65才以上の就業者数が過去最高に 「幸せな働き方」ができる“高齢者限定派遣会社”の活用例
東京ガス本社内のコンビニで週4日、朝7時15分から夕方4時15分まで働く仲田加代子さん(72才)。今年の6月で勤続2年となる。
「仕事の内容は、レジを中心に品出しや発注など、一通りです。前職の東京ガスではデスクワークでしたが、いまは立ち仕事で、重いものを持つこともあります。初めは慣れなかったものの、システムセンターやショールームの接客等を経験していましたので、レジの扱いやお客さまへの応対も抵抗はありませんでした。まったく違う業種でも、これまでの経験がいろんな場面で生きてくるなと感じますね。周りのかたがたも親切に教えてくださるので、気持ちよく働かせていただいています」(仲田さん・以下同)
65才で2度目の定年(※)を迎えたとき、先輩に声をかけてもらい、高齢社に登録した。
「これからも働こうと思った理由は、趣味の社交ダンスのレッスン代や、同居する孫と遊びに行くためのお金を得て、生活をより豊かに過ごしたいと思ったからです。それに、まだ健康ですし…」
社交ダンスを始めたのは60才から。カルチャーサークルから個人レッスンに移行し、本格的に打ち込んでいる。
「定年の少し前、これからは自分の時間を好きなことに費やしたい、やるなら体にいいものがいいと思い、昔取った杵柄で社交ダンスを選びました。年に1回、きれいなドレスを着て先生とデモンストレーションを踊る機会があるんです。そのためにはもっと上手になりたくて練習に励んでいます。なので、普通のレッスンよりお金はかかります(笑い)。
それでも、還暦を過ぎて趣味に出合えたのは本当に幸せで、それは働きがいにもつながっているんです。若い頃は仕事や育児など、いろんな悩みもありました。それを乗り越えてきたから、いまはご褒美かな、と」
平日4日働いて1日レッスンにあてるというサイクルは、現在のところちょうどいい。
「正直なところ、真冬の朝6時過ぎに出勤するのは尻込みすることもあります。それでも、いまはまだ健康で意欲があるので、打ち克てているのかなと感じています」
高齢社での仕事を経て、自身に変化はあったのだろうか。
「若い頃は大きな会社で働いていたこともあり、いまより生意気だったような気がします(笑い)。現在は、元気に働けるだけで恵まれているなと実感していますので、感謝の思いしかないですね」
生きがいが働きがいにつながる、好例だ。
(※)2度目の定年とは、60才定年後の再雇用が終了すること。再雇用の年数は企業により異なる。
年代の違う人との交流が若々しくいられる秘訣
関美保さん(68才)は、東京ガスライフバルで25年間働き、65才の退職直後、高齢社に登録した。現在は、給湯暖房システム「TES」や家庭用燃料電池「エネファーム」の修理・点検を行う都内の企業で、週3日、朝8時45分から夕方5時30分まで勤務している。
「先輩から評判を聞いていたので、すぐに登録しました。週3日勤務の希望に加えて、前職と業務内容も近く、自宅から30分で通える現在の会社と出合え、本当にラッキーでした。業務は、お客さまからの電話対応です。不具合の状況を伺い、コンピューターを使ってメンテナンス員の手配も行います。曖昧なことを言ってお客さまや会社に迷惑をかけないよう、神経は使いますね」と関さん。働くのは、大好きな卓球のためだ。
「30代でママさん卓球を始め、仲間とチームを作って全国大会にも出ました。シニアになったいまも強くなりたいので、週に1度、個人コーチについています。コーチ費用がかかりますから、いま働けるのはありがたいですね」(関さん・以下同)
卓球は「働く糧(かて)」だと断言する。コーチ、所属チームでの練習、試合などがあるため、週3日の勤務は、元気に働くのにベストなペースだという。また、「その日与えられた仕事を達成すれば合格」という気楽さが、現役とは違う点だ。
「わからないことがあれば、すぐに教育係の若い人に聞きます。年齢に関係なくみなさんフランクで、仕事に行くことが楽しい。年代の違う人たちと交流できるのも、若々しく元気でいられる秘訣かもしれませんね」
社長の村関さんが「幸せな老後のための要素」として挙げた「社会とのつながり」。その重要性を感じる言葉だった。
◆高齢社 基本データ(2021年9月現在)
登録社員 938人
登録可能年齢 原則65才以上
登録社員の平均年齢 71.1才(最高齢84才)
就労率 38.1%
登録条件 週3日程度、ワークシェアリング ※働く人の都合により異なる
平均収入 上記の勤務日数で月10万~20万円または時給 ※業務内容により異なる
https://www.koureisha.co.jp
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2022年6月2日号
https://josei7.com/
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