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マスク生活で声が出にくくなる人が急増 話す力を鍛える顔エクササイズ【言語聴覚士監修】

 コロナ禍による「外出自粛」の風潮も和らぎ、人と会う機会が増えてきたのでは? そんななか、「声や言葉が出にくい」といった“異変”に気づく人が増えているという。これって、自粛で人と話す機会が減り、“話す力”が落ちたせいかも。会話にも訓練が必要。そこで、話し方のスキルを短期間で上げる秘訣を紹介します。

能力が退化する「廃用症候群」

 コロナ禍の外出自粛で人と話す機会が減り、そのせいで会話がしづらくなったと訴える人が増えているという。

「私の言語機能向上プログラムを受ける人も増えました」と、言語聴覚士・西村紀子さんは言う。

「会話は脳をはじめ、顔・舌・声帯・腹筋などを連動させて行う人間だけができる高等スキルです。向上させるには訓練が必要で、使い続けていなければ、すぐに衰えてしまいます」(西村さん・以下同)

 わずか数日の入院でも、筋力が衰え、体を動かしづらくなるように、脳にせよ会話力にせよ、あらゆる能力は使わないと退化する。これを医学用語で「廃用(はいよう)症候群」という。

「長い間会話をしていないと、口腔内の筋肉を動かしづらくなり、舌がもつれて言葉が不明瞭になります。また、声帯も衰えて声が低くなり、やがてかすれて小さくなってしまいます」

マスク生活で表情筋や会話機能の衰えも

 さらに長引くマスク生活の影響で、表情筋が衰え、はっきりとした発声ができなくなった人も増えているという。

「コロナ禍で定着したオンラインでのコミュニケーションも弊害に。イヤホンを付けて話すことが多いと思いますが、最近のマイクは性能がよく、小声でしゃべっても声を拾って、相手にはっきりと伝えてくれます。これに慣れると、人と会い自分の声で話したとき、相手に聞こえる声で話せなくなってしまうのです」

 人と対面しての会話が減ると、体の機能だけではなく、会話能力も衰えるという。

「会話には、考えや思いを表現する力(語彙力)、会話の流れを把握する力(記憶力)、相手との関係性や反応を考えながら言葉を選ぶ力(推測力)などが必要です」

 相手の話を受け取ったら、情報や思いなどを瞬時にまとめ、言葉を選び、適切な表現で相手に投げ返す。こういった会話のキャッチボールができなくなったら、会話能力が落ちているといえる。

人との楽しい会話は幸せホルモンを分泌させる

「これまで何気なくしていた“雑談”。実はこれが、日常的に会話力を鍛えるエクササイズになっていたんです」

 と言うのは、精神科医の樺沢紫苑さんだ。雑談には内容がないと思われがちだが、実は私たちに多くの情報を与えてくれていたのだという。

「会話をしているとき、私たちは話の内容だけでなく、相手の表情や体の動きも見ていて、そこから、その人の本当の考えや次の話の内容などを予測し、会話に生かしています。これを、『非言語的コミュニケーション』といいます。

 ところが、コロナ禍で人に会わない、会ってもマスクをしているため表情が読み取れないとなると、相手の思考が読み取りづらくなります。そうなると、会話を続けるのが難しく感じられ、次第に面倒になってしまいます。それで、ますます会話をしなくなるという悪循環に陥ってしまうのです」(樺沢さん)

 会話をしなくなると、気持ちが落ち込み、イライラしやすくもなるという。

「人と楽しく会話をしていると、脳内ホルモンのオキシトシンが分泌されます。これは、愛情ホルモン、幸せホルモンなどと呼ばれ、ストレスを解消して気持ちを穏やかにし、記憶力や免疫力を高めてくれます。会話をしなくなるとオキシトシンの分泌も減りますから、心身にさまざまな影響を及ぼすようになるのです」(樺沢さん)

顔トレとSNS発信からトライ!

 会話の機会が減ると、会話自体が下手になるだけでなく、さまざまな影響が体に出ることはわかった。では具体的にどのように鍛えればいいのか。

「顔のエクササイズなどを活用し、顔の筋力を鍛えることはもちろん、オンラインではなく対面の環境下で人と会話する機会を増やしましょう。その際、相手に聞こえる大きさの声で、滑舌よく話すよう意識すること。そして相手の様子をよく見ることが大切です」(西村さん)

 人に会えないときは、SNSの発信も有効だという。

「たとえばツイッターで1日1回つぶやくと、声に出して話さなくても、会話能力が上がります。ツイッターでは、140字という短文に意見をまとめて発信します。自分の発信に対してコメントがつけば、相手のことを想像しつつ返信します。これは脳卒中で言語障害が出た人にもすすめており、脳の活性化に効果的です」(西村さん)

話し方上手になる顔エクササイズ5

 話し方上手になる顔エクササイズを、言語聴覚士・西村さんが伝授!

「表情筋が衰えると、口を大きく開けづらくなり、声が小さくなったり、滑舌が悪くなったりします。それだけでなくしわやたるみの原因にもなります」(西村さん)

 次の5つのエクササイズを各10秒×5セット、毎日続けると、口の回りづらさが改善するという。マスクをしていてもできるので、ぜひ挑戦を。

【1】唇を前に出してとがらせる

【2】上下の歯を見せて「イー」

【3】上の歯だけを見せて「イー」

【4】口を閉じつつ頰を膨らませる

【5】頰を内側に吸ってへこませる

【5】頰を内側に吸ってへこませる

教えてくれた人

西村紀子さん/言語聴覚士 

病院などで20年以上、リハビリ指導を行う。オンラインの言語リハビリ『ことばの天使』(30分2200円~)も運営。

樺沢紫苑さん/精神科医

札幌医科大学医学部卒。SNSのフォロワー約70万人に精神医学をわかりやすく伝える。著書は『極(エッセンシャル)アウトプット 「伝える力」で人生が決まる』(小学館)ほか40冊。

取材・文/前川亜紀 漫画・イラスト/なとみみわ

※女性セブン2022年6月30日号
https://josei7.com/

●人に好かれる会話術|不快表現を言い換えて好感度アップする実例12

●老後ストレスのない人間関係の築き方「夫婦の会話は“盛る”」「気の進まない誘いは断る」

●マスク老け撃退!顔の筋肉を鍛える「ほうれい線アイロン」ほか4ステップ【医師監修】

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