「グラッ、大震災は突然に…」高齢世帯が備えておきたい防災セット5選「リハビリパンツはあると便利」
大震災だけでなく最近では線状降水帯による水害など、自然災害は他人事ではない。「自分は大丈夫だろう」という思い込みは危険です」と、長年に渡る高齢の親の介護経験をもつ社会福祉士の渋澤和世さん。高齢世帯にフォーカスを当て、災害への備えや心構えについて解説いただいた。
防災月間「高齢者ほど災害に備えて準備を」
9月は防災月間です。防災の日(9月1日)に始まり、9月が防災月間となっているのは、1923年9月1日に発生した関東大震災により首都圏に壊滅的な被害が出たことから、過去の大災害の教訓を忘れないためともいわれています。
日本は地震が多い国であることは皆さんご存知だと思いますが、実際に今年に入ってからマグニチュード3.0以上の地震が3,015回も起きています。
※気象庁「過去1年間に震度1以上を観測した地震の最大震度別の月別回数」(令和6年7月~令和7年6月)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2507/08b/2506eq-data.pdf
いつどこで大きな地震が発生するかはわかりません。慣用句に地震雷火事親父(じしんかみなりかじおやじ)という言葉がありますが、これは昔の人が恐ろしいと感じたものを、順番に並べた言葉です。江戸時代には既に使われていたようなので昔から日本には地震が多く人々に恐れられていたことがわかります。
東日本大震災の死者「約65%が60才以上」
東日本大震災による被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県では、死者の約65%が60才以上でした。
※内閣府「東日本大震災における死者と地域人口の年齢構成比較(岩手県・宮城県・福島県)」
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h23/bousai2011/html/zu/zu005.htm
高齢者は身体能力や判断能力の低下などから、逃げ遅れてしまうケースもあるでしょう。スマホやSNSがうまく使いこなせず、情報を得るのが遅れてしまう可能性もあります。
災害時に安全に避難するためには、高齢者はとくに事前の準備と適切な行動がより重要となります。
「もしも」の時の行動について考えておこう
「あっ、大きな揺れだ、地震だ!」。そんな、いざというとき、どんな行動をとればよいのでしょうか。
屋内で地震にあった場合は、その場で「まず低く、頭を守り、動かない」を実践する「シェイクアウト」という訓練があります。これは地震発生時の安全確保を身に着けるもので、自治体などでも実施されています。
具体的には以下のような行動です。
・揺れを感じたり地震速報がでたりしたら安全な場所で姿勢を低くする。
・テーブルの下に入る、ヘルメットをかぶるなどで落下物から頭を守る。
・揺れがおさまるまで身をかがめて動かないこと。
シェイクアウトに関しては、各都道府県で訓練用音源の貸し出しなどもあるので興味のあるかたは情報を探してみてください。
住まいの耐震性は大丈夫?
また、建物の耐震性もかかわってきます。体験談として「家の耐震補強をした後で、震度5の地震がきたが被害がなかった」というかたもいらっしゃいます。建築確認の通知書が昭和56年6月1日より前の発行日である※、老朽化している、基礎がコンクリートではないなどであれば、自治体に登録されている業者などで耐震診断をしておくと安心です。
自治体によっては耐震診断や耐震改修に助成金がある場合もあるため、自治体に相談してみましょう。
※新耐震基準で建てられているか、旧耐震基準で建てられているかは、昭和56年6月1日以前の建物か、以降の建物かで判断される。
このほか、スーパーなどよく行く場所は非常階段や非常口を確認しておくこと、移動中の乗り物などでは、乗務員の指示に従うなど、外出中の行動についても日頃から注意しておきたいものです。
高齢世帯の防災セット「これだけは用意しておこう」
防災セットは準備されていますか? 大きな地震で避難所へ身を寄せることになった場合、避難所には初動対応用備蓄品として食料や飲料水のほか、生活必需品(アルミ毛布や携帯トイレ等)が準備されているので、そうしたものは避難所に任せてもいいでしょう。
私からの提案としては、高齢者が特に必要とするものを準備しておくことをおすすめします。以下のようなものがあると安心です。
【1】貴重品…保険証、お薬手帳、保険証券、通帳のコピー、家族の連絡先のメモなど
【2】避難用具…軍手、防災頭巾
【3】医薬品…絆創膏、持病の薬など
【4】生活用品…タオル、トイレットペーパー、リハビリパンツなど
【5】洗面用具…歯ブラシ、入れ歯ケース、洗浄剤など
リハビリパンツなどのオムツや尿取りパッドは後処理もしやすいので準備しておくと安心です。トイレが使えない場合や混雑することもあるため、普段は自分でトイレに行けるかたも数枚、防災セットの中に入れておくといいでしょう。
また、スーパーのレジ袋も重宝します。これはイザというとき汚物入れになります。それらを玄関近くにおいてください。避難の時には玄関を通る可能性が一番高いからです。その際、歩きやすい靴を横に置いておくようにしてください。
市区町村の「避難行動要支援者名簿」に登録を
高齢者ご自身や、高齢の親だけでは避難が難しいと感じているなら、「避難行動要支援者名簿」の登録を検討してください。避難行動要支援者名簿は、市町村に作成が義務付けられています※。この名簿によって、災害が発生した際に自ら避難することが困難と思われるかたを管理・把握し、災害時の避難支援や安否確認などに利用されます。
高齢者のみの世帯、要介護3以上、障害のあるかたなどが対象ですが、該当しなくても自力避難が不安なときは自治体に相談してみることをおすすめします。
※内閣府「防災情報のページ」避難行動要支援者の避難行動支援に関すること。
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/yoshiensha.html
その他にも、自宅内の大きな家具は固定する、出入り口や通路にモノを置かないなど自宅の地震対策をしておきましょう。
地域の防災訓練があれば参加して、町内会の人たちと顔見知りになることも高齢になればなるほど大切です。是非心がけてみてください。
地震だけに限りませんが、福岡県の防災の手引きが参考になるので、ぜひ通してみてほしいと思います。多くの知識を得ることができます。
■福岡県「シニア世代の防災のてびき」
https://www.bousai.pref.fukuoka.jp/burger_editor/burger_editor/dl/10__TmV3c0RldGFpbDE1NDA0ZmlsZQ-D-.pdf
※修正ページのお知らせ https://www.bousai.pref.fukuoka.jp/edification/elderly
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長い人生の中で「命を左右する自然災害の当事者に自分がなるなんて」と思うかもしれませんが、普段から防災意識を高めることに本記事がお役に立てれば幸いです。