在宅介護の良し悪しはケアマネ次第か 相性のいいケアマネの見つけ方、付き合い方、変更の仕方
介護が始まるとき、その人の要介護度などに応じてケアプランを立てるいわゆる司令塔的役割をするのがケアマネジャー(介護支援専門員、以下ケアマネ)だ。特に在宅の場合、介護がうまくいくかどうかは、ケアマネによるところが大きいという。介護が始まったばかりは、そもそも介護の良し悪しもわからぬ手探り状況のことが多いため、ケアマネの提案に疑問すら感じることもないかもしれない。そこで、ケアマネとは?いいケアマネって?ケアマネとうまく付き合う方法などをご紹介する。
ケアマネジャーとは?
「介護を受ける本人も、その家族も、最初はどんな介護サービスや行政サービス、地域ボランティアがあるか知らないのが当たり前です。そこで登場するのがケアマネジャーです。介護のプロである彼らは、介護計画を設計し、同時にそれがしっかり機能しているかをチェックする。適切なケアマネ選びができないと、要介護者のためにも家族のためにもならない。介護の“良し悪し”を左右する鍵は、ケアマネが握っています」
と話すのは介護評論家の佐藤恒伯さんだ。
ケアマネジャーは「介護支援専門員」とも呼ばれ、介護保険法に規定された専門職だ。主な仕事は利用者の介護サービス全体のマネジメント。よくヘルパーなどと混同されるが、厳密には、直接介助や治療を行なう存在ではない。
ケアマネになるためには、看護師や介護福祉士、社会福祉士、歯科衛生士、栄養士などの国家資格者であるか、介護施設で相談業務に従事した経験が必要だ。保持資格や前歴によって、ケアマネの「得意分野」は異なる。
→ケアマネジャー(ケアマネ)とは?インスタで人気の社会福祉士がスライドでわかりやすく解説
ケアマネ決定から介護が始まるまでの流れ
要介護認定を受けたのち、地域包括支援センターや、市区町村の窓口でケアマネが所属する「居宅介護支援事業所」のリストを入手する。選んだ事業所に連絡し、その事業所に在籍するケアマネの人数や基礎資格などを確認する。ケアマネの受け入れ人数には上限があるため、受け入れ不可の場合がある場合があるので注意しよう。
決定したケアマネが、要介護者の家を訪問。このとき、家族も同席し、雰囲気や話しやすさや相性などを確認するといいだろう。
訪問したケアマネは、要介護者本人や家族の状況をしっかり把握しケアプランを作成する。ケアプランに基づき、訪問介護(ヘルパー)、通所介護(デイサービス)などを提供するそれぞれの事業所、施設と契約、介護がスタートする。
介護が開始した後、月1回ケアマネは要介護者の家を訪問、悩みや状況などを確認、ケアプランの見直しが行われる。
つまり、ケアマネが作成したケアプランが、要介護者本人、家族にとって適切であるかどうかで、介護の成否は大きく変わるのだ。
ケアマネの役割とは?
・ケアプラン(介護計画書)の作成
・要介護者、家族の不安・問題点の抽出
・利用者への適切なサービス事業者の紹介
・訪問介護、通所介護利用の調整
・介護給付費の管理
・配食サービスや安否確認サービスといった介護保険外サービスの案内
「看護師などの医療系の資格を持っていれば、病気や医療の知識が豊富で、親に持病があったり、過去に大病をしたことがあるといった場合には、医療的な視点のアドバイスをもらえる。介護福祉士などの資格保持者は、実務的な介護の方法などを熟知しているため日常生活で必要な支援が適切に介護計画に反映される」(ケアタウン総合研究所代表・高室成幸氏)
介護される人の状態や家族の状況に合わせて、ケアマネ選びを行なうことが肝要だが、地域包括支援センターや各自治体の窓口でもらえる一覧表にはケアマネの個人名や保持資格までは記載されていない。そのため比較的規模の大きい病院にいる医療ソーシャルワーカーや、介護職員、介護サービスの利用者の口コミの評判が参考になる。
ケアマネとの相性がよくない場合
相性のいいケアマネを選択できれば、親の状態に合ったベストなケアプランが組め、家族もストレスを感じずに済む。プロの観点から、要介護者本人や家族も気付いていなかった新たな問題が見つかることも多いという。
一方で、ケアマネとの波長が合わないと、親の状態が悪化したり、家族にも大きなストレスが生じてしまう。
実際に介護を行なっていく上で、親や家族とケアマネジャーの相性が合わない事態も考えられる。
そうした場合、ケアマネジャーの変更も可能だ。本人に直接言うことはできない場合は、所属する支援事業所に変更を申し出る。それも難しい場合は、自治体の窓口や支援センターに相談することができる、
ケアマネジャーを変更したことで利用者側に不利益が生じることはない。病気や障害の進行によってケアマネジャーを変更することは珍しいことではないし、相性などの問題でケアマネジャーを変更しても、ケアプランはそのまま引き継ぐこともできるという。
→「ケアマネを変更したい!」3つの対応方法やデメリットを社会福祉士・ライトさんが解説
こんなケアマネに要注意 NGポイント【まとめ】
ケアマネ歴10年以上のベテランケアマネは、以下のようなケアマネには要注意だという。
●家族の話をじっくり聞かない
●提案が1パターンしかない
●「家族の支援はケアマネの仕事ではない」と考えている人
●自分の事業所のサービスを押しつけてくる
●利用者の一面だけを見て一辺倒なケアプランを組み立てる人
●「ケアマネは変えられる」という説明をしない人
ケアマネとの付き合い方
ケアマネに要介護者や家族の思いをうまく伝えることも、介護の成否に大きくかかわる。
また、ケアマネとヘルパーの違いを理解せず、本来介護そのものを担わないケアマネに買い物や掃除などを依頼する家族も少なからずいるという。
介護は長丁場になることが多い。要介護者本人と家族の目指すこと、希望することをはっきりと伝え、それが、ケアマネ自身ににやってもらえることなのかなどは、あらかじめ確認し、お互いに納得した上で介護を続けていくことが肝要ということだろう。
教えてくれた人
佐藤恒伯さん/介護評論家、高室成幸さん/ケアタウン総合研究所代表
初出:週刊ポスト、女性セブン
構成/介護ポストセブン編集部