毎日1分「骨たたき」で体が変わる! 女性に多い骨粗しょう症を予防【医師監修】
腰が曲がる、足や腕が上がらない、歩けない、立ち上がれない…骨の老化は、生活にあらゆる制約をかける。一方で、隙間時間にたたいているだけで、骨を若返らせることが可能だ。あきらめずにコツコツ続ければ、飛び上がって喜べる日も夢ではない!
高齢者の骨折は死につながる
私たちの体は、200本もの骨が組み合わさってできている。骨には、骨格を形成し、脳や内臓を保護するほか、体を支える運動器官として筋肉や関節を動かす重要な役割がある。だからこそ、元気に暮らしていた高齢者がひとたび転倒して骨折すると、急激に衰弱し、亡くなってしまうケースが多い。
女優の赤木春恵さん(享年94)は、2015年、自宅の台所で転倒して大腿骨頸部を骨折。以降、車いす生活を送り、2018年11月帰らぬ人となった。
女優の樹木希林さん(享年75)は亡くなる1か月前に知人宅の台所で左大腿骨を骨折し、手術を受けたが危篤状態に。そのまま旅立ちの日を迎えてしまった。
→樹木希林さんも… 高齢女性が恐れるべき「死を招く骨折」とは
高齢になってからの骨折は寝たきりになるリスクが高く、病気の悪化や認知症などによって寿命を縮めやすいのだ。日本骨折治療学会によれば、女性の高齢者で、脚のつけ根を骨折する患者は男性の4倍近くにもなるという。なぜ、これほどまで女性の方が骨折しやすいのか。
「骨の研究では、まだわからないことが多い」と前置きしつつ、光伸メディカルクリニック院長の中村光伸さんは次のように語る。
「男女とも、20才を過ぎた頃から加齢とともに骨が弱くなっていきます。男性は体重に相関して骨が強くなりますが、女性の場合は筋肉量が関係していることがわかっている。男女で骨を強くする因子が異なっているのです。しかし、日本の女性は、若いときに行った無茶なダイエットや、運動不足が原因で筋肉量が少ない人が多い。それに比例して骨も弱くなっていると考えられます」
体の中で、骨より硬い組織が歯だ。歯は、永久歯に生え変わったら、死ぬまでその歯を守り抜かなければいけない。骨に対しても似たようなイメージを持っているかもしれないが、骨は歯とは比べものにならないほど柔軟な組織だ。福岡歯科大学客員教授の平田雅人さんが解説する。
「骨の中には、骨を強くする『骨芽細胞(こつがさいぼう)』と骨を壊す『破骨細胞(はこつさいぼう)』という2つの細胞があり、この2つが連携して新陳代謝を繰り返すことで骨が強くなります。歯は欠けると元に戻りませんが、骨折しても再びくっつくのは新陳代謝が行われているおかげです。成長に合わせて骨が太く、強くなるのは、『破骨細胞』が骨の中心にある『髄腔(ずいくう)』という血球のもとになる細胞を貯蔵する空間を押し広げ、広がった骨の表面に『骨芽細胞』が付着して強化するからです」
体を支えるすべての骨は、こうした2つの細胞による新陳代謝によって約5年で入れ替わる。つまり、何才になってもこの新陳代謝がうまく行われている限り、骨は成長し続け、元気に歩き回れるということだ。
骨粗しょう症になると死亡率が2倍に
その鍵を握るのが女性ホルモンだ。女性ホルモンには骨を壊す破骨細胞の働きを抑え、骨を強くする骨芽細胞の働きをサポートする力がある。
「ですが、閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が減ると骨芽細胞の働きが鈍くなり、破骨細胞の働きが活発になる。すると、骨がもろくなってしまいます。閉経以外にも、無理なダイエットなど過度なストレスを与えたことで生理不順になったり、生理が止まったりすると女性ホルモンは急速に欠乏状態になります」(平田さん)
これによって、骨粗しょう症が引き起こされる。国内に1300万人いるという骨粗しょう症患者のうち、1000万人は女性だということから、いかに女性の骨がもろいのかわかる。
「からだの学校・湧氣塾(ゆうきじゅく)」校長で、ヨガのインターナショナルライセンスを持つ、ボディー・マインドカウンセラーの森千恕(せんじょ)さんは、骨粗しょう症による健康リスクは骨折だけではないと話す。
「骨の内部にある骨髄では、血液や、体を病気から守る免疫T細胞などがつくられています。また、全身の細胞にカルシウムを供給するといった役割もある。そのため、骨折しなくても、骨粗しょう症になっただけで死亡率が2倍に上がるといわれています」
もろい骨は、命を縮めるサインなのだ。さらに、近年、骨から分泌される「オステオカルシン」というホルモンの働きに注目が集まっている。
「このオステオカルシンは、記憶力や認知機能、生殖能力を向上させるほか、血糖値を下げて、全身の代謝を活性化させたり、活性酸素を除去するなど多くのアンチエイジング効果があることがわかってきました。また、同じく骨から分泌されるホルモン『オステオポンチン』には免疫機能を高める働きがあるといわれています」(森さん)
「オステオカルシン」には肥満や糖尿病を防止する働きもあるという。平田さんが話す。
「肥満や糖尿病は、インスリンの分泌不足や作用不足が原因です。インスリンはすい臓から分泌されますが、オステオカルシンは分泌を促す働きがある。それによって血糖値の急上昇を防いだり、脂肪細胞を分解して中性脂肪を下げることが期待できます」
骨がもろくなるということは、優れたホルモンの恩恵を受けられなくなること。若々しさを保つためにも、骨の強化は欠かせないのだ。
→骨ホルモン「オステオカルシン」を増やす|「かかと落とし」のながら骨活で全身若返り
座ったままできる「コツコツ骨たたき」で骨粗しょう症予防
骨粗しょう症を予防できる『コツコツ骨たたき』をして、骨を強くしましょう。わずか1分ほどで行えます。座ったままできるので、転ぶ心配もなく安心!
「骨たたきは一日のいつ行っても構いません。また、『ひざコツコツ』は1度に100回やっても、10回ずつ分割してもOKです」(中村さん)
●ひざコツコツ
両手にこぶしをつくり、右手で右足を、左手で左足をたたく。小指側を下にして、胸の高さから垂直にこぶしを落とすようにたたくと刺激が強くなり効果UP。絶対にひざのお皿と太ももは避けること。左右合わせて1日100回が目標。
●腕コツコツ
ひじを軽く曲げ、反対の手のこぶしで腕をたたく。10回たたいたら反対の腕も同様に。大切な神経が通っているひじは絶対に避けてたたくこと。回数を多くたたくのは問題ないが、痛みを感じたり、強くたたきすぎるのはNG。
教えてくれた人
光伸メディカルクリニック院長・中村光伸さん、福岡歯科大学客員教授・平田雅人さん、ボディー・マインドカウンセラー・森千恕さん
イラスト/あべゆきこ
※女性セブン2021年3月18日号
https://josei7.com/
●骨粗しょう症を遠ざける!骨を鍛える「骨トレーニング」|骨を強くする食事と9つの習慣