おひとりさまの終活【社会福祉協議会の終身サポート】実例を元にサポート内容を紹介!「関係機関と情報共有、介護保険や成年後見までつなぐ包括的支援体制」
65才以上の女性の約4人に1人がひとり暮らし(※1)を迎える日本において、誰にも看取られずに亡くなる可能性もある。「無縁遺体」が全国で約4万人余(※2)に上る中、自治体でも終身サポート事業への取り組みが進んでいる。社会福祉協議会が運営する終身サポート事業では、どのような支援が行われているのか。神奈川県川崎市の川崎市社会福祉協議会が手がける「川崎市未来あんしんサポート事業」を例に、その内容を見ていく。
※1 厚生労働省 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」令和6(2024)年推計による。
※2/厚生労働省による調査で、自治体が2023年度に火葬・埋葬した無縁遺体は全国で約4万2000人に上ると推計された。
教えてくれた人
黒澤史津乃(しずの)さん/高齢者等終身サポートアドバイザー、行政書士、消費生活アドバイザー、OAGウェルビーR代表取締役。全国高齢者等終身サポート事業者協会理事長。親や自身の介護、終活の“基本のき”を学び、情報交換ができるオンラインサロン「大人の未来LABO」が2月より運用スタート。共著書に『家族に頼らないおひとりさまの終活』(ビジネス教育出版社)ほか
菅茂生さん/川崎市社会福祉協議会
民間と自治体、それぞれの終身サポート
「誰にも迷惑をかけたくない、でもその方法がわからない」という人の味方になると注目されるのが「終身サポート」。入院や転居に必要な身元保証、安否確認や通院の付き添いといった生活支援から葬儀や埋葬、死後事務などの手続きを、家族に代わって事業者が行ってくれるサービスだ。おひとりさまの増加に伴い、そのニーズは高まっている。
サポート先の選択肢は、主に3つ。
「民間による『高齢者等終身サポート事業者』と、自治体や社会福祉協議会(地域に設置された非営利組織)が運営するものがあり、事業者によってサービス内容や利用条件、費用などが変わってきます」(高齢者等終身サポートアドバイザーの黒澤史津乃さん・以下同)
身の回りの世話は親族に、死後の手続きは専門家に頼むなど、事柄に応じてサポート先を変える方法もある。
健康状態、予算の事情などでサポートを受ける時期は人それぞれだが、意思決定しておくと安心だ。
誰に相談したらいいの?<老後生活の主なサポート先>
老後生活の主なるサポート先は以下の3つだ。
【サポート先1】高齢者等終身サポート事業者
民間企業が運営。生前から死後事務までトータルでサポートが受けられる半面、事業者選びが難しく、地域に事業者がいないことも。初期費用の目安は100万〜200万円。
【サポート先2】自治体、社会福祉協議会等
自治体から委託を受けた社会福祉協議会などが運営。地元という安心感があり、民間業者より費用も安い。65才以上を対象とし、葬儀・埋葬を行える親族がいないことなどの条件がある。費用の目安は数十万円〜。
【サポート先3】親族や友人、民間事業者、自治体などを組み合わせる
死後の手続きは民間事業者、遺言は公証人、日常の支援は知人など、目的に応じて支援先を選ぶ。費用が抑えられるが、知人からの支援が受けられなくなったなど不測の事態も生じやすい。
社会福祉協議会が行う終身支援
神奈川県の川崎市社会福祉協議会が運営する「川崎市未来あんしんサポート事業(以下、あんしんサポート)」は、65才以上を対象に「生前見守り」「葬儀・埋葬」「遺言作成支援・執行」の3点をセットとしたサービスを提供している。
「利用者の9割は70〜80代。うち6割が女性です。結婚歴がないかたや離婚、夫や子供に先立たれたなどでひとり暮らしの女性、夫婦ふたりなど、子供がいないかたが多いですね。契約能力があれば、ご病気でも、要介護状態でも契約に支障はありません」(川崎市社会福祉協議会の菅茂生さん)
あんしんサポートを契約した理由はさまざまだ。
「最初は『自分が亡くなった後、体や財産はどうなるのか不安』『自分が望む葬儀・埋葬をしてほしい』という事情から役所に相談に行って、あんしんサポートを紹介されたというケースが多くみられます」(菅さん・以下同)
主なサポート内容(「川崎市未来あんしんサポート事業」の場合)
「川崎市未来安心サポート事業」の場合を紹介する。
生前見守りサービス
定期確認、ボランティア活動、介護予防教室などの紹介
葬儀・埋葬サービス
遺言作成支援・執行サービス
その他有償サービス
預貯金通帳や実印などの書類等預かり(年間3300円〜)
入院・入所支援、通院・通所支援、退院・退所支援
支払い代行・転居手続き支援など
上記いずれも1時間2200円、2時間4400円、2時間超5500円
※職員対応ができない場合もあり
費用
入会金2万2000円(介護保険料段階が第3段階以下は1万1000円)、年会費1万560円(月880円、年度途中加入の場合は月割)、事務管理費3万3000円〜、預託金60万円〜。内訳は、遺言執行報酬の充当分30万円、葬儀・埋葬費用30万円〜(故人の遺志などで変わる)など。※「川崎市未来あんしんサポート事業」の場合
地域で連携して老後の生活を支援
役所を通じ、漠然とした心配事からあんしんサポートなどの福祉サービスにつないでもらえるのが、地域に相談するメリットだ。
「契約後、皆さん『これでほっとした』と安心されます。ほかにも、『樹木葬の情報がほしい』というお問い合わせもありました。こうしたことを入り口に、終活に関する包括的な情報が、必要なかたに届いてほしいと思います」
あんしんサポートでは、見守りとして月1回の電話、6か月ごとの自宅訪問で利用者の状況を確認するというが、日常生活の支援は契約外のため有償サービスとなる。次第に体が動かなくなるとき、有償サービスを頼みたくても経済的に厳しいという人もいそうだが。
「あんしんサポートの契約をされたら、地域包括支援センター(高齢者に関する支援・相談窓口)やケアマネジャーなどの関係機関と情報共有をします。そして、訪問時に介護の必要性を感じたら、関係機関にその懸念を伝え、介護保険のサービスや成年後見制度を開始する、施設入居を検討するなど、広範囲でサポートする体制を取っています。契約時の契約書にも、関係機関に情報共有する旨を明記しています」
自分の「こうしたい」を決めておく
前出の黒澤さんと同様、菅さんもまた、「学び」の重要性を語る。
「川崎市の場合、『65歳からはじめる 私と家族の終活べんり帳』という冊子を配布し、物の整理や介護、不動産など終活に必要な情報を発信しています。まずは老後に関する知識を学び、ご自分にとって有効なものをエンディングノートなどに書き留めておくといいですね」
ノートに書くことで、本当に必要なものに気づくこともあるという。
「事務的な事柄はもちろんのこと、ご自身がこれまで何を大切にして生きてきたのか。これから、あるいは亡くなった後も何を大切にしたいのかといった『人生の価値』を考える機会になるでしょう。書かないまでも、自分の『こうしたい』を決めておくのはいいことだと思います」
自分の地域の終身サポートについては役所に尋ねるか、「市区町村名 終身サポート」などでインターネット検索を。
自分の老後が不安。そう感じたときが、サポート探しの始め時なのだ。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/細川夏子
※女性セブン2026年3月5日号
https://josei7.com
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