「野菜をすりおろすだけで」健康効果が上がる 消化、吸収、代謝にかかわる“酵素”をムダなく摂取
体がだるい、疲れが取れない、食欲が出ない──夏バテで弱った体では、食事を摂る気にすらなれない日もある。そんな食欲がないときの救世主が、すりおろした野菜や果物だ。食べやすいだけでなく、そのまま食べるよりも、含まれている栄養素の吸収率や効果がグッと上がるという。「すりおろし」がいい理由を専門家に教えてもらった。
すりおろさないと「酵素」がムダになる
食材に含まれている栄養素を効率的に体に取り込んで消化・吸収・代謝するためには、「酵素」の働きが不可欠。酵素は日々体内でも産生されるが、野菜や果物にも豊富に含まれている。
酵素の数は約5000種類もあるといわれ、三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質を消化する酵素はそれぞれ異なると、管理栄養士の中沢るみさんが言う。
「ご飯やパン、パスタなどの炭水化物の消化をよくする『アミラーゼ』は、大根や山いもなどに多く含まれます。肉、魚、卵などのたんぱく質を分解する『プロテアーゼ』はパイナップル、キウイ、しょうがなどに。脂質の代謝を促す『リパーゼ』は、アボカドなどに多く含まれています」
体内に充分な量の酵素があると、食べたものがスムーズに消化され、新陳代謝が活発になってやせやすい体になり、免疫力や自然治癒力も上がる。
一方で、酵素の量が足りないと、消化吸収が滞り、食欲減退や血行不良など、さまざまな不調につながる。
「例えば、暴飲暴食して消化が悪くなると、体内の酵素の多くが消化のために使われます。1日に体内でつくられる酵素の量は限られているので、消化にばかり酵素が使われると、脂質や糖質をエネルギーに変えるための酵素が不足して太りやすくなり、結果的に食欲も減退します」(中沢さん)
体内でつくられる酵素の量は、加齢や乱れた食生活などで減少する。つまり、食欲のわかない夏こそ、野菜や果物で積極的に酵素を摂るべきなのだ。
野菜や果物の「細胞壁」を壊し、空気に触れさせて活性化
だが、やみくもに丸かじりするだけでは効率的とはいえない。そのまま食べるだけでは、酵素の恩恵はほんの少ししか得ることができないからだ。管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「野菜や果物には、セルロースといわれる食物繊維でできた『細胞壁』があり、野菜や果物の栄養素と酵素は、細胞壁の中に閉じ込められています。人間は、セルロースを体内で消化することはできません。よく噛んだとしても、細胞壁は簡単には壊すことができません。そのため、食材の栄養分や酵素をムダなく摂取するためには、すりおろしたり、細かく刻んで、細胞壁を壊すことが大切なのです」
酵素はその多くが、空気に触れることで活性化する。野菜をすりおろせば、その効果を最大限に引き出すことができるのだ。
具体的に、食材ごとの期待できる効果と食べ方を見ていこう。
「すりおろし」で効果が上がる野菜
●大根
【期待できる効果】
消化をよくする、脂質・糖質の分解を促進、殺菌作用
【食べ方】
脂質が多い揚げ物や肉料理、糖質が多い丼ものと一緒に食べるとよい。特に豚肉と合わせると、ビタミンB1との相乗効果で糖質を分解しやすくなる。
●かぶ、ブロッコリー、菜の花、ケール、ブロッコリースプラウトなど(アブラナ科の野菜)
【期待できる効果】
殺菌作用、抗酸化作用、動脈硬化予防、がん予防
【食べ方】
ブロッコリースプラウトなど、すりおろすのが難しいものは細かく刻む。
●長いも、山いも
【期待できる効果】
でんぷんの消化をよくする、胃粘膜を守る、脂肪の吸収を抑える、血糖値の上昇を抑える
【食べ方】
まぐろなどと一緒に食べると、ビタミンB2との相乗効果で脂肪燃焼効果がアップ。
●オクラ、モロヘイヤ
【期待できる効果】
便秘解消、脂肪の吸収を抑える、血糖値の上昇を抑える
【食べ方】
細かく刻むほど粘り気が増し、効果がアップ。
●玉ねぎ
【期待できる効果】
抗酸化作用、血液サラサラ、夏バテ予防、コレステロール値の上昇を防ぐ
【食べ方】
豚肉やかつおなど、ビタミンB1が多いものと合わせると効果アップ。油と合わせると吸収率が上がる。
●にんにく、にら
【期待できる効果】
疲労回復、食欲増進
【食べ方】
玉ねぎ同様に、豚肉やかつおなど、ビタミンB1が多いものと合わせると効果アップ。油と合わせると吸収率が上がる。にらは葉先より根元を中心に。
●しょうが
【期待できる効果】
殺菌作用、ほてりを取る(生食の場合)、体を温める(加熱した場合)
【食べ方】
煮詰めると酵素の働きが失われるので、加熱する場合は60℃程度の温かいつゆや紅茶に加える。
●みょうが
【期待できる効果】
血行促進、食欲増進
【食べ方】
しょうが、大葉、ねぎなど、ほかの香味野菜と合わせると風味が増し、減塩にもつながる。香り成分の揮発性が高いので、食べる直前にすりおろす。
●にんじん
【期待できる効果】
抗酸化作用、老化防止、血行促進
【食べ方】
油と一緒に摂ることで吸収率が上がる。
●きゅうり
【期待できる効果】
脂肪燃焼
【食べ方】
大根おろしなど、ほかのすりおろし野菜に加える。
●パイナップル、キウイ
【期待できる効果】
消化をよくする
【食べ方】
肉料理に使うことで酵素が肉をやわらかくしつつ、消化を助ける。
●トマト
【期待できる効果】
抗酸化作用、認知症予防
【食べ方】
冷凍することで細胞壁が壊れやすくなり、すりおろしやすくなる。生のままでも、油と加熱してもよい。トマト缶でも。
●きのこ類
【期待できる効果】
脂肪の吸収を抑える
【食べ方】
細かく刻んで冷凍することで栄養価がアップ。
●じゃがいも
【期待できる効果】
胃腸の働きをよくする
【食べ方】
芽を取り除き、生のまますりおろす。ただし、食べすぎは逆効果。
教えてくれた人
管理栄養士・中沢るみさん、管理栄養士・望月理恵子さん
※女性セブン2020年9月2日号
https://josei7.com/
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