日本人は「世界一睡眠が足りていない国民」だった!「明るすぎる照明」と「長風呂」が快眠を妨げる原因に
日本人の睡眠時間は、OECD(経済協力開発機構)33か国でもっとも短い7時間22分。アメリカは8時間51分、イギリスは8時間28分、中国に至っては9時間1分と、他国の平均睡眠時間は8時間以上が当たり前。さらに日本に次いで睡眠時間が短い韓国でさえ7時間51分と、日本より30分も長い。日本人が「世界一睡眠が足りていない国民」の理由を探った。
「光」と「湯」を制する者が快眠を制する
私たちが眠れていない原因の1つは、夜の照明の「明るさ」。日本では夜でもまるで昼間のように明るい室内が好まれるが、欧米では、家の中はホテルの客室やバーのように、暗くオレンジがかった照明にするのが一般的だ。
寝具で有名な昭和西川の代表取締役副社長で睡眠研究家の西川ユカコさんが指摘する。
「一般的な日本の家庭の照明は200~500ルクスですが、目の網膜に500ルクス以上の光が届くと、夜であっても脳が“まだ昼だ”と認識して覚醒してしまい、“睡眠ホルモン”と呼ばれる『メラトニン』の分泌が抑えられてしまうのです。メラトニンは眠気を起こすだけでなく強力な抗酸化作用があり、疲労回復、アンチエイジングのほか、がんなどの病気の予防にもなります」
これには、自律神経が大きく関係している。自律神経には日中、活発に活動しているときに優位に働いて心身の“アクセル”の働きを担う交感神経と、夜になると優位になって“ブレーキ”として心身をリラックスさせる副交感神経があり、この2つが切り替わることで体をコントロールしている。
一日中明るいところで過ごすことは、常に交感神経が優位になり“太陽が沈まない”のと同義なのだ。
「日本人にとってはやや暗めの200~300ルクスでもメラトニンの分泌が減少するというデータもあるので、間接照明だけを使うか、明るさや色味を調節できる照明を使ってほしい」(西川さん)
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寝室は「真っ暗」にしてカーテンは「10cm開け」
眠るときは、寝室を「真っ暗」にするのが正解だ。奈良県立医科大学の研究では、豆電球の明かりをつけて寝る人と真っ暗にして寝る人を比較したところ、前者は後者に比べて肥満やコレステロール異常のリスクが1.7~1.9倍になった。
中部大学・生命健康科学研究所の特任教授、宮崎総一郎さんが解説する。
「豆電球ほどの小さな明かりですら、光にさらされる『光曝露(ばくろ)』が生体リズムを乱し、肥満の原因になってしまうということです」
一方、日中はできるだけ明るい場所で過ごすことが、夜の快眠につながる。朝起きたら必ずカーテンと窓を開けて、太陽の光を目に入れよう。
「網膜が光の刺激を受けると“幸せホルモン”と呼ばれる『セロトニン』が分泌されて、体内時計が整います。このセロトニンは夜になると睡眠ホルモンの『メラトニン』に変わって、眠りを誘う。つまり、夜の眠りの質はその日の朝に決まっているのです」(西川さん)
宮崎さんがすすめるのは、カーテンを10cmほど開けたまま眠ること。朝の光が寝室に入ることで、自然に目が覚めやすくなる。
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