健康

精神科医が解説!10才老ける”コロナうつ”の対処法 |1日1回誰かと話す、肉を食べる、日光を浴びる…

 コロナ禍で、医療関係者の3割が「このままでは自分はうつになるのでは」と精神的に不安を感じているという。専門家ですら心乱されるのだから私たちが不調を感じるのはなんらおかしいことではない。10才年を取る前に、気がついてほしい──。

顔つきが変わり、年齢よりも10才以上老けて見える

 髪の毛から足の先まで、自粛生活によって忍び寄る“老い”は枚挙に暇がない。それらとともに、もう1つ忘れてはならない「目に見えないリスク」がある。

「それは“コロナうつ”です。いまの生活はコロナからは命を守ることができても、“心を守る”という観点で見ると不適切な面が多いのです」

 警鐘を鳴らすのは精神科医の和田秀樹さんだ。

「うつは、症状そのものがつらいことはもちろん、心身の老化を大幅に進めてしまう危険性をも伴います。実際、うつ状態になると顔つきが大きく変わり、もとの年齢よりも10才以上老けて見える人も少なくありません」(和田さん)

 現在うつ状態に陥る人の数は増えており、医療情報提供サービス会社『eヘルスケア』が行った調査によれば、都内の医師の4割が「コロナ禍で精神疾患の患者が増加した」と回答している。  

“運動しない”“外出しない”“人と話さない”は、うつになりやすい3大要素

 茗荷谷駅前医院院長で精神科医の植田尚樹さんは、いま増加している“コロナうつ”は一般的なうつ病とは少し異なると指摘する。

「厳密にいえば、コロナうつは一種の“適応障害”に当たります。環境の変化や行動の制限によって大きなストレスを抱え込むことが原因になっており、そのストレスが消失すれば症状は速やかに回復するのが特徴です。しかし、コロナによる環境の変化は自分ではどうすることもできません。そのため、長期にわたる頭痛や肩こり、気分の落ち込みといった心身への影響に悩む人は少なくありません」

 植田さんによれば、息抜きのランチや飲み会に行けないことや、汗を流すためにスポーツジムに気軽に通えないこと、専業主婦であれば夫がテレワークで家にいることも、「コロナうつ」の原因となりうるという。

「そもそも自粛生活で陥りがちな、“運動しない”“外出しない”“人と話さない”は、うつになりやすい3大要素です。というのも、これらの制約は、脳内にある『セロトニン』という神経伝達物質を減少させてしまうのです」(和田さん)

 セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、潤沢な状態にあることで精神の安定が図られることが知られている。

「うつの原因の1つとして考えられているのが、このセロトニンの減少です。セロトニンは太陽の光によって生成が促されるため、家にひとりこもりきりで運動もしない生活をすればするほど、セロトニンが減ってうつになるリスクが上がってしまいます」(和田さん)  

 ストレスで食欲が落ち、動物性たんぱく質の摂取量が減ることや、不規則な生活で睡眠不足になること、気の置けない友人とのおしゃべりができないことも、セロトニンを減らす要因だという。

『東京脳神経センター』の脳神経外科医・北條俊太郎さんはテレワークにおける姿勢にも、コロナうつのリスクが潜むと指摘する。

「自宅でのノートパソコンによる作業で首を痛めたと訴える人は、高確率で気分の落ち込みや食欲減退といったうつ状態を併発しています。首のこりは自律神経にも悪影響を及ぼし、それがうつ状態につながってしまうのです」  

 スマホやノートパソコンをのぞき込んだり、うつむいて掃除機をかけたりという、何気ない行動が、首を痛めると同時に、うつのリスクを知らず知らずのうちに高めているのだ。

うつを認知症と誤診される

 コロナうつによる影響は、まず見た目に色濃く表れる。

「特に年を重ねた人ほど、この傾向が強くなります。食欲が落ちてやせると肌の張りや艶がなくなり、それだけでも老けて見えてしまう。加えて、おしゃれはおろか入浴すらおっくうになり、活発さが失われて表情が乏しくなることも、老けて見える原因になります」(和田さん)

 変化するのは表情だけではない。うつによる不眠が続けば成長ホルモンが不足して、ターンオーバー(肌代謝)のサイクルが遅くなる。結果、メラニン色素が残って肌の色がくすんだり、古くなった角質が排出されずに肌荒れを引き起こしたりして“肌の老化”が進んでしまう。

 また、週7日入浴する人は要介護リスクが減るという調査もある。翻っていえば、入浴しなくなれば体が衰えるリスクが上がるということ。さらに高齢者であれば入浴に加え、服を着替えない、記憶力が落ちるなどの症状を認知症と取り違えられ、不適切な治療を受けているケースすらある。

→認知症と似てる老人性うつ 見つけ方と対処法

「症状を改善するために間違った薬を処方されたり、本人の意に反してリハビリのためにとデイサービスに連れ出されて、さらにうつ状態が悪化することもある。うつかどうかを見分けるポイントは、こうした症状が“いつから出たか”。通常の認知症であれば1~3年かけてゆっくり進行しますが、うつが原因の場合は2~3か月以内にすべての症状が出るのが特徴です」(和田さん・以下同)  

 うつ状態による急激な老化リスクは高齢者だけのものではない。和田さんは、40代であってもうつ状態を放置すると老化が早まると指摘する。

「人間が老いるのは、肉体ではなく感情から。感情が老化してしまえばおしゃれをしようとか肉体を動かそうという意欲が落ち、あっという間に老け込みます。感情や思考を司る前頭葉は、アクティブな人は活発に動かすことができますが、うつ状態になれば、それが停止してしまう。前頭葉の動きが鈍ることで突発的な出来事に対処できない、気持ちの切り替えがうまくいかないなどの“精神の老化”が起こるのです」

電話と肉でうつをブロック

 ひっそりと忍び寄り、脳も肉体をも蝕むコロナうつ。この「見えない敵」とどう闘えばいいのか。

 和田さんは対人関係と食生活の改善を推奨する。

「人に話を聞いてもらうことは、メンタルヘルスにおけるとても重要な要素。電話でもいいから1日1回、誰かと話ができるように心がけましょう」

 食卓に取り入れるのは、肉がいい。

「セロトニンは肉やチーズ、納豆やバナナなどに含まれるトリプトファンという物質から作られます。納豆やチーズを100g食べるのが難しければ、ステーキ肉などで効率よく摂ることもできます」  

 日光を浴びてセロトニンの生成を促すことも大切だ。日中に散歩に出ることは気分のリフレッシュと運動不足解消にもつながる。

 生活を改善しても効果がなければ病院を受診すべきだが、そのときは「不眠」がひとつの判断基準になる。

「睡眠時間には個人差があり、加齢によって睡眠時間は短くなるため“何時間眠れるか”よりも、“寝つき”を目安にしてほしい。30分程度で眠れるようならば心配はありません。途中、トイレなどで目が覚めてもすぐに眠れる人や、夜間の睡眠時間が短くても昼寝が取れている人も問題ありません」(植田さん)

 まずはカーテンを開けるところから始めたい。

★コロナうつ予防・改善法まとめ

【食べ物】

“幸せホルモン”の原料となるトリプトファンを含有する肉や納豆、チーズなどを積極的に摂取したい

【生活習慣】

 セロトニンは日光で生成されるため、なるべく日中に1度は外に出て、太陽を浴びることが望ましい。

【運動】

 軽いジョギングなどはセロトニンの分泌を促し、睡眠の質も向上させる。朝など日光を多く浴びられる時間帯を選ぶべし。

教えてくれた人

精神科医の和田秀樹さん、茗荷谷駅前医院院長・精神科医・植田尚樹さん、『東京脳神経センター』脳神経外科医・北條俊太郎さん

※女性セブン2021年2月11日号
https://josei7.com/

●コロナうつ対策に「ガムをかむ」のがいい理由|自律神経の名医が解説

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