コロナ禍で増える”座り疲労”の原因と対策…首・肩・腰を軽くする5つの方法
新型コロナウイルス第3波の影響で、自宅にこもる機会が増えているこの冬。家にいることで座る時間が増え、肩や首がこったり、腰痛が悪化したり、疲労を強く感じる人が増えている。それは、血の巡りが悪くなるとともに、脳に疲れがたまることが一因。座り続けて疲れないために、私たちはどうすればいいのだろうか――。
座り疲労が起こる主な原因は2つある
2020年を振り返ると、コロナ禍で行動が制限され、家にいることが多く、特別に何かしたわけでもないのに「疲れた~」と感じることが多かったのではないだろうか?
「それは、テレワークなどで座り続けたことが原因です」と、言うのは、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さん。
「人間は、座っているだけで疲れます。その主な原因は2つ考えられます。
1つは、血流が滞ることで起こる疲労です。
私たちは椅子に座る際、足の付け根とひざ、足首を曲げています。このため、その3か所で血液の流れが滞り、長くこの姿勢を続けることで腎臓の血流も悪くなり、むくみなどが起こります。また、腎臓の血流が悪くなると、尿から老廃物がうまく排出できなくなり、体内に疲労物質が蓄積します。そして血流が悪化し、肩や首のコリの原因になるのです。さらに、血流が悪化すると、脳の自律神経は、酸素供給を維持しようとフル回転で働きます。そして、その状態がさらに長く続くと、脳の自律神経細胞が疲弊し、いわば錆(さ)びついたような状況になる。これが、疲労のたまった状態です」(梶本さん・以下同)
そして2つ目は、緊張や集中による自律神経の使いすぎによる疲労だ。
「そもそも自律神経には、交感神経と副交感神経があり、私たちがデスクワークなどで緊張して仕事をしているときは交感神経が優位になった状態です。本来、交感神経は、血流を維持し、体温や心拍、呼吸などを調整する脳の重要な器官です。それとともに、緊張や集中の中枢でもあります。座って体を休めているようでも、デスクワークをしたり、スマホを見たりして脳を使い続けていると、交感神経が優位な状態が続き、自律神経にかかる負荷が過度になります。すると、脳の自律神経細胞に活性酸素が増え、細胞が酸化ストレスにさらされ、錆びた状態になる。これが疲労の原因なのです」
脳の中で疲労を感じるのは、眉間のあたりにある眼窩前頭野(がんかぜんとうや)という部分。
「疲労は脳の自律神経の中枢(脳のど真ん中にある視床下部・前部帯状回)で起きますが、疲労を感じるのは別の場所にある眼窩前頭野。ここで『自律神経が疲れた』というシグナルを受け取ると、それを『体が疲れた』というシグナルに置き換え、脳全体に疲労アラートを発します。こうして体に疲労感を自覚させることで、さらに自律神経を酷使させるのを防ごうとする。つまり、脳(自律神経)が疲れているのに、体が疲れたと、あえて自分自身に誤解させることで、脳の自律神経の負荷を軽減させているのです」
では、どうすればこの脳の疲れを解消できるのだろうか。
座り疲労を解消する方法
【1】1時間に1回は立って歩く
「まず、1時間おきに立ち上がって体を動かすことです。トイレに行く、冷蔵庫に飲み物を取りに行くなど、どんなことでも構いません。1時間おきに30歩程度歩くだけでも血流は改善されるため、1つ目の疲労(血液の滞りで起こる疲労)は解消できます」
また、夜に質の高い睡眠をとるためには、朝をどのように過ごすかが重要になる。
「脳の疲労を回復させるには、睡眠をとるしかありません。良質な睡眠をとるために、寝る前に湯船に入ってリラックスするなど副交感神経を優位にし、深部体温を上げておくのも眠りやすくするのに役立ちますが、疲労を抑えるためには、朝起きて、日中しっかりと活動するためにどんな準備をするかが鍵となります。起きてから、自律神経が目覚めて完全に機能するまで、2時間ほどかかるといわれています。そのため、必ずすべきは、起きたらすぐに朝日を浴び、コップ1杯の白湯(さゆ)を飲んで、朝食を摂ること。これを怠ると自律神経を活性化させるセロトニンの分泌がうまくいかず、体がフル回転で動けないのです」
【2】朝食はヨーグルトやシリアルなど消化のいいものを
また朝食は、自律神経を目覚めさせるために、ヨーグルトやシリアルなどの消化がいいものを食べるのがおすすめだ。
【3】朝起きてすぐの運動は避けるべし
だが、朝起きてすぐの運動は避けた方が無難。
「自律神経が目覚めていない段階で、冬場に寒い中、ウオーキングやラジオ体操などをすると、心拍や血圧、呼吸の調節が追い付かず、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。家事や仕事、運動などの活動は、起きてから2時間以上たってからが望ましいですね」
朝7時に起きる人なら、9時以降に活動を始める。その間に朝日を浴び、朝食を摂り、身支度を整えるなどしながらのんびり過ごせば、自律神経をスムーズに目覚めさせることができる。
【4】コップ1杯の水を数十分かけて飲む
「そして、水をこまめに飲むことも大切です。コップ1杯の水を数十分かけて飲むことで代謝もよくなり、トイレに行く回数も増えて、座りっぱなしを防げます」
【5】冬場の温室は19~21℃がベスト
また、神経細胞に負担をかけないためには、室温も重要。
「体の器官で最も熱を発しているのは脳です。脳はパソコンのようにファンを持っていないのですが、その代わりとなるのが鼻。『鼻は脳の冷却装置』なのです。鼻が詰まると頭がぼんやりするのは、脳が熱を持ってしまうからです。脳を冷やすには、鼻腔から涼しい空気を取り込むことが重要です」
基本は、頭寒足熱。理想的な室温は、夏は23~25℃、冬は19~21℃だ。
「アメリカのデータでは、夏のオフィスの室温は22.5℃で最も仕事の効率が上がるといわれています。でも、筋肉量の少ない日本人には寒すぎます。そのため、服は厚めにして足元に毛布をかけるなど、頭寒足熱を心がけましょう。また、マスクをしている場合は、密にならない場所で時々外し、しっかりと鼻呼吸を行って、脳に涼しい空気を送り込み、脳を冷却させることを心がけてください」
教えてくれた人
ストレッチトレーナー なぁさん
ストレッチ専門店「Nストレッチ」代表。著書を多数持つ。
医学博士・医師 梶本修身さん
東京疲労・睡眠クリニック院長。 疲労、睡眠が専門。
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/中村知史
※女性セブン2021年1月28日号
https://josei7.com/
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