「大地震や台風などの災害時、通帳やキャッシュカードを紛失したらお金は下ろせなくなる?」 お金にまつわる備えと対策をFPが解説
大地震や台風など自然災害はいつ起こるとも限らない。非常食や水の備蓄も大切だが、お金に関する準備はしているだろうか? 災害時に通帳やキャッシュカードをなくしたらどうなるのだろうか。いざというときのお金にまつわる準備や対策について、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
災害時にはキャッシュレスよりも現金?
最近では、スーパー、コンビニ、交通機関などでクレジットカード、コード決済、電子マネーなどを利用している人を多く、キャッシュレス化が進んでいます。しかし、一定のデジタルリテラシーや登録の手間が必要なので、高齢者には使用できないケースも。
また、災害時など、通信回線が機能しない環境、あるいは電力が供給されない環境においてはキャッシュレス決済が使用できないリスクもあります。大地震や台風などが増えている昨今、災害時のお金の対応について考えてみましょう。
現金は小銭も用意しておくと安心
災害時においては、停電や通信障害などで一時的に現金しか使えなくなる場合があります。もしもの時に備えて、持ち出し用のバックなどに現金も入れておくことをおすすめします。
我が家の場合は、いざというときに備えて非常用持ち出し袋に、現金を2~3万円ほど用意しています。
首相官邸による「災害時の<備え>チェックリスト」によると、非常用持ち出し袋と一緒に持ち出せるように、貴重品「通帳、現金、保険証、運転免許証、病院の診察券、マイナンバーカードなど」を準備しておくのがいいとされています。
※参考/首相官邸「災害時の<備え>チェックリスト」
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html
また、通信障害などで携帯電話が使えなくなる場合に備えて、公衆電話が利用できるように10円玉や100円玉硬貨もあわせて準備しておくこともおすすめします。
さらに、公衆電話の場所も調べておくと安心です。NTT(東日本・西日本)の公衆電話設置場所検索」サイトで調べることができます。
※参考/公衆電話設置場所検索 NTT東日本
https://publictelephone.ntt-east.co.jp/ptd/map/
※参考/公衆電話設置場所検索 NTT西日本
https://www.ntt-west.co.jp/ptd/map/
<Check!>
・現金は小銭も用意しておこう
・貴重品「通帳、現金、保険証、運転免許証、病院の診察券、マイナンバーカードなど」をすぐに持ち出せるようにまとめておこう
・公衆電話の場所をチェックしておこう
災害時に通帳や印鑑がなくなったらお金は引き出せる?
いざというときに、通帳や印鑑が燃えてしまったり、がれきの下敷きになったりして持ち出せない場合、お金はどうやって引き出すのでしょうか。
大規模災害時には日本銀行が被災地の金融機関に対して「災害時における金融上の特別措置」を要請し、被災者が、通帳や印鑑を紛失しても引き出しができるように柔軟な対応を求めています。
直近では、令和6年台風第10号の時に「災害時における金融上の特別措置」が要請されています。
これらの措置により、基本的には、金融機関が本人であることを確認できれば引き出しが可能になります。
また、1日に引き出せる金額は金融機関で決まっており、例えば、ゆうちょ銀行ではひとり20万円までとなっています。
※参考/金融庁「災害等における被災者等支援について― 金融上の措置要請 ―」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/hisaisyashien_kinyusochi.html
※参考/ゆうちょ銀行「地震、台風、大雪等災害の被害により、通帳、印章、キャッシュカードを持っていません。払戻しをすることは可能ですか。」
https://faq.jp-bank.japanpost.jp/faq_list.html?page=1&category=219
通帳やカードの紛失時は「身分証明書」が有効
災害時に銀行の通帳やカード、印鑑を紛失した場合でも、本人確認ができれば金融機関からお金を引き出すことができます。本人確認書類とは、氏名・住所・生年月日の記載されたもので、顔写真の有無で金融機関に提示する書類の点数が異なってきます。
顔写真付きの身分証明書
顔写真付きの身分証明書は、いずれか1点だけ提示すれば足ります。
運転免許証
運転経歴証明書(2012年4月1日以降交付のもの)
旅券(パスポート)(2020年2月3日以前に申請されたもの)
個人番号カード(マイナンバーカード)
在留カード・特別永住者証明書
官公庁が顔写真を貼付した各種福祉手帳(身体障害者手帳など)など
顔写真のない身分証明書
顔写真のない身分証明書は、2点の本人確認書類や1点の本人確認書類に加えて公共料金の領収書などを提示する必要があります。
各種健康保険証・各種年金手帳
顔写真が貼付されていない各種福祉手帳(母子健康手帳など)
住民票の写し・住民票の記載事項証明書
印鑑登録証明書
戸籍謄本・抄本(戸籍の附票の写しが添付されているもの)
旅券(パスポート)(2020年2月4日以降に申請されたもの)など
※参考/一般社団法人全国銀行協会「本人確認書類って何?」
https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/7483/
災害時、身分証明書もなくした場合はどうなる?
本人確認書類も紛失してしまった場合、金融機関の対応はどうなるのでしょうか。
金融機関は、弾力的・柔軟な対応として、本人に氏名や住所などを申告してもらい、本人であることが確認できればお金を引き出せる場合もありますので、必ず取引している金融機関に相談し確認することをすすめします。
また、金融機関の手続きを円滑にするためにも通帳のコピー、口座番号を書いたメモや身分証明書のコピーなどを非常用持ち出しバックなどに入れておきましょう。
<Check!>
・お金の引き出しに身分証明書が必須
・非常用持ち出し袋には(1つ、または2つ)コピーの準備を
もしもの時のお金にまつわる準備【まとめ】
災害はいつ起きるかわかりません。常日頃から準備をしておくことで慌てずに対応することができるのではないでしょうか。
もしもに備えて「お金」にまつわる準備Checkリスト
□現金(10円玉や100円玉硬貨を含めて2~3万円)
□預貯金通帳※
□パスポート※
□運転免許証※
□マイナンバーカード※
□健康保険証※
□年金手帳※
□印鑑
□有価証券・金券など※
□病院の診察券・お薬手帳※
※コピーを保管しておくといいでしょう
災害で通帳や印鑑などを紛失した場合でも、本人確認ができれば金融機関での払い戻しも可能です。
いざというときにすぐに持ち出せるように、通帳や本人確認書類などのコピー、硬貨も含めた現金も準備しておきましょう。
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