「故人を偲ぶ夏、通夜の話」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第79話
山口県に暮らす漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさん。慢性膵炎を抱える母(80代)のために膵臓を労る脂質低めの食生活に工夫を凝らす日々。そんな中、母娘の親しい人が旅立ち、通夜に参列したときのこと。亡き父、そして祖父の通夜を振り返り、感じたこととは。
母娘で親しい女性を偲んで…
先日、とても親しくさせていただいていたかたが亡くなられ、母とふたりで「お斎(おとき)」につかせていただきました。
「お斎とは」で調べると、地域によって色々違うみたいです。私の住んでいる地方では、お通夜の際に食べる食事を「通夜振る舞い」、葬儀の前に食べる食事を「お斎」、火葬の後に食べる食事を「精進あげ*」といって、亡くなったかたのご家族や親族の皆さんと一緒に食事をします。お通夜から全部で3回、皆で食事をすることになります。
*「精進落とし」が一般的な呼び名のようですが、私の周りでは「精進あげ」と言う人が多いです。
亡くなられたかたは、母と同じ83才の女性で、今から2か月ほど前に胃にがんが見つかり、手術は受けずに病院で養生され、体調が良くなってきたので施設に移りましょうかという話が出たタイミングで容態が悪化、でも最後は穏やかに眠るように逝かれたと聞きました。
とても明るくてエネルギッシュなかたで、娘さんも「やりたい事は全部やって逝きました」と、泣き笑いしながら参列者の皆さんに話しておられました。お斎の席でも皆さんがそれぞれに彼女の良い思い出、楽しい思い出を語り合い、時にはどっと笑いがおこる、とても良いお別れの時間で、母とふたり「こういう風に逝けたらいいねえ」と帰りながらしみじみ話しました。
父親の通夜を振り返ると…
父が亡くなった時は色々と辛くて、心の余裕は全くありませんでした。でも通夜にかけつけてくれた親族、父の友人、ご近所の皆さんや私の友達などが声をかけ、支えてくれてなんとか無事に葬儀を終わらせることができました。その後の初盆や命日、三回忌、七回忌、十三回忌と繰り返していく法要の中で、徐々に気持ちを整理していった感じです。
その中で父の思い出を語り、聞く機会が一番多いのはやはり食事の時でした。法要での食事にはそういう役割もあるんだろうなと思います。
母のお友達やご近所のかたも、一人また一人と旅立たれるかたが増えてきました。母はまだ「終活」の「し」の字もやっていませんが、「自分が死んだら葬儀はここで」と祖母の時にお世話になった葬儀屋さんの会員になっていて、とりあえず場所だけは決まっている状態です。
「親が死んだ時のことを考えるなんて縁起でもない」とか言っていられない年齢になってきたなあと思います。
最近は「法要」のしきたりが面倒だからなのか、お坊さんを呼ばず、亡くなったら火葬場に直行してお骨を受け取るだけの「直葬」を選ぶ人が増えていると聞きました。
そういえば知り合いの若い男の子が「自分のおじいちゃんが亡くなったんだけど、お坊さん呼ばなかったです」と言っているのを聞いて、「はあああああ~~~~~~~!?」って絶叫したのですが、今年に入ってからちょくちょく聞くようになったので、主流になりつつあるのかもしれません。
知人が亡くなって進物用のお線香を買いに行ったら、でかでかと「墓じまい」の垂れ幕が店内にあったり、お仏壇も超コンパクトなものがズラッと並んでいたりして、世の中の「常識」がどんどん変わってきていることを感じています。
「確かに」と思うところもあります。私も独り身なので、自分が死んだ後は散骨してスパっと終わらせて~、と思っていたりします(うちは墓じゃなく納骨堂なのでそこに収納されると思いますが)。
ただ、母は違います。母にとって「葬儀」とは今回のような形式で、自分もそうやって見送られると信じている…というかそうじゃないとめちゃくちゃ悲しむと思うんですね。
祖父の通夜で見たものは?
祖父の通夜では不思議なことがありました。
もう30年以上前のこと、同居していた祖父が亡くなった時、我が家でお通夜をしました。大阪に住んでいる叔母一家はじめ、祖父母の親族が集まってわぁわぁしていた時、ふと玄関の方を見たら、入口にかけてある大きな白い提灯(忌中と書いてあるアレ)の陰から、祖父がこっちを覗いていたんです。普通に。ひょこっと。元気な時の姿で…。
「え!?」と思った瞬間に消えてしまって「気のせいよね」と思っていたのですが、何年かして何気に弟にその話をしたら「俺も見た」と言うんですよ。
私、そっち系の専門家ではないですが、あれは本人だったと思うんです。あちらには行ったことがないのでわからないですが、亡くなった人も「希望者は見学可」とかそういう「あの世システム」があるんじゃないかと思ってます。母も絶対見学申請出すと思うんですね。
だから母の時は、本人が見てもしっかり満足してくれるようなコッテコテの葬儀をして、お斎の席で母の思い出話をいっぱいして、いっぱい笑って送ってやりたいと思っています。
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ところで、今回でこの連載も無事3周年を迎えることができました。これも全ていつも読んでくださる読者の皆さまのおかげです。本当に、本当にありがとうございます。葬儀の話まではまだまだ時間がかかると思いますが(そうであって欲しい…)、どうぞこれからも天然母と短気な娘のドタバタによろしくお付き合いくださいませ。
NOオイルMemo うちの地方の「お斎」
お通夜では握り寿司や海苔巻き、いなりなど、「おとき」は軽い食事(精進料理)。「精進揚げ」にはお刺身や肉料理が付く、というのが一般的だと思います(うえだのぶ個人調べ)。
95才で亡くなった祖母の通夜では、久しぶりに集まったいとこ達と夜じゅう飲んで笑って大宴会になったことは、いい思い出です。母の時もこういうのがいいなあ。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。59才。山口県で83才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
『読者体験!リアル迷惑人間大集合1 』Kindle版が発売中。
