精神科医Tomyの元気の出る金言【第21回 喪失の苦しみを乗り越えるには】
つらい経験を覚えておく?
抱えきれない人は
無理しないで、
忘却というツールを
活用しましょう。
* * *
忘れたことにして、時に身を任せる
おはようございます。精神科医のTomyです。感染症対策をしながら迎える2度目の冬ですね。手洗いうがいを忘れずに、体をいたわりながら過ごしましょうね。
さて、あなたはつらい経験を覚えておくタイプですか? 忘れた方が幸せ、と思うタイプでしょうか? 仕事や社会の役割の中では、困難だったことをしっかり整理して、次に役立てる必要があります。でも、個人的につらい気持ちを無理してとどめておくのはどうでしょうか。
このパンデミックでのつらさも、同じ面がありそうです。個人的な意見なのでちょっと違って聞こえるかもしれませんが、アテクシは「パンデミックとは喪失体験だ」と感じました。自分がパートナーを亡くした時の「パートナーとの当たり前の日常生活を失った」という状態と、重ね合わせて考えたのです。
人と会って過ごす楽しい日常が無くなっただけでなく、仕事を失ったり、人生の節目の式典などが中止となった人もいらっしゃるでしょう。幼稚園児、小学生のような人生経験の浅い子どもたちまで、みんなに等しく喪失体験が訪れて、私たちは慌ててしまったのですよね。
アテクシは仕事柄、年上の患者さまの話を聞くことも多いです。なので、年齢とともに大きな喪失と向き合うことを、ちょっとリアルに感じています。家族、友人、仕事の仲間、そしていつか自分を失うのですよね。そんな、人生の後半から終盤に受け入れる喪失と近いインパクトをコロナ禍に感じました。
何をお伝えしたいかというとね、どんな喪失の苦しみからも人は立ち直り、なんとかなるの。自分の経験はもとより、精神科医をしている中でもそう信じています。つらい時、ずっとこの状況が続くと思わないでほしいのです。だから、つらいのに「忘れちゃいけない」と、自分で自分を苦しめている人がいたら、考えないで忘れたことにしておく、という方法もあると思うんですよ。
愛する人を失うなどの大きな悲しみも、今は「忘れられない」と思っているけれど、必ず過去になり、時折ふわっと思い出して温かい気持ちになるフェーズに入っていくはずです。乗り越えるとは、時間に身を任せて少しずつ忘れることなんです。日にち薬ですね。
あなたの心が穏やかでいられることの方が大切なので、あんまり思い詰めないでね。ゆっくり、マイペースで人生を楽しみましょう。
プロフィール
精神科医Tomyさん/1978年生まれ。国立大学医学部卒業後、精神科クリニックに勤務。診察する中で言葉の力に気づき、自身のつらい経験も生かして温かいアドバイスをツイッターで発信。たちまち話題になり、フォロワー現在、25万人を突破。作家・エッセイストとしても活動しながら、悩み多き人々に寄り添い続けている。近著に『もう、“言わずに我慢”なんてしなくていい! 精神科医Tomyの 言いたいことがラクに伝わる35の方法』(大和出版)、『精神科医Tomyが教える 1秒で元気が湧き出る言葉』(ダイヤモンド社)
ツイッター:『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き』 @PdoctorTomy
取材・文/永田玲香