5分で簡単!ひざ裏を伸ばす「壁ドンストレッチ」で全身の不調を改善【専門家解説】
腰やひざの痛み──そんな全身の不調に悩まされている時、真っ先にやるべきは「体を伸ばすこと」だった。5分で健康と美容が手に入る簡単な方法を専門家に聞いた。全身の”要”となる「ひざ裏」を伸ばすことから始めてみよう!
不調の9割は「体を伸ばす」ことでよくなる
一年のうち最も寒暖差が激しく、新年度を迎えて生活環境が大きく変わる春は、蓄積された疲れが表に出やすい季節だ。休日にたっぷり体を休めてもなぜか長引く不調の原因は、体が縮んで硬くなっていることにあるかもしれない。
株式会社「スポーツモチベーション」のフィジカルトレーナーとして幅広い世代に運動指導を行う古谷有騎さんが解説する。
「健康で美しい体は、いわば“しっかり張られたテント”。支柱となる骨が積み木のように重なり合い、そこに付着した筋肉がお互いに前後左右に引っ張り合うことで、バランスを保っています。しかし、運動不足や加齢によって体の柔軟性が失われると、あちこちの筋肉が硬く縮こまり、全身のバランスが崩れてしまう。その結果、テントがたゆんだり倒れてしまったりするように、猫背や肩こり、腰痛といったさまざまな弊害が現れてきます」
その状態が長引くと、さらなる不調が生じる。
「縮こまった筋肉は“痛みの連鎖”を生み出します。筋肉が硬くなると血液の循環が悪化して、全身の細胞に酸素や栄養素が届きにくくなってしまう。その結果、老廃物が蓄積して疲労感を感じやすくなります。加えて緊張した筋肉は毛細血管を傷つけて炎症を起こします。それによって痛みが生じれば、筋肉はさらに緊張しやすくなり、よりいっそう強い痛みを感じるようになる。つまり、硬く縮こまった体は負のサイクルを生むのです」(古谷さん)
翻っていえば、固まった筋肉がしっかり伸びれば痛みや不調は大きく改善されるということ。ではまずどこを伸ばすべきか。
ひざ裏は“全身の要”である
かわむらクリニック院長の川村明さんが真っ先に挙げたのは「ひざ裏」だ。
「加齢や病気による体の衰えは、まずひざに現れます。実際、年を重ねた人のほとんどは少しひざが曲がっている。悪化すると下半身の筋肉のバランスが崩れて体幹が衰え、それにつられて上半身もゆがんでしまう。その結果、腰が曲がったり、首や肩が前に出てきたりする原因になります。この状態になれば、いくら背筋を伸ばして上半身の姿勢を正してもすぐに戻ってしまいます」
つまり、ひざ裏は“全身の要”なのだ。
「そのためひざ裏をストレッチで伸ばすことが、全身の不調の改善につながります。まず下半身のバランスがしっかり取れるようになり、前傾していた骨盤が立ってきます。骨盤が立てば腹筋や背筋に力が入り、姿勢が正されてあらゆる不調が改善される。下半身が安定すると、全身のゆがみも矯正され、前に出てしまっていた首や肩の位置も元に戻ります。すると胸が開くようになり、呼吸もしやすくなるのです」(川村さん・以下同)
川村さんのもとには、ひざ裏を伸ばしたことで頭痛や肩こりなど全身の疾患が改善された例が多数報告されている。
「ある50代の女性は1か月で5kg以上体重が減りました。これは骨盤が立って内臓の動きが活発になり、代謝が上がったことが理由だと考えられます。呼吸がしやすくなれば自律神経も整うため、不眠や更年期の諸症状にも効果がある。腰回りや二の腕、顔のたるみが改善したという声もありました」
ひざが曲がっているかどうかで体の状態は大きく変わるが、ひざの状態はゆっくりと変化するため初期は痛みや違和感を覚えにくく、曲がっていることに気づかない人も多い。そこで川村さんが推奨するのがセルフチェックだ。その方法はいたって簡単。
「背筋を正して両足を伸ばし、床に『長座』のポーズで座ってください。このとき、ひざ裏と床の隙間が2cm未満なら正常ですが、2cm以上ならひざが曲がって硬くなっている証拠。5cm以上開いている人は赤信号です。40代以上の日本人の4割はO脚だといわれていますが、O脚の人はひざが曲がりやすい傾向にあります」
曲がったひざ裏を伸ばすために取り組みたいのが、川村さんが考案した「壁ドンストレッチ」だ。
「まず、背筋をしっかり伸ばして、両足を揃えて壁の前に立ちます。次に脚を前後に開き、後ろ脚のひざ裏を伸ばして、壁に両手をついて息を吸います。手のひらは肩と同じ高さで、肩幅に開いてください。続いて、息を少しずつ吐きながら腕を曲げて壁を押し、最後は息を止めて、そのまま5秒キープしましょう。足裏をかかとまでしっかり床につけたまま、伸びを意識しながら行ってください。ひじを伸ばして壁を押すときに肩甲骨が動くので、肩回りの動きも意識して行うとより効果が得られやすいです」
1日1回でも効果は充分に期待できるという。
「どんな運動やストレッチも、続けなければ意味がありません。三日坊主で終わらせずに、毎日行うことが大事です。壁ドンストレッチは、夜のお風呂上がりに行うと伸びやすい。自律神経が整って寝つきもよくなります。腰痛持ちで朝起きてすぐに動きづらいという人は、筋肉のこわばりをほぐすために朝に行ってもいい。私はヘルニアなので、毎日、朝と夜に行っています」
★ひざ裏を伸ばす「壁ドンストレッチ」
【1】両足を揃えて壁の前に立つ。背筋をしっかり伸ばすことを意識する。
【2】手のひらを肩と同じ高さまで上げ、肩幅に開いて壁につける。脚は前後に開いて前脚を曲げ、後ろ脚のひざ裏を伸ばして大きく息を吸う。
【3】ひざ裏の伸びを意識してかかとで床を押し、息を少しずつ吐きながら腕を曲げて壁を5回押す。
【4】息を止め、両腕を伸ばして壁を押してそのまま5秒間キープする。このとき、かかとが床から浮かないように意識する。【3】~【4】を2回くり返した後、反対側の脚も同様に行う。