女優・八千草薫さん、加藤治子さんがおひとりさまでも「幸せな最期」を迎えられた理由
『寺内貫太郎一家』や『阿修羅のごとく』(ともにTBS系)などのホームドラマで活躍した女優の加藤治子さん(享年92)もまた“おひとりさま”として最期を迎えた。最初の夫と死別後に再婚するも離婚し、生涯子供をもうけず、母や姉は加藤さんが50代半ばになるまでに他界。天涯孤独のおひとりさまだった加藤さんが最後に選んだのは「友人への相続」だった。
「乳がんで余命5か月を宣告された加藤さんは相続の準備を始め、世田谷の一等地に建つ自宅を処分して、そのお金を5人の友人で分割するよう定めた遺言書を作成しました。5人とは、個人事務所の代表取締役兼マネジャーのAさん、友人のBさん、縁戚のCさん、Aさんの親友だったDさん、2度目の夫の再々婚相手でありながら、友情関係で結ばれたEさん。加藤さんにとって大切な人たちでした」(加藤さんを知る関係者)
2015年11月に加藤さんが他界すると遺言書に沿って自宅が売却され、5人にそのお金が振り分けられた。
「単なる知人や友人が遺贈を受けると相続税が2割増しになりますが、それでも加藤さんは大切な友に“贈り物”がしたかったのでしょう。彼女はいつも電気をつけたまま休んでいましたが、最後の言葉は“今日は眠るから電気を消して”だったそうです」(前出・加藤さんを知る関係者)
→看取り士が見守り、寄り添うことで本人も家族も豊かな最期が叶った実例
人生最後をどの場所で迎えるかを考える
一般社団法人「日本看取り士会」の会長である柴田久美子さんがこう言う。
「独り身だからといって、死の質(QOD=Quality Of Death)が大きく下がることはありません。私が看取ったなかでも尊厳のある死を迎えたかたがいます」
柴田さんが看取った高齢の独居女性は認知症を患っていた。足腰が弱って食事の量も減ったため、遠方に住む姪が看取りを依頼したのだった。
「面会するたび“財布を取られたの”と繰り返す状態で、“一緒に探しましょう”と返すのが恒例でした。ただし物忘れがどれほどひどくなっても彼女は最後まで“家で死にたい”と言い続け、実際に自宅で亡くなった。確かに大変な思いをしたかもしれませんが、自らの希望を口に出して自ら叶えた、とても尊厳のある死に方でした」(柴田さん)
おひとりさまでもそうでなくても人生の終わりをわが家で迎えたいと望む人は多い。
「自宅が病院と違うのは『生活』があること。慣れ親しんだ居間や台所、天井など一つひとつが心を落ちつけて安心して暮らせる場所です。死を前にした人にとって、それまで自分が生きてきた場所であり、また家族がいる場合、最期にわがままを言える。そんな環境で過ごすことは、旅立つ前の大切な思い出にもなる。自宅には『力』があるんです」(柴田さん)
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撮影/本誌写真部 写真/時事通信社
※女性セブン2023年6月8日号
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