精神科医Tomyさんが初の小説作品で伝えたいこと「主人公はあなた。自分と重なるストーリーが見つかればうれしい」
何歳になっても迷うことはある。Tomyさん初の小説作品『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』(ダイヤモンド社)は、リアリティのある悩みが描かれた8つのショートストーリー。主人公は受験生や若手社員、ミドル世代の医師など、年齢も境遇もさまざま。しかし、どこか自分と重なり、読後は自分へのアドバイスをもらったような気分になる。
Tomyさんインタビュー第2弾として、Tomy先生が物語を通して伝えたかったことを聞いた。
不満ゼロの相手はありえない。不満を伝えられる幸せを描いた「選択」というストーリー
人の悩みは、そのほとんどが人間関係ですね。相手の態度にイライラして「こうしてくれればいいのに」と思うことはたくさんあるでしょう。
「選択」という話に出てくる主人公は、不満を言っても受け止めてくれるパートナーのありがたさに気づき、自分を見つめ直します。お恥ずかしながらアテクシの体験がたくさん詰め込まれているんです。
アテクシ、30代でパートナーを亡くしたのちに何人かとお付き合いしたのですが、しばらくすると関係がギクシャクすることが多かった。「嫌われたくない、失いたくない」という思いで、相手のモヤッとする面を我慢していたんです。
「無理に人に合わせると長続きしない。言いたいことは上手に伝えなくちゃ」、とアドバイスしている立場なのにね(笑い)。診察の中で、友人からも、パートナーに文句を言ってケンカしている愚痴をしょっちゅう聞いていたにも関わらずです。
今、年齢を重ねた人の恋も、同じ面があるかもしれません。定年退職してパートナーと一緒にいる時間が長い人もきっとそうですね。黙って察してくださいっていうのは、無理な話です。
「どうしてこんなことするの? 私はイヤだったよ」と、不満を言える関係でいないとダメなんですね。特に、人間は目の前の感情を優先しがちです。我慢してずっとイライラしていると、相手を本当に嫌いになってしまうことも。そういう人はのちに後悔しやすい。もったいないですよね。
不満がない相手なんてありえないし、不満が出ない人は口にしないだけ。熟年離婚がそのいい例です。これからも人生の戦友としてともに歩むなら、お互いが疲れないよう、上手に不満を言い合うのは当たり前なんです。
これから新しい恋に向かう人も、パートナーとの関係に悩む人も、きっと自分と重なる話だと思いますよ。
SNSで、リアルでも。陰口を言いふらされたら、「悪意」のストーリーのように俯瞰で見てみる
陰口は無くならないものですよね。イヤになってしまいますが、どこへ行ってもつまらないイヤミを言ってくる人は必ず現れます。知らず知らずのうちに、自分が陰口を言う側になってしまわないよう、気をつけたいですね。
「悪意」は相手が勝手にストレスを抱えていて、そのはけ口として他人を攻撃するという、SNSで起こりやすいトラブルを題材にしました。
八つ当たり的な意地悪でも、悪意をぶつけられた側は、自分のどこに原因があったんだろう、どう変えればいいんだろうとオロオロしてしまいます。これは職場やご近所などのリアルな場所でも起こりうるでしょう。
難しいですが、真正面から受け止めて凹まずに、俯瞰で見てみるといいですね。はっきりした理由のない悪意が生むトラブルは多いもので、自分が悪いと思う必要は全くないんです。偶然近くにいたから攻撃されただけかもしれません。
相手を許す、許さないを決めるのも自分ですから、自分の価値観や気持ちで決めて構わない。長い友人関係を失いたくないとしたら、許してもいいと思います。
ところで、この話を書いている頃、アテクシは付き合っている人の影響で『名探偵コナン』のアニメにハマっていたんです。アガサ・クリスティ好きでもあるので、この話には推理小説風にトリックを入れてみたんですよ。
トリックといってもナチュラルな言動にしたつもりなので、見抜けるかどうかはあなた次第(笑い)。推理小説のように楽しく読んで、同じような境遇となった時にふと思い出し、参考にしてくださったらうれしいです。
職場いじめをしなやかに交わすには? 「女王」に振り回されずにいる方法
多くの方に似た経験がありそうなのが、「女王」という話です。どんな職場にも力関係やその場所ならではのルールが少なからずあるでしょう。うまく立ち回れなかった人が居場所を失って辞めてしまったり、こちらも明日は我が身ではないかと怯えたり。なかなか頭の痛い問題です。
自分の縄張りを作ろうとするボスキャラは、どこでも必ず現れますよね。仕事の人間関係では普遍のこの問題。皆さんはボスキャラとのトラブルを、どのように回避していますか?
この物語の主人公は、職場でなるべく波風立てずに立ち回ってきましたが、ふとしたきっかけでそのバランスを崩し、ピンチに陥ります。日頃の診察でも、職場の人と何となくうまく行かず、ストレスとなって会社に行けなくなったというのはよく聞く悩みなんですよね。
人が集まるとどういうわけか、そういう力関係はできてしまう。アテクシの過去の経験も絡めながら、リアルな人間像となるよう書くうちに、「ひとつのことに執着しない大切さ」を改めて噛み締めました。
仲間外れにされたら、即、いじめだと思わずに。そのグループが合わないならしょうがない。そこには加わらず、素知らぬ顔して我が道を行けるといいですよね。職場でみんなが仲良しなんて、そんなのどうだっていいじゃん、と気づければそれで開放されます。
本当の悪人ってなかなかいないので、女王にも事情があるでしょうが、居心地の悪い場に無理に溶け込む必要はない。読んでくださった皆さまが、女王的な人に振り回されずに進んでほしいなと思います。
自分らしい生き方とは? モヤモヤが少しでも晴れたらうれしい
8つの物語の主人公は、つまずきをもとに、自分らしい生き方を自分で見つけます。アテクシの精神科医としての積み重ねと、コラムニストの活動から得たものが形となった一冊です。
アテクシからのメッセージを押し付けるつもりはないんです。エンタメとして楽しむうちに、ご自身と重なるストーリーが見つかれば、本当にうれしい。
いくつになっても人生の主人公はあなたですから、自分なりの夢を追いかけて楽しみ、毎日をもっと輝かせてほしいと願っています。
プロフィール
精神科医Tomyさん/1978年生まれ。国立大学医学部卒業後、精神科クリニックに勤務。診察する中で言葉の力に気づき、自身のつらい経験も生かして、気持ちが軽くなる考え方のヒントをツイッターで発信。たちまち話題になり、現在はフォロワーが26万人を超える。人気ツイートが掲載された書籍シリーズ『1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(他3冊/すべてダイヤモンド社)は、累計発行部数21万部を突破。現在、作家・エッセイストとしても活動しながら、悩み多き人々に寄り添い続けている。
ツイッター:『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き』 @PdoctorTomy
【データ】
「心の荷物の手放し方』(ダイヤモンド社)
価格:1430円
●精神科医Tomyの元気の出る金言【第1回 しんどい状況が続いてるあなたへ】