フジテレビ新お昼の生番組『ぽかぽか』は若干のヤケクソ感があるものの、令和の『いいとも』に化ける可能性も
新年から始まったばかりのフジテレビお昼の番組『ぽかぽか』(月~金11時45分から)の見どころを、漫画家でテレビウォッチャーの北村ヂンさんが紹介します。
開始早々、心配
フジテレビお昼の生ワイド番組『ぽかぽか』がスタートした。
1月という、バラエティー番組があまり改編されない時期のスタートということで、どうしても裏事情を深読みしてしまうところだが……。おそらく前番組『ポップUP!』がにっちもさっちも行かなくなって、急遽、改編が決まったのだろう。
それだけに、コーナーなどのルール設定が全体的に甘く、若干のヤケクソ感も漂っている『ぽかぽか』。開始早々、心配な感じではあるものの、逆に、この時期ならではの妙なライブ感や面白みもあって、今こそ見ておくべき番組なのだ!?
目玉コーナー「ぽいぽいトーク」
メインMCはハライチの二人と神田愛花。そこに曜日レギュラーが加わり、特設スタジオに観客を入れての生放送という、なんとなーく『笑っていいとも!』思わせる構成となっている。
毎日行われるメインコーナーは「ぽいぽいトーク」「ライオンちゃんと行く!肉食さんぽ」「日本中に知って欲しい!FNSおすすめジモTV」。日替わりのトークゲストを迎える「ぽいぽいトーク」は、要は『いいとも』における「テレフォンショッキング」みたいなもので、番組の目玉コーナーと言えるもの。
さすがに気合を入れてキャスティングしていると見えて、1月16日までのゲストは北川景子&山田裕貴、マツコ・デラックス、岸谷五朗、菜々緖&鈴木伸之、竹野内豊&黒木華、草なぎ剛と、豪華な顔ぶれだ。
ただ、大半は新ドラマや映画、舞台の告知でやって来ていたため、改編期をすぎて以降、どのレベルのゲストをそろえられるのか未知数だが……。
このコーナー、特筆すべきはコーナー時間の長さ。番組自体、3時間の生放送という長〜い番組だが、「ぽいぽいトーク」はそのうち30~50分近く(ゲストのスケジュール次第なのか、まちまち)を占めている。
これを完全フリートークでやろうとするとタモリ並みのトーク力、アドリブ力が求められるが、「ぽいぽいトーク」では、あるテーマを設定することでうまく乗り切っている。
それが「このゲストは○○っぽく見える」という“勝手なイメージ”。
進行は澤部が務めつつ、岩井と神田がフリップでゲストの勝手なイメージを披露し(視聴者や前日ゲストからのイメージも)、マル・バツ・三角で答えて話題を広げて行くという構成。
「勝手なイメージ」とあらかじめ言っちゃっているので、質問項目は何でもアリ状態で、岩井に関しては完全に大喜利感覚でフリップを書いている。
「スタッフには感じよくするがマンションの住人とすれ違った時めちゃくちゃ冷たい」(菜々緖へ)
「愛車を“俺の女”と言ってるっぽい」(岸谷五朗へ)
「娘がチャラついた彼氏を連れてきたら『そのピアスかっこいいねー』と笑顔で圧をかけているっぽい」(岸谷五朗へ)
一方、神田も、
「リビングのじゅうたんの毛足ながいっぽい」(マツコ・デラックスへ)
「本当はおヒゲそりたいと思っているっぽい」(竹野内豊へ)
といった天然っぷりを発揮した“勝手なイメージ”を披露して、意外な答えを引き出している。
ちなみに菜々緖へぶつけた「スタッフには感じよくするがマンションの住人とすれ違った時めちゃくちゃ冷たい」に対する答えは○。ここに住んでいると絶対にバレたくないから、声色を使ってあいさつをしているんだとか。
普通のフリートークの流れでは絶対に聞けない失礼な話題も、大喜利ネタ感覚でぶつけることができるこのコーナー。生放送ということもあり、今後、とんでもない発言が飛び出すのではないかと期待している。
生肉を切る企画
この「○○っぽい」トークだけでも十分に面白いのだが、なぜかゲストコーナーでは毎回、生肉を切る企画が行われている。
都内各所の焼き肉屋から提供された肉の塊2kgから、設定したグラム数の肉を切り出すゲーム(?)で、ぴったりで切り出せたら2kgまるごと、プラスマイナス10g以内だったら、切り出した分のお肉を持ち帰れるというもの。
見るからに高級そうな肉なので、食べてみたいとは思うものの、仕事帰りにいきなり2kgの生肉を持たされても困るだろう……。北川景子が包丁を持って、巨大な肉塊を切っている光景は相当にシュールだった。
ローカル番組をそのまま放送
低予算で、しかも3時間という枠を埋めなければならないという事情からひねり出されたと思われるコーナーが「日本中に知って欲しい!FNSおすすめジモTV」。FNS系列局が独自で制作しているローカル番組を約1時間×1週間にわたってまるっと放送してしまう大胆なコーナーだ。
初週はサガテレビ制作の『どぶろっくの一物』、2週目はテレビ西日本制作の『ゴリパラ見聞録』。
うわさは聞いたことがあるものの、首都圏ではなかなか見る機会のないローカル番組。特番などでチョロッとダイジェストが放送されることはあっても、本編を丸々、しかも5回分(30分番組である『ゴリパラ見聞録』は10回分だった)放送される機会は貴重!
ローカル番組は、これを足がかりに全国進出できるかもしれないし、フジテレビとしても、予算をかけずに1時間(しかも評判の)番組を放送できるWin-Winなコーナー。これはうまいこと考えたなー。
当然、選ばれるのは昼時間帯の番組に限らないため、お昼に放送するのははばかられるような、深夜ノリのローカル番組が何かの弾みで登場しないか、こちらも楽しみなのだ。
さらにカオス
曜日変わり&不定期コーナーはさらにカオスだ。
ラッパーがお母さんにラップで感謝を伝える「お母さんありがとうラップバトル」。心理的にプレッシャーをかけられた状態でゲームにチャレンジして、勝利することができたら家族が欲しいものをもらえる『しあわせ家族計画』っぽい「心臓バクバク!ファミリープレッシャー」。顔写真を送れば、出演者たちが「この有名人に似てる!」とむりやり考えてくれる「この人が似ている有名人、みんなで見つけてあげよう会」。とにかく暇な人が、「鉛筆&消しゴムを使い切る」などの、暇力のみで解決できるチャレンジをする「暇すぎて○○しちゃいました!暇王」。
「暇王」コーナーには、一般人や売れていない芸人に交じって、前番組『ポップUP!』のMCだった山崎夕貴アナが「暇になっちゃったんで」と登場。「ウチらも明日はわが身なんでいじりづらい……」と変な空気になっていた。
自慢になるかも!?
急遽はじまった上に、3時間もあるため、ひとつひとつのコーナーの練り込みが甘い『ぽかぽか』だが、スキがあるからこそ、普通の番組では見られない、ドキドキしてしまうようなプチ放送事故がしばしば飛び出している。
番組時間の長さは番組内でも「長い!」「まだやってんのかよ!」と頻繁にネタにされているが、なんと4月からは2時間に短縮されることが既に決まっている。おそらく2時間が本来の長さなのだろうが、もう一つの番組の準備が間に合わなかったんじゃないかと……。そういう意味では、真価が問われるのは2時間体制になってからだ。
『ぽかぽか』が何かの弾みで『いいとも』級の長寿番組となったとしたら、「3時間だった頃の『ぽかぽか』」という幻の時代を目撃したことは自慢になるはず!番組自体、幻になってしまう可能性もあるけど……。
文とイラスト/北村ヂン
1975年群馬県生まれ。各種おもしろ記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。……といいつつ最近は漫画ばかり描いています。