「介護職9000円の賃金アップ」現場の実感薄い 2月の給与明細に僕が感じた失望
交付金は、標準的な職員配置の事業所で、福祉・介護職員1人あたり月額9000円となっていますが、介護職以外の職員にも充てることができます。どのように分配するかは、事業所に委ねられているため、一律9000円アップというわけではありません。
配置基準より多くの職員を雇っている施設では9000円もらえないこともありますし、介護職以外の職員も含める場合は、当然、支給額は少なくなります。
働いている介護施設によってもらえる額が変わってくるので、満額もらえる職員もいれば、雀の涙しかもらえない職員が出てくるというわけです。このような交付金の配分の仕方に対して、僕は疑問を感じています。
あくまで僕の意見ですが、交付金は施設に支給するのではなく、給付金のような形で国から職員に直接渡るような仕組みだったらよかった…。同じ介護職なのに働く場所によって金額が変わってしまうのは、とても不公平なことだと考えています。
これまでの賃金に関する処遇改善でも、実質、介護職員の賃金アップに繋がらなかったことはたびたびありました。
賃金アップにはインパクトが欲しい
介護職員の給料アップの実感が薄い理由として、給料アップの額にインパクトがないということもあります。
いきなり賃金を上げることは難しいとは思うのですが、上がり方が緩やかだと、物価も上昇しているため、なかなか生活が豊かになったと感じられないのです。
コロナ禍で財政難であることはもちろんわかってはいるのですが、「介護職員一律○万円のベースアップ!」といったインパクトがあれば、「よし、今年は給料が上がるから頑張るぞ!」と、モチベーションにも繋がると思うのですが…。
給料アップは働くモチベーション
「介護職員の賃上げにはインパクトが必要」と僕が考えるのは、せっかくの賃金アップ施策なのに、「9000円アップといっているが、ほとんど変わっていないじゃないか」と、がっかりして、逆にモチベーションが下がってしまう人もいるのではないかと思うのです。
政府は今後も、徐々に賃上げをする予定とのことですが、次の賃上げはいつで、どのくらいの金額なのか、具体的なことは、現場には伝わってこないのが現状です。
給料が低くて生活が立ち行かない場合、次の賃上げまで悠長に待つことができない人もいます。僕の周りでも処遇改善が実施されたのにまったく給料が上がらず、退職した職員は何人かいました。離職防止のための賃上げですが、中途半端な賃金上げはかえって逆効果になることもあるのです。
老健の夜勤専従で働く僕の賃金アップ事情
今回の賃上げに関しては、まだ実感できている介護職員は少ないけれど、政府は今後も中長期的な賃上げを検討していると明言しているのは、喜ばしいことです。
最後に、僕自身の給料の話をしたいと思います。
実は昨年12月から介護現場に復職し、老健(介護老人保健施設)の夜勤専従で働いています。そこで僕も期待をしながら2月の給料明細を見てみると――。
以前と比べて1円もアップしていませんでした(笑い)。失望しながらも、今後の賃上げに期待せずにはいられません。
夜勤で働きはじめて僕は、改めて介護の仕事は魅力的な仕事だと感じています。賃金アップが確実に実施され、給与面でも魅力を感じるようになれば、もっともっと介護職に就いたいと思う人が増えるのではないでしょうか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として勤務。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。