酒量・住む場所・夜食…12の習慣で差がつく!「70才で認知症になる人、100才でもならない人」を全米トップ病院の医師が解説
誰もが恐れる認知症だが、70才でボケる人がいれば100才でもボケない人がいるように、発症の要因を年齢だけに見ることはできない。では、その差はどこから生まれるのか。最新研究で認知症リスクを左右するのは日々の習慣であることが明らかになってきた。全米トップの医大病院に勤める日本人医師が解説する。
教えてくれた人
山田悠史さん/米国老年医学専門医・医師
「何気ない習慣が認知症リスクに関与している」全米トップ病院の医師が警鐘
「認知症の発症は加齢や遺伝要因だけで決まるものではありません。日々の何気ない習慣が認知症リスクと関わっていることが、世界中で医学的に証明され始めています」
そう話すのは、米国老年医学専門医の山田悠史医師だ。慶應大医学部卒の山田医師は日本各地の病院で総合診療科担当医師として勤務後、2015年に渡米。米誌が選ぶ全米病院ランキング(老年医学部門)で5年連続1位を獲得したニューヨーク「マウントサイナイ医科大学」に籍を置き、老年医学と緩和医療の研究・診療に携わる。6月には『認知症になる人 ならない人ー全米トップ病院の医師が教える真実』(講談社)を上梓した。
日米両国での豊富な臨床経験や研究での知見から、「認知症のリスクを上げてしまう生活習慣がある一方、リスクを下げる方法も分かってきた」と山田医師は話す。
汚れた空気が脳にダメージ。座りっぱなしの生活も脳機能に悪影響
リスクを上げる代表例が「室内の空気の汚れ」だという。
「空気の汚れは認知症リスク要因の一つです。特に大気汚染物質として知られるPM2.5は粒子が非常に微細で、吸い込むと肺だけでなく血管にまで到達し全身を巡ってしまう。脳血管にもダメージを与えるため、認知症リスク上昇の可能性が各国の研究で指摘されているのです」(山田医師。以下「 」内は同じ)
PM2.5は屋外から入り込むだけでなく、台所での調理も発生源となり、濃度は室内のほうが高くなりやすいという。
「最も身近な例はガス調理。換気をせずガス火を使うと、容積が限られた室内のPM2.5濃度は、大規模な山火事発生時の屋外濃度を超えるほど跳ね上がることがあります。調理の際は必ず換気扇を回すか窓を開け、新鮮な空気を取り込むことを心がけてください」
屋内生活での注意点は多い。仕事をリタイアして自宅での時間が1日の大半を占めるようになれば、その過ごし方が認知症リスクと紐付いてくる。
「自宅であまり動かず、テレビの前などで長時間座ったまま過ごすことは認知症リスクを高めることになります。2024年の京都大学の研究者らの報告では、1日8時間以上座っている人は3時間未満の人に比べて認知症リスクが1.3倍高かったとの結果が出ています」
座りっぱなしの生活は運動不足による筋力低下だけでなく脳機能にも悪影響を与えるというのだ。
「座りっぱなしや運動不足の生活を続けると、糖質や脂質の代謝が悪くなり、脳に十分な栄養が行き渡らなくなります。また、長時間座っていることで体内に炎症反応も起こります。それらが結果的に脳機能の低下を招くと考えられています」
日々の生活で生じる徴候も見逃してはいけない。
「たとえば家族から『テレビの音量が大きい』と言われるようになったら要注意。聴力の低下を示すサインですが、難聴は認知症との関連が指摘されるリスクのなかで最も大きなものの一つです。WHO(世界保健機関)も、聴力に問題がある人は認知症リスクが1.9倍高いとの調査結果を示し、注意喚起しています」
聴力低下を招く生活習慣はほかにもある。
「継続的に大きな音に晒されると難聴のリスクを高めることが知られています。大音量でのカラオケ、騒がしい居酒屋での長時間滞在も避けたい」
高齢者の多くが白内障などによる視力低下に悩まされているが、そうした目の異常も認知症リスクに繋がる。
「約600万人を対象にした解析で、視力低下が認知症リスクを1.47倍高めるとのデータがあります。白内障手術を受けた人は認知症リスクが低下するとの報告もあるため、定期的な眼科受診が何より重要。聴力と同様、目からの情報入力が減ると認知機能の衰退を加速させてしまいます」