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吉高由里子×北村匠海『星降る夜に』は「命の始まりの産婦人科医と、命の終わりの遺品整理士が出会っちゃった」ドラマ

吉高由里子演じる産婦人科医と北村匠海演じる遺品整理士のラブストーリー『星降る夜に』(テレビ朝日系 火曜よる9時〜)が話題です。脚本は来年のNHK大河ドラマ『光る君へ』(吉高由里子主演)を手掛けることでも話題のベテラン・大石静。『鎌倉殿の13人』の全話レビューを担当したライター・近藤正高さんが3話までのストーリーを振り返って、考察します。

産婦人科医と遺品整理士

 テレビ朝日系で1月から放送中の『星降る夜に』(火曜よる9時)は、吉高由里子演じる産婦人科医と、北村匠海演じる“音のない世界に生きる”遺品整理士によるラブストーリーだ。

 2人の出会いはタイトルどおり、星の降るような夜だった。初回、寒空のもとソロキャンプをしていた雪宮鈴(吉高)が、見知らぬ青年(北村)にいきなりカメラで写真を撮られ、最初こそ抵抗するも、彼の人懐っこさにしだいに引き込まれていく。鈴の心をつかんだ青年はまんまと彼女の唇を奪う。

 もっとも、このとき2人は一夜をともにしたものの、結局それ以上の関係には進まなかった。そのことは翌朝、青年が鈴に向かって不機嫌そうな表情を見せながら手話で何かを伝えたことから、あきらかになる。帰宅した鈴は、その手話の意味を調べて、自分が彼のマフラーに吐いてしまったせいで怒らせてしまったのだと気づいた。

 このあと、鈴は亡くなった母の遺品を持って現れたその青年、柊一星と思いがけず再会を果たす。出会いはうまくいかなかったが、再会してからというもの、鈴と一星は互いに気になる存在となる。とくに一星は彼女との距離を縮めるべく、ガンガン迫っていく。先週(1月31日)放送の第3話の冒頭では、改めて好きだと伝えキスをねだってくる彼に、鈴が「ステイ」とまるで飼い犬に命じるように制止をうながすシーンもあった。

 一星は鈴との関係に限らず、思ったら即行動を起こして突っ走るタイプだ。そもそも遺品整理士になったのも、事故で亡くした両親の遺品を整理してもらい感銘を受けたのをきっかけに(例のカメラはこのとき渡された父の形見だった)、自らその会社に乗り込み社員にしてほしいと直談判してのことだった。

 ただ、それで失敗することもある。第3話では、若くして亡くなった男性が交際していた女性に渡せなかった手紙と婚約指輪を見つけ、それを相手に届けようと、卒業アルバムの写真を手がかりに探し当てる。だが、その女性には、昔の不倫相手の手紙を届けられても困ると、受け取りを拒否されてしまった。故人に代わってその思いを伝えようとした一星の思いはわからなくはないが、人によってはその親切が迷惑になる場合があるのは当然だ。

 思いと行動が直結した一星の性格は動物的ともいえる。思えば、こうした役は、少し前だったら、ほかならぬ吉高由里子が演じていたところだろう。それが今回、吉高がどちらかといえば抑えた演技で、大人の女性を演じているのが興味深い。

 一星は音のない世界を生き、自分の口から話すこともできないが、それでも手話に加え、スマホの音声文字変換アプリやLINEなどを使い、しっかりと意志を伝え、饒舌ともいえるほど会話することができる。このあたりはいまという時代ならではだ。

 鈴も一星との関係が深まるにしたがい手話教室に通い出すとはいえ、それはコミュニケーション上の壁を乗り越えるためというよりは、もっと彼を理解したいとの気持ちが先に立っているはずだ。言わば、気になる相手にさらに近づくべく、趣味やSNSなどのツールを共有するのと同等の乗りだろう。むしろ、鈴が一星と付き合ううえで壁と感じているのは、10歳下という年齢差だ。先述の「ステイ」と言ってキスをお預けにしたのも、それを気にしてのことであった。

ドジなディーン・フジオカ

 そんな2人の周りには個性的な人たちが集まっている。一星には、年上ながら会社では後輩にあたる佐藤春(千葉雄大)という親友がおり、手話ができることから一星の通訳の役目も果たしている。さらに彼らの勤務する遺品整理の会社「ポラリス」の社長・北斗千明(水野美紀)は、入社を希望してきた一星の意欲を買ってその場で採用を決めるなど、懐が広くて頼りになる存在だ。

 一方、鈴の勤務する「マロニエ産婦人科医院」にも、陽気な院長の麻呂川三平(光石研)と、犬山鶴子(猫背椿)・蜂須賀志信(長井短)・伊達麻里奈(中村里帆)の3人の看護師に加え、最近になって佐々木深夜(ディーン・フジオカ)という新米医師も入ってきた。佐々木は尿コップをひっくり返すなどドジもたびたびしでかし、演じるディーン・フジオカにとってはこれまでのイメージを覆すような役どころだ。

 佐々木は、かつては公務員だったのがある出来事をきっかけに医学部に入り、45歳にして医師になったという異色の経歴の持ち主であり、じつは鈴とも過去に思いがけずかかわっていた。そのことは第3話で、佐々木が鈴と2人きりになったタイミングで、本人の口からあきらかにされた。

 佐々木は10年前、出産直前だった妻をお腹の子供とともに亡くすという経験をしていた。あまりの出来事に佐々木自身は涙も出なかったが、病院から妻の遺体を乗せた車を見送る医師たちのなかにひとり、ボロボロ泣いてくれた若い女性の研修医がいた。何と、それが鈴だったというのだ。佐々木はこの事実を初めて彼女に語ると、「いい先生だなと思いました。だから僕も雪宮先生みたいなお医者さんになりたいんです」と打ち明けた。

 いい話なのだが、ここでひとつ疑問が湧く。それは、その後研修医から医師となった鈴が紆余曲折を経て、ひなびた町の産院に勤めていることを佐々木はどうやって突き止めたのか、ということだ。そういえば第2話で、千明がじつは佐々木の妻の親友で、彼女の死後も何かにつけて佐々木を気にかけていることがほのめかされていたから、鈴の再就職先を見つけたのも案外そのツテによるものだったのかもしれない。

 なお、鈴は現在の産院以前に勤務していた大学病院で、医療事故をめぐり訴訟を起こされていた。病院内でも事故の責任をすべて負わされ、どうもそれをきっかけに大学病院を辞めたらしい。これについてはきっと今後くわしく描かれるのではないか。

 話を戻すと、佐々木が鈴と2人きりになったのは、院長の麻呂川に釣りに誘われ、釣った魚を一緒に食べようかというところで麻呂川がその日が結婚記念日だと気づき、途中で帰ってしまったからだった。そのため鈴は佐々木のアパートでごちそうになり、その夜、途中まで送ってもらうことになる。

 だが、その様子を偶然、一星が目撃してしまう。ショックを受けた彼は翌日、仕事を休む。それでも鈴が一星の自宅へ見舞いに行き、一晩一緒にすごすうち仲を取り戻した。翌朝、海岸沿いを2人で歩きながら、彼女はふいに自分の過去を思い出して落ち込んだところを、一星に励まされ、その真っすぐさに改めて心を動かされる。一星もまた、彼女に顔を近づけ、キスするかと思わせながら、すぐに止め、「鈴がホントに俺を好きだと思うまでキスはステイします」と伝えるのだった。これに対し鈴は、彼の唇ではなく額にキスしてみせる。

 まだ本格的な恋にこそ発展はしていないものの、鈴と一星は確実に心を通わせつつある。そんな2人が一緒にいるところを遠目に見ながら、いかにも恨みがましく拳を固く握りしめる怪しい人物がいた。果たしてその正体は……? 筆者は一瞬、佐々木ではないかと疑ったのだが、エンドロールでの出演者のクレジットのなかに、ひとり墨で塗りつぶされたような名前があったのを見ると、どうもそのキャストが演じる別の人物の可能性が高い。もしかすると、鈴の裁判に関与した人物なのかもしれない。

人間の一生をまるごと

 このドラマの脚本は、40年近いキャリアのなかで多くのヒットドラマを送り出してきた大石静である。主演の吉高由里子とのコンビは、2020年放送の『知らなくていいコト』(日本テレビ系)以来で、来年のNHK大河ドラマ『光る君へ』でも組むことが決まっている。

 ろう者が登場するドラマとしては、昨年には川口春奈・目黒蓮主演の『silent』(フジテレビ系)が大きく注目されたほか、吉岡里帆・笑福亭鶴瓶主演の『しずかちゃんとパパ』(NHK BSプレミアム)も記憶に新しい。そのなかで本作は、ろう者の青年を遺品整理士、その相手役を産婦人科医としたところに新味を感じる。第1話で千明が「命の始まりの産婦人科医と、命の終わりの遺品整理士が出会っちゃったんじゃないかな」と言っていたように、この組み合わせはまさに絶妙だ。大石静はこの設定によって、人間の一生をまるごと描こうとしているのではないかとさえ思わせる。このドラマのなかでは、佐々木がひっくり返した尿コップをはじめ、不浄なものもたびたびネタとして出てくるが、大石はそれらをひっくるめて人間なのだと言わんばかりで、ベテランの余裕を感じる。

 今夜放送の第4話では、佐藤春の過去が描かれるようだ。春については、脱サラして遺品整理士になる経緯、また、手話をいつ習得したのかなどまだ謎の部分もあるだけに、どこまで明らかになるのか気になるところである。

文/近藤正高 (こんどう・ まさたか)

ライター。1976年生まれ。ドラマを見ながら物語の背景などを深読みするのが大好き。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけしと北野武』(いずれも講談社現代新書)などがある

 

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