「高齢者のワクチン接種はかかりつけ医で」自治体の案内に“困った”の声が続々
国内での新型コロナウイルスの65才以上の高齢者(約3600万人)ワクチンは、4月5日の週から全国の市区町村への配布が開始され、4月27日時点で、115,724回の接種が実施されている(4月28日首相官邸発表)。政府は、6月末までには対象の高齢者全員に2回ずつ接種できる量を供給できる見込みとしているが、果たして、接種は順調に進むのかーー。ワクチンは供給されても、接種に難渋している状況が聞こえてきた。
コロナワクチン接種に戸惑う高齢者の声
千葉市に住むSさん夫妻(夫87才、妻84才)のところにも、先日、ワクチン接種のお知らせが届いた。千葉市は、現在80才以上のみの予約ができる。
「かかりつけ医など身近な医療機関での接種(個別接種)を中心に行っています。個別接種の予約は、電話などで直接、各医療機関にお問い合わせください」(千葉市HPより)となっているため、早速、近くに住む娘(53才)が、かかりつけ医に予約の電話を入れると、意外なことを言われた。
「お母さんのK子さん、当院はかかりつけ医ではないので、予約は受けられません」
母のK子さんは、慢性疾患をもっているため定期的に大学病院にも通院している。今年に入ってからも循環器系の疾患で入院したばかりだったため、そのフォローは大学病院だった。
しかし、これまで、風邪などの体調不良や市から届く健診などは、夫婦ともすべてその近隣の医院で診てもらっていたため、かかりつけ医はと聞かれればそこだと思っていたのだ。
父はすんなり予約できたという。では、母・K子さんのかかりつけ医は大学病院なのかと、そちらに問い合わせると、ワクチン接種は行っていないという。
千葉市の個別接種会場は317か所あるが、そのうち「かかりつけ患者のみの可」が238か所、「どなたでも可」となっているのは79か所(4月27日現在)と、かかりつけ医での接種が3:1と多い。
集団接種会場を調べようと市のホームページを検索すると「現在7月末までの予約枠の空きがなくなっております」という表示。コールセンターへの電話も繋がりにくく、ワクチン接種予約サイト手順も煩雑だ。
Sさん夫妻の娘は、
「だれでも予約できる医療機関に何か所も電話しましたが、予約を締めきっているところばかりでした。すっかり出遅れてしまいました。
そもそも、家族が近くにいない高齢者にはインターネットでの予約はハードルが高いでしょう?ワクチン接種を受けられない高齢者はたくさんいるんじゃないでしょうか。母は大きな病気をしたばかりなので、真っ先にワクチン接種をして欲しかったのに…」と不安な気持ちを吐露する。
副反応が心配だし手続きが難しそう…
また、東京都に住む80代の母親を介護している50代女性によると、
「母のところにワクチン接種の案内は来たのですが、副反応を怖がって打ちたくないというんです。私自身は、母にワクチンを打って欲しいのですが、手続きも煩雑そうですし、対策を考えあぐねているところです」
かかりつけ医なら直接予約できると聞いていたのに…
千葉・木更津市に夫婦で暮らす70代の女性Yさんは、分厚い封筒で届いた接種案内を開封しながらため息を漏らす。
「10枚くらい書類が入っていて、開けるのも億劫でしばらく放置していました。
かかりつけ医なら直接予約ができると聞いていたのですが、私がいつも薬をもらっているかかりつけ医があるお隣の袖ケ浦市は、市の予約コールセンターで予約が必要でした。
住んでいる木更津市の予約コールセンターにかけてみても、『まだ受付をしていません。5月中旬以降、国からワクチンの供給がありしだい市のホームページでお知らせする』というアナウンスが流れて…。ホームページをこまめにチェックしなければならないとなると、接種のタイミングが遅れてしまいそうですよね」
高齢者のワクチン接種の状況
実際、千葉県全体でも、1回目の接種回数はまだ595回(4月25日現在、首相官邸発表)。このペースでは、高齢者のすべてが2回接種でできるには、果たしていつまでかかるのだろうか。
「かかりつけ医でワクチン接種ができる」。一見すると、高齢者は安心できる環境で、スムーズな接種ができるようだが、前述のSさんのようにかかりつけ医難民になってしまう例も多いに違いない。
ワクチン接種に対応できる医療従事者の数、そもそも市区町村に配布されているワクチンの数などで対応が追いついていない現状は想像に難くない。
取材・文/介護ポストセブン編集部
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