介護施設で深夜ゾクッとした話3選|散乱する衣服、すすり泣き、トイレの不審な灯り…
介護士ブロガーのたんたんさんこと深井竜次さんが体験してきた、介護士の夜勤は、夕方の5時~翌朝10時までの勤務だ。たいてい何か不審なことが起こるのは深夜1~2時だったという。たんたんさんが真夜中に背筋がゾクッとした体験談を3つ、教えてくれた。
介護士ブロガーのたんたんと申します。
5年間介護現場で働いてきた経験や知見をもとに、「多くの介護士さんが幸せな働き方を実現できるように」という思いを込めて、ブログを運営しています。
介護ポストセブンでもこれまで僕が介護現場で経験した出来事や学びを、「介護士さんをはじめ介護にかかわる多くの人に参考になれば…」と思って連載を書いてきました。
今回は昨年の12月に公開した夜勤の怖い話が好評だったので、夜勤中の珍しい出来事の第2弾を書いてみたいと思います。
→老人ホームの夜勤で体験した怖い話3選|深夜の笑い声、空き部屋から呼び出し…
1.深夜2時のナースコールで衣服が散乱
介護士は夜勤の仕事のひとつにナースコールへの対応があります。
その多くが「トイレに行きたいから介助をして欲しい」「車椅子に移りたい」というもので、職員は排泄介助や移乗介助をします。
ナースコールで時々変わったお願いをしてくる入居者さんもいます。僕の記憶に鮮明に残っているのは、海堂さん(82歳女性、軽度の認知症あり・仮名)です。
海堂さんは深夜2時になるとトイレに行く習慣があって、毎回その時間になるとナースコールを押して職員に介助を頼まれます。
その日も深夜1時50分にナースコールがあったので、特に気にせずに海堂さんの部屋に訪室しました。
しかし、部屋のドアを開けると、なんと大量の衣服が散乱しているのです。そして、海堂さんはボーっとタンスの中を見ていました。
僕に気づいた海堂さんは、
「深井さん、明日家族とランチを食べにいくけど着ていく服が決まらなくて困っているの。一緒に決めてくれない?」と、お願いをされました。
この日は、別の職員がステーションに待機していたので、目の前で起きていることを説明し、海堂さんと一緒に30分ほど“明日着ていく服”を選びました。
海堂さんに似合う紫色のワンピースに白の帽子、靴はハイヒールに決め、どうやら納得されたようでした。そのあと、毎晩の習慣であるトイレ介助を行い、おやすみいただきました。
2.深夜に部屋からすすり泣きが…
僕の働いていた施設では2時間おきに利用者様の安否を確認するために各部屋を循環することになっていました。
深夜2時ごろだったでしょうか、渋川さん(87才女性・仮名)の部屋の前を通ると「うっうっうう…」という泣き声が聞こえてきました。
渋川さんは、とても上品なご婦人でおやつの時間にも他の利用者様がコーヒーを飲む中でアールグレイティーとクッキーをつまみながら他の入居者様と「ほほほ〜」という感じでお話されるイギリスの貴婦人のような方です。
「もしかして、急変して苦しんでいるのではないか?」と思い、慌ててドアを開けてみると――。
渋川さんはベッドの上でハンカチを片手にすすり泣きしているのでした。
僕は慌てて、「渋川さんどうされましたか?」と聞きました。
すると、渋川さんは、テレビを指差して言いました。
「まさかこんな結末になるとは思わなかったのよ!」と涙声で答えるのです。
テレビを見ると、韓流ドラマが流れていました。
僕もなんだかドラマの結末が気になってしまい、渋川さんに聞いてみました。
渋川さんは気を取り直して、
「主人公とメインのヒロインと微笑ましい日常を描いていたら最終回に急に主人公が他の女性と結婚すると言い始めて修羅場になった」と、説明してくれました。
すっかり韓流ドラマの結末に傷心状態だった渋川さんでしたが、涙は止まったようでしたので、「ごゆっくり…」と声をかけ、僕は部屋を出ました。
3.職員トイレに明かりが灯る深夜1時
僕が働いていた介護施設では、夜勤のときは2人体制で1フロアを担当していました。
僕が仕事をしていたり、利用者様のコール対応をしたりしている時は、他のコールが鳴ったときには待機しているもう1人の職員が対応することになっていました。頻繁にコールが鳴るときは忙しくてトイレにも行けないほどです。
そのとき僕とコンビを組んでいたのは、介護士のA君でした。
ある日の深夜1時頃、A君の仕事が落ち着いてきたようだったので、僕はトイレに行くことにしました。僕らは職員専用のトイレを使っていたのですが、ふと見ると職員トイレに明かりがついていました。
そのフロアには僕とA君しかいないので、電気の消し忘れかと思ったのですが、A君は細かいことは絶対に忘れない人だったので、自動感知システムが誤作動でもしたのかと思い、とりあえずトイレに入ることにしました。
すると――
何やら「ゴォ~、ゴォ~」とトイレの奥から音がします。一瞬背筋がゾクッとしましたが、スライド式のトイレの扉を開けてみると、施設の利用者である花田さん(仮名:84歳男性)でした。
花田さんは便器の上に座りながらいびきをかいて寝ていらっしゃいました。夜中にトイレに行こうとして職員トイレに入ってしまい、そのまま寝てしまったのですね。
僕はホッとして、花田さんを起こして、そのまま部屋に誘導しました。
翌日の朝、花田さんに会ったとき、
「そういえば昨日はあなたに介護をされた夢を見たよ」と、報告されました。
「それは現実なんだけどなぁ…」と思いながら、食事前のほうじ茶をお配りし、飲んでいただきました。後々話を聞いてみると、花田さんはトイレで寝ていたことはまったく覚えていないようでした。
介護施設の夜勤で感じた仕事の面白さ
介護施設で働いていていると、様々な人たちの“生”の生活を目の当たりにすることになります。普段の生活では経験しないような想像を超える出来事に出会うことは、とても貴重なことだと感じていました。
夜勤の現場では霊的な現象のようなものをはじめ、さまざまなことが起こります。長年生きてきた人生の先輩たちが巻き起こす想像を超えた言動や現象は、実は介護士の仕事の面白みや醍醐味のひとつだと僕は考えています。
僕が感じたような出来事を経験された介護士さんも案外多いのではないか?と思っています。貴重な体験談をお持ちの方は、コメント欄で「介護夜勤での衝撃な出来事」を投稿いただければいいなぁと思ったりしています。
※登場人物の名前はすべて仮名。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』(https://www.tantandaisuki.com/)を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。
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