在宅介護における防災対策を徹底解説 自力で動けない人、車いす利用者の避難方法などもしもに備えて覚えておきたいこと
今日は「防災の日」(9月1日)。介護・介助と防災について考えておきたい。地震や台風・火災などの災害が起きたとき、介護・介助が必要な人を、どのように守ればいいのだろうか?自力では避難が難しい人を安全に守るための方法や準備について専門家に伺った。
教えてくれた人
防災介助士インストラクター、サービス介助士インストラクタ
桜美林大学院老年学研究科修士課程修了。公益財団法人「日本ケアフィット共育機構」の事務局に勤務し、防災に関する知識や情報を啓発している。企業や教育機関などで高齢者や障がい者に対する介助技術を含めた接遇についての講演などを行う。近年はボランティア組織の構築、施設のユニバーサルチェック、災害時の避難行動要支援者対策なども担当。
https://www.carefit.org/
災害には普段からの備えが大切
「自然災害などはいつ起きるか予測ができませんから、普段からの準備がとても重要です」
こう話すのは、防災介助士インストラクターの冨樫正義さん。普段はあまり聞き慣れないが、「防災介助士」とはどのようなものなのだろうか。
「防災介助士」とは?
防災介助士とは、公益財団法人「日本ケアフィット共育機構」が認定している民間の資格。同機構のもと、災害についての知識・準備・家族や周囲の人や避難行動要支援者※を助けるための方法などを習得している。
※避難行動要支援者=自力では避難が難しい人のこと。
「高齢者や障がい者など支援や配慮が必要な人たち(災害基本法にいう要配慮者、避難行動要支援者など)への対応に焦点を当て、いつでも起こりうる災害について理解しておくことが大切です。
防災介助士は、普段から災害にどのように備えるか、災害が起きた時にどのように行動し、実践に結びつけるかを学んでいます」(以下、冨樫さん)
在宅介護の防災対策に必要なものチェックリスト
防災介助士の資格を持つ冨樫さんに、普段からの備えとして、何を準備しておく必要があるのか、教えてもらった。
「在宅介護を受けているかたの状況により異なりますが、日常生活において必要としている物、健康管理のために必要な物をいざという時に持参できるよう準備しておきましょう」
【日常生活で必要な物】
・老眼鏡や補聴器(充電器や電池などを含む)、入れ歯など生活において必要な物。
・杖や車いすなど普段の移動時に必要としている物。
普段の歩行で必要なくても、折り畳み式の杖を用意していると便利とのこと。
【健康管理のため必要な物】
・処方薬や常備薬など普段服用しているお薬と飲料水。
・お薬手帳や処方箋、健康保険証など普段の医療機関との関りが分かる物。
・避難所での生活を考え、紙おむつ、入れ歯洗浄剤など口腔ケアに必要な洗浄液やシート、ウエットティッシュ、マスクなど。
【防災に備えておくと役立つ物】
そのほかにも、以下の物を用意しておくといざという時に役立つとのこと。
・懐中電灯:暗い中、移動する時のため
・ラジオ:災害情報を入手するため
・電池やバッテリー:携帯電話や補聴器の充電のため
・笛:大声を出さなくても居場所を知らせられるため
・食品用ラップフィルム:おにぎりなどを食べると
・家族などの連絡先を書いた手帳など:周囲の人のサポートを得やすくなるため
「このほかにも、固いものを食べることが難しい人は、自身が食べやすい缶詰やゼリーなどの栄養補助食品があると安心です」
家庭内の事故防止に「3ない」の環境作りが大切
「部屋を見渡して『落ちてこない』『倒れてこない』『移動してこない』環境作りをすることが必要です」と話す冨樫さん。
地震の際の具体的な事故防止の方法を教えてもらった。
・家具
倒れてこないように壁に固定したり、万が一倒れても人の上に倒れたりしないように、家具の向きを調整する。避難の邪魔にならないように、部屋の出入口の周りには大きな家具は置かない。
・窓
ガラスが割れないように飛散防止フィルムを貼る。食器棚など観音開きの家具があれば、揺れで開かないようにキャビネットストッパーなどで固定する。食器棚の中から食器が滑り落ちないように、食器の下に滑り止めシートを敷いて事前に対策を。
・ドア
部屋の出入り口がふさがれないように、ドア近くに移動式のワゴンや倒れそうな家具や物を置かない。
「災害時には避難経路を確保することが大切です。万が一、出入口が使用できない状態になったとしても、別のルートで避難できるように、日頃から動線を確認しておきましょう。
車いすを利用しているかたがいる場合は、避難時に邪魔になりそうな物を廊下などに置かないように気をつけてください」