上体を起こしていくと全身が連動し、驚くほどラクに持ち上がります」
【1】つま先を外に開き、股関節を開きながら上体を倒し、肩甲骨を広げて
【2】股関節から上体を起こすと…
【3】重たい荷物でもラクに持てた!
古武術的な動きで自分の体の可能性に気づこう!
先述までの体の使い方は、日常でどう応用できるのか。
「高いところの物を取る場合、肩甲骨を広げ、背中を後ろに引くイメージで腕を伸ばすと、ただ腕を伸ばしたときよりも5~10cmは腕を長く使えます」(岡田さん・以下同)
正確な前傾姿勢が身につけば、前屈みの姿勢が続く台所仕事も格段にラクになる。また、片足を後ろに引くだけで前傾姿勢もしやすくなる。
「足腰に負担の多い浴槽掃除も、正しい前傾姿勢を取りながら、足は踏みしめずリラックスして行うと、とても動きやすくなります。また、コンテナボックスなど取っ手の付いた箱を持ち上げるときは、取っ手の内側に手を掛けて持ってみてください。肩甲骨が広がり、背中に適度な張りが生じて重くても持ち上がりやすくなるはずです」
酒店などでは、このようにしてビールケースを運ぶそう。
「古武術的な動きをヒントに、介護動作が劇的にラクになった女性もいます。生活に必要な動きの中で自然と鍛えられるのがいちばんだと思います」
→オバ記者が体験する「古武術介護」とは?体を痛めずラクにできる新介助術をプロに学ぶ
これまでの動き方のクセを直すのは少し時間がかかりそうだが、軽やかに動く明日を目指して、やってみよう!
古武術を日常に応用する方法まとめ
●高いところの物を取るときは、肩甲骨を広げ、背中を後ろに引くイメージで
●浴槽掃除は、正しい前傾姿勢で、足を踏みしめない
●取っ手の付いた箱を持ち上げるときは、取っ手の内側に手を掛ける
※正しい前傾姿勢は以下の記事を参照してください。
「肩甲骨と腕は一緒に動かせる?」疲れない・痛まない体を作る筋トレ不要の夏バテ解消法
取材・文/佐藤有栄 撮影/森 浩司 モデル/片山 瞳(Jungle)
※女性セブン2023年9月7日号
https://josei7.com/