兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第192回 要介護3で保険料が免除?】
桜の便りが全国から聞こえてくる昨今、若年性認知症の兄とライターの妹が暮らすツガエ家にも春がやってきました。要介護認定の区分変更で、要介護3の判定が出た兄、加入していた終身保険の特約で今後の支払いが免除になるかも…という報せが届いたというのです。
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春に思うこといろいろ
桜の時期になると、母を車イスに乗せて近所のお寺で花見したことや、父の葬儀の日の青空と満開の桜のコントラストを思い出すツガエでございます。今年も律儀に咲いては散っていきますね。
先日、ケアマネさまとの面会があり、兄が要介護3と判定されたのは、「徘徊」が影響しているのではないかとおっしゃっていました。身体的にはほぼ健常者ですし、誤嚥もなく、昼夜逆転もなく、性格的にも穏やかで、排せつ問題も基本的にはトイレでできるのですから、通常ですと判定は要介護2。けれども昨年2回も警察に捜索願を出したということが、重大なこととしてとらえられたようでございます。
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思えば、我が家はマンションの2階ですから出入口は玄関のみですが、もし一軒家だった場合は、出入口が多く、窓からでも出られてしまうのですから昼夜問わずの監視が必要となるわけです。それはさすがに要介護3、否、要介護4でもいいくらいの負担でございましょう。
以前書いたと思いますが、母方の叔母が認知症で数年前から施設で暮らしております。入居前の叔母はよく一人で出かけてしまっていたので、兄妹である叔母や叔父が交代で泊まり込んでおりました。寝る時は手首と手首を紐で結んで、動いたらすぐにわかるようにしていると聞いたこともございます。さすがに長くは続かず、施設入居となりましたが、とても穏やかに暮らしているようでございます。コロナ禍もそろそろ緩和されてきましたので、また叔母の面会に行きたいと思う春でございます。
そんなことより、兄が要介護3になったことで一つ良いことがありました。まだ確定ではないのですが、兄が入っている終身保険の保険料が免除になるかもしれないのです!
それは兄がまだ勤めていて認知症の「に」の字もなかった頃に契約した保険で、保険料は2万5000円余りとかなりお高め。認知症がわかってからですと新たに保険に入るのは難しくなると言われ、ずっと払い続けてまいりました。でも66歳(来年の誕生日)で更新時期が来て保険料が倍増するとわかっていたので、「やめちゃうか」と悩んでいた保険なのでございます。
なんと! 兄は要介護状態(保険会社の規定に基づく)で保険料が免除になる「特約」を付けていたのでございます。おなじ保険に入ってもこの特約を付けているかいないかで天と地の差があると思いませんか?
でかした兄上! しかもタイミングもあっぱれでございます!!
でもきっと兄のアイデアではなく、当時の保険レディさまが優秀だったに違いございません。先見の明があったのか、兄に認知症の匂いを感じ取ったのか。いずれにせよこれが本当なら、一生保険料を払わずして保障内容はそのまま継続できるのでございます。そんなうまい話があるでしょうか?
「お変わりないですか?」と来訪された保険レディさまに「要介護2から要介護3になったのですが、それって保険に何か関係しますか?」と伺ってみたところ、そんなお話になりました。とはいえ保険というのは保険会社が損しないようにできているもので、なんやかんや該当しない方向へ解釈していく傾向がございます。今回の場合
「保険会社の規定に基づく要介護状態」というのが曲者であることは素人目にも明らか。兄がそれに該当するかしないかが見どころでございます。
該当するとなったら、また診断書などの書類を提出することになるでしょう。保険レディさまは「免除になると思います」とおっしゃってくださいましたが、結果は蓋を開けるまでわかりません。
年間30万円! 免除になったら嬉しいではないですか!
どうなることか…続報をお待ちくださいませ。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ