在宅介護でぶつかる「認知症の壁」 仕事や家庭を守りながら続けるコツ【専門家解説】
在宅介護を選択した場合、介護しやすい環境を整えたとしてもどうしても避けられないのが認知症だ。親が認知症になった場合の在宅介護はどういった事が考えられるのか、NPO法人「暮らしネット・えん」代表理事の小島美里さんに伺った。認知症介護になってしまった場合のアドバイスも一緒にいただいたのでご紹介する。
約8割が発症!認知症の壁
人生100年時代といわれるが、日本人の平均寿命と健康寿命との間には約10年の差がある。つまり、何かしらの介護が必要な期間が10年あり、親の希望を叶えるためには、長い目で介護を捉え、準備する必要があるということ。加えて、いくら介護サービスをフル活用して基盤を整えても、大きく立ちはだかるのは、“認知症の壁”だ。
介護事業を手がけるNPO法人「暮らしネット・えん」代表理事の小島美里さんが指摘する。
「介護保険サービスを利用する人のうち、約8割が認知症を発症しています。初期は体が元気なので介護度は低く介護サービスを使える量が少ない。近年はふらっと出かけていって、行方不明になる事件も増えています。自宅で介護するなら、親の居場所をGPSで把握して、何かあれば家族総出で探すことになる。
80代、90代の親を介護するときは、自分たちもリタイア世代になっています。仕事や家庭を守りながらの在宅での認知症介護は、家族会などに参加して煮詰まらない工夫も必要です。介護保険だけで足りなければ自費サービスも利用するなど、お金が必要になります」
プロの手を借りて柔軟に軌道修正を
あと半年で終わるか10年続くかわからない―― 先が見えない介護は、精神的にも肉体的にも家族の負担となり、共倒れを招く可能性がある。そこで忘れてはいけないのが、プロの手を借りて体制を築くことだ。
ケアマネジャー歴20年以上の田中克典さんはこう話す
「介護保険や医療保険のサービスを活用して、ホームヘルパーやデイサービスを利用し、在宅医や看護師に来てもらいましょう。最近はLINEグループなどケアチームとオンラインで連絡を取ることができるので、同居していなくても親の状況を見守ることができます。ただし、ケアマネや在宅医に親の希望をしっかり伝え、頻繁にコミュニケーションをとるように心がけましょう」(田中さん)
ひとりで抱え込まない、やめるという選択肢もあり
介護には、家族間の協力も欠かせない。
「一人で背負わずに、家族と助け合うことも大事です。きょうだいがいれば、助けてもらいましょう。特に親と一緒に暮らしていれば、いくら介護サービスを使っていても負担が大きいので、ショートステイなどを使って息抜きをしてください。
在宅介護が無理だと思ったら、いつやめてもかまいません。親の気持ちも確認しつつ在宅医に相談し、施設や病院、ホスピスに入ることも検討しましょう。決して気負いすぎないでください」(田中さん)
教えてくれた人
小島美里さん/NPO法人「暮らしネット・えん」代表理事、田中克典さん/ケアマネジャー
取材・構成/戸田梨恵
※女性セブン2023年4月13日号
https://josei7.com/
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