医療費や介護費の合算で還付金が増える「世帯合算」など世帯・扶養を変えて得するお金
今までバラバラに申請してきた医療費や介護サービス費などを「世帯合算」することで、金銭的にお得になるメリットがあるという。マネーのスペシャリストがポイントを徹底解説。さらに世帯・扶養を変えればお得になる制度もあるというから、これを機会にぜひ見直しをしてみて。
「世帯合算」で自己負担限度額を超える
さまざまな費用を世帯でまとめる「世帯合算」という仕組みを見ていこう。
税理士の岡野雄志さんのアドバイス。
「世帯合算は同一世帯で医療費や介護サービス費を合算すること。そうすることで自己負担限度額を上回り、還付金を受けやすくなるんです」
医療費には「高額療養費制度」というものがある。通院、入院、薬代など1か月の医療費が一定の基準を超えると、超過分が還付される仕組みだ。夫婦ともに70才未満で年金生活の住民税非課税世帯であれば、自己負担限度額は1人あたり3万5400円。それを超える分は、申請すれば払い戻しを受けられる。
ただ、限度額に達しない限り、すべて自己負担となるため、高額療養費制度を活用できない。たとえば前述の夫婦の場合、1か月の医療費が夫3万円、妻3万円なら2人とも限度額未満のため払い戻しは受けられない。
「1人で上限額に達するのは意外にハードルが高い。ですが、高額療養費は世帯で合算して申請でき、そうすることで限度額を超えることもしばしばあります」(岡野さん)
前述の夫婦の場合、夫婦それぞれ3万円の医療費を合算した6万円に、自己負担限度額3万5400円が適用され、差額の約2万5000円が払い戻される。さらに、世帯合算は医療費だけでなく、「高額介護サービス費」でも活用できる。介護サービスの自己負担限度額は、住民税非課税世帯の場合、1人あたり月2万4600円。世帯合算した夫婦の介護サービス費がそれを超えた分は、払い戻しが可能となる。
加えて、月ごとの「高額療養費」と「高額介護サービス費」の還付を受けたうえで、年間で世帯の医療費・介護費の総額が一定額(70才未満の住民税非課税世帯なら34万円)を超えた場合、「高額医療・高額介護合算療養費」制度によって、さらなる払い戻しを受けることもできる。
何かと不安の尽きない将来の家計。簡単な手続きで不安が拭えるのなら、いっそ家族構成を変えてみるのはどうだろうか。
→高額介護サービス費制度とは?自己負担上限金額、申請方法【介護の基礎知識】公的制度<8>
【世帯・扶養を変えれば得するお金】まとめ
家族構成を変えるだけで、お得になる制度がいくつかある。ちょっとした手続きだけで済むので、現状を把握して賢く利用してみては。
【世帯分離】
●「老親」と「子供夫婦」を分離する
・「介護保険料」の軽減:社会保障費は世帯ごとの所得に基づいて計算されるため、所得が高いほど自己負担額も大きくなる。世帯を分ければ親の所得にのみ基づいて計算され、高齢の単身世帯では自己負担額が下がることが多い。
・「高額介護サービス費」の自己負担額軽減:介護サービスの自己負担額は、世帯全体の所得に応じて上限が決まる。上限を超えた分は「高額介護サービス費」として払い戻されるので、世帯を分けて所得を小さくし、上限を下げた方が戻ってくるお金も多くなる。
・後期高齢者医療保険料の軽減:75才以上の世代が加入する「後期高齢者医療保険」の保険料も、世帯全体の年収が算定基準。世帯分離を行うことで、保険料の納付額も下げることができる。
・国民健康保険料の軽減:世帯分離を行えば世帯としての年収は減少するので、収入によって変動する国民健康保険料の負担額も下げることができる。
●「老親」と「現役世代の子供」を分離する
「年金生活者支援給付金」の「同一世帯の全員が住民税非課税」という条件を、現役世代の子供と年金暮らしの夫婦が世帯分離をすることでクリアできる。
【扶養】
●「年金暮らしの親」を扶養に入れる
65才未満なら年金収入が年108万円以下、65才以上なら年158万円以下で、生計を一にしてれば、親を扶養に入れられる。親の年齢に応じた扶養控除額が、所得から差し引かれる。
●「配偶者」の扶養に入る
パート収入が年間130万円未満(一定規模以上の企業などの要件を満たす場合は106万円まで)などの条件を満たせば、配偶者の扶養に入れる。健康保険料も厚生年金保険料も払わなくて済む。
●「子供」の扶養を替える
16才未満の子を扶養に入れると、その人数に応じて住民税の所得非課税上限額が上がる。子供を収入の少ない妻(夫)の扶養に入れることで、住民税を非課税にできることがある。
【世帯合算】
●「医療費」「介護費」を合算する
・高額療養費制度:通院、入院、薬代など1か月の医療費が自己負担上限額を超えると、超過分が還付される制度。医療費を世帯で合算して申請することで、上限額を超えやすくなる。
・高額介護サービス費制度:介護保険が適用される介護サービスの費用が自己負担上限額を超えると、超過分が還付される制度。医療費と同様、世帯で合算して申請することで上限額を超えやすくなる。
・高額医療・高額介護合算療養費制度:月ごとの「高額療養費」と「高額介護サービス費」の還付を受けたうえで、年間で世帯の医療費・介護費の総額が一定額を超えた場合、還付が受けられる。世帯で合算して申請することで、上限額を超えやすくなる。
教えてくれた人
税理士・岡野雄志さん
※女性セブン2021年1月28日号
https://josei7.com/
●申請すれば戻ってくるお金「健康保険」「介護保険」「夫の年金」