介護施設で勤続3年目に夜勤専従の派遣に転職した理由「ボーナスに僕が感じた絶望」
介護士として働いた経験をブログで発信しているたんたんさんこと深井竜次さんが、ある介護施設で勤続3年目にもらったボーナスに深くショックを受けたという。介護職のボーナスにまつわる実体験から、働き方を見つめ直した経緯を教えてもらった。
介護士ブロガーのたんたんと申します。
5年間介護現場で働いてきた経験や知見をもとに、「多くの介護士さんが幸せな働き方を実現できるように」という思いを込めて、ブログを運営しています。
介護ポストセブンでもこれまで僕が介護現場で経験した出来事や学びを、「介護士さんをはじめ介護にかかわる多くの人に参考になれば…」と思って連載を書いてきました。
今回は、冬のボーナスシーズンが近いということもあり、「介護職のボーナス」について僕が経験したことと教訓について書いていきたいと思います。
介護職のボーナスにまつわる僕の実体験
僕は介護派遣の夜勤専従がメインで介護の仕事をしてきました。そのような働き方を選択したのは、ボーナスにまつわるある出来事が大きく影響しています。
ボーナスといえば、働く上でモチベーションに繋がる側面もありますが、逆にモチベーションが下がってしまうこともあるのです。僕の場合は、まさに“ボーナス”が働き方を見直すきっかけになりました。
僕が過去に働いていた特別養護老人ホームでは、正社員には夏と冬にボーナスが支給されました。ボーナス支給月の7月と12月はボーナスが楽しみで張り切って働いていました。
しかし、今から5年前のこと、勤続3年目の夏のボーナスのとき、悲しい現実を突きつけられたのです。
勤続3年目にもらったボーナスの悲しい現実
ことの発端は、ボーナスを支給された翌日、一緒に夜勤をしていた上司に「ボーナスどうだった?」と質問されたことです。
別に隠すことでもないと考えた僕は、素直にボーナスの額を伝えました。すると、その上司は驚きの表情を浮かべました。
「もしかして自分のボーナスは他の人と比べて低いのではないか?」と、なんだか不安になった僕に、上司が「これを見てくれよ…」と、ボーナス支給の明細書を見せてくれました。
その額を見てみると――。勤続3年目の僕のボーナスが30万円で、15年目の上司は、32万円でした。
僕のボーナスと2万円しか変わらなかったのです。
僕は勤続3年目、その上司は勤続15年目でリーダー職でした。自分より遥かに高いボーナスが支給されていると思い込んでいたので、驚愕でした。
その上司は、仕事ができる人で資格も多く保有していましたし、多くの職員や利用者から信頼を集めていた人でもありましたから、なぜあの人が僕とそう変わらないボーナス額なのか疑問でした。
それと同時に、「たくさん資格を取得して長く働いたとして数年しか働いていない職員とボーナスの額はたいして変わらない」という現実…。
自分がこの先この施設で長く働いたとしても、その現実は変わらないと突きつけられているようで、そのときの上司のボーナス金額が、自分の将来のように感じ、当時の僕は大きな絶望を感じたのでした。
僕が安易にボーナスの額を上司に教えたことで、上司と気まずい感じになってしまったことも後悔しました。
そのときは、経験年数を重ねれば給料やボーナスは当然上がるものだと考えていたのです。しかし、上司の明細を見た僕は、「これ以上、ここで働いてもボーナスの額が上がっていくことはない」という現実を目の当たりにしてしまいました。
その結果、僕はボーナス支給から数か月後に転職をしたのです。
ボーナス後に多くの職員が退職する異常事態
現在僕は介護職のサイトを運営していて、転職エージェントや転職サイトの紹介をして広告で収益を得ています。転職サイトを見ていると、毎年ボーナスが支給された翌月に登録する人が増える傾向があります。
「ボーナスをもらったから退職しよう」という人もいますし、僕が感じたようにボーナスが安い、今後上がるか不安だと感じ、転職を決意したという人もいると思います。
実際に僕もボーナス月の数か月に転職をしましたし、その月は僕を含めて3人の職員が退職しました。
ボーナスをもらった直後に退職するのは、印象が悪いかもしれませんが、生活もあるのでそれは仕方のないことです。
「上司のボーナスの額が自分とそこまで変わらない」ということは、職場の将来性も疑ってしまいます。「本当に正当な評価をされているのか?」と疑問に思うと同時に、「他の施設や業種で働いたほうが将来性があるのではないか」と感じました。
ボーナスに一喜一憂しない働き方もある
その後、僕は、正社員になってまたボーナスによってモチベーションが左右されてしまうのもどうかと思い、夜勤専従の派遣という形態で時給が高い仕事をしてみようと、気持ちを切り替えて転職をしました。
明確な査定や評価額が提示されている会社もあるかもしれませんが、僕が当時勤めていた施設のボーナスの金額や評価額は、どういう基準なのかはわかりませんでした。所詮、他人の評価で、自分ではコントロールすることはできません。
自分がどんなに頑張っても満足する金額が支給されるかどうかはわかりません。そこで僕は、「毎回ボーナスのたびに心を揺らされてしまうのは嫌だな」と考え、ボーナスをもらう働き方から卒業しました。
個人的にはそれが正解かどうかわからないですし、人それぞれ働き方の正解は違うと思います。
働き方をしっかり評価してボーナスの金額に反映させる介護施設もたくさんあると思いますので、そういう施設を探して転職をするのもいいと思います。
僕の場合は、ブログの運営という副業があったので、ボーナスはもらえないけれど昼間の時間を自由に使える夜勤専従の派遣という働き方を選びました。
介護職のボーナスは今度どうなる?
岸田政権では、介護職の賃金アップや処遇改善を提示していますし、2012年からは「介護職員処遇改善加算」により、勤続年数や資格などにより昇給するための加算が受け取れる制度も開始されています。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査」によると、介護職の賞与額は、平成28年は56万116円でしたが、令和2年には62万6094円と大幅に上昇しています。
実際に僕の知人の介護士たちも、ここ数年でボーナスが上がったという声も聞かれるようになりました。
過去に比べれば、介護職のボーナスや給料は上昇傾向にあるのですが、前述の調査で介護職を辞めた理由には、「自分の将来の見込みが立たなかったため」が上位。さらに、職場での悩みには、「仕事内容に比べて賃金が低い」と感じている人が圧倒的に多いという結果も。
介護職のボーナスと働き方が見合うような世界が早く来ることを願います。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。