孫が見た《老々介護》病院も入浴も拒否し続けた爺ちゃん、入院生活でまさかの食事も拒否「この先どうなる?」
65才以上同士の介護を「老々介護」、75才以上同士だと「超老々介護」とも呼ばれ、ともに増加の一途をたどっている。ヤングケアラーとして母のケアを続けてきたたろべえさんこと高橋唯さんの祖父母も老々介護に直面。病院嫌いの祖父の入院生活がスタートし、老々介護を巡る困った問題が次々と――。
執筆/たろべえ(高橋唯)さん
「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/
老々介護の末「祖父の入院生活がスタート」
父方の祖父母の「老々介護」が始まって半年が過ぎた。90代・要介護2の祖父を80代の祖母がサポートしているのだが、病院嫌いの祖父の容体が悪化。大暴れする祖父をなんとか病院へ連れて行ったところ、大腸がんのようなものがあって全身状態が悪く、腎盂腎炎(いわゆる膀胱炎が悪化したような感染症)を発症していることがわかり、入院することになった。病室でも「帰りたい」を繰り返し、祖母を困らせていた。
→前回の記事「孫が見た《老々介護》「緊急入院したじいちゃんは反応がない…しかし病室に入ると急にしゃべり始めた」祖父渾身の言葉」
祖父を見舞う祖母の行動も心配に…
祖母はこれまで、ひとりで祖父を支えてきた。祖父が入院したことで、祖母もひと休みできるはず。筆者としてはそう思って安心していたのだが、どうやら祖母は違ったらしい。
祖母は家から病院まで7kmちょっとの道のりを、自転車に乗ってお見舞いに通うようになったのだ。
祖母は「じいちゃんに好きなものを食べさせてやらないと可哀想」とのことで、病院食を食べたがらない祖父の元へ通って、祖父が好きな玉子豆腐を食べさせたり、持参した飲み物を飲ませたりしていた(もちろん、病院の許可をもらった上で)。
筆者としては、祖母が車通りのある道を自転車に乗って移動するのはいささか心配だ。過去には自転車を降りるタイミングで転んだり、足の付き方を失敗して痛めたりということもあったので、「無理せず、タクシーを使って」と伝えてみたが、祖母としてはまったく無理しているつもりはないので、そのまま自転車に乗り続けていた。
経済的な負担が気になるということなら、高齢者のタクシー券やコミュニティバスが使えないかと調べてみたが、祖母の住む自治体ではそういったサービスはなかった。祖母を病院に連れて行ってあげればよかったのかもしれないが、正直なところ、筆者も父も時間をつくる余裕がなかった。
祖母は多少の危険を冒しても「祖父をケアしたい」という気持ちがあったと思うが、それを支えることができるかどうかは家族次第なのだなと思った。そして、病院食を拒否する祖父に「好きなものを食べてもらいたい」という思いを叶えてあげられるかどうかも、また家族次第なのだなと思った。
祖父の治療が終了「いつまで病院にいられる?」
祖父が入院して1週間ほど経った頃、病院から連絡があった。入院したときに罹っていた腎盂腎炎の治療が終了したという報告だった。
治療が終了したら、祖父はどうなるのだろう?入院時から、腎盂腎炎の他に大腸がんのような影が見えるが、それは治療できないと言われていたので、なんの病気の治療もしていないのなら、病院に居続けることはできないのではないだろうか。それならば、次に入れる施設を探した方がいいのか?どうやって?いつまでに?
祖父が入院して、やっと祖母がひとりでケアを続けなくてよくなって一安心したのも束の間、新たな心配事が生まれた。
そういえば、病院から介護医療院に移ることになったという話も知り合い数名から聞いたことがある。介護医療院とは、介護保険が利用できる公的な施設で、医療が必要な要介護者に「長期療養のための医療」と「介護を含めた日常生活の世話」を一体的に提供している施設だ。費用が気になったので調べてみると、介護老人保健施設や特別養護老人ホームよりは割高だが、有料老人ホームよりは控えめというような印象だった。
夜中の2時に病院から呼び出し「祖父はどうなる?」
祖父の退院後について心配しながら、数日が経過したある日。夜中の2時に病院からの電話で起こされた。
酸素飽和度が下がってきているので、来られるなら来て欲しいとのことで、父と一緒に祖母を迎えに行って病院へ向かった。
病院に着くと、祖父は以前の4人部屋から個室に移っていた。
祖父の顔には酸素マスクがかけられ、指には酸素飽和度を測る器具が付けられていたが、祖父はどちらも嫌がって取り外そうとしていた。それをなんとか抑えながら過ごしていたが、何時間か経ってくるとだんだんこちらも疲れてきて、「本人が外したがっているなら抑えなくてもいいんじゃないか…」とも思えてきた。
たまに水を飲ませたり、体勢を変えたりと細々したケアを続けているうちに、朝日が昇ってきた。看護師さんが「ご家族もお疲れでしょうから、一度お帰りになっても大丈夫ですよ」と声をかけてくださったので、いったん引き上げることにした。
帰り際、看護師さんから「今日はこちらの都合で個室にさせてもらいましたが、このまま個室に残るか4人部屋に戻るか選べます。個室の場合は追加料金がかかります」との話があった。何日いることになるかわからないので、判断しかねたのだが、家族で相談して祖父にはこのまま個室で過ごしてもらうことにした。
入院できれば安心!という訳ではない
筆者はとにかく祖父が入院さえしてくれれば、祖母が毎日ひとりでケアをしなくても良くなって安心だと思っていたが、実際にはそういう訳にもいかなかった。家族のケアというのは、どこにいても多かれ少なかれ生活にかかわってくるのだと改めて感じた。
祖父が今、何を思っているのかはわからないが、とにかく少しでも苦しまずにいられることを願うしかない。
