申請すれば戻ってくるお金「健康保険」「介護保険」「夫の年金」【役立ち情報再掲載】
生前の親にかかった医療費や、認知症の親の介護費用がこれからかかるという人も、覚えておきたいのが公的保険の還付金や控除。民間の医療保険の保険金ばかりに意識が向き、いざという時に忘れがちだ。
高額な医療・介護費が戻ってくる制度
健康保険には、医療費が高額になった際、自己負担額を一定額以下に抑える「高額療養費制度」がある。たとえば、平均月収28万~50万円の世帯の場合、自己負担の上限は月額8万7430円。仮に1か月に医療費が100万円かかったとしても、それ以上かかることはない。本人の死後も、申請すれば遺族が還付金を受け取れる。
高額な介護サービスも同様だ。1か月の自己負担額が一定の上限を超えると、超過分が「高額介護サービス費」として払い戻される制度がある。 現役並みの収入がある世帯の場合、自己負担の上限額は4万4400円だ。ただし、老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費などは対象にならないので注意したい。これも、親の死後でも請求できる。
さらに、医療費も介護費も、これらの制度を活用してもなお、年間にすると負担が重い場合、高額な医療費と介護費を合算し、上限額を超えた場合に超過分を支給する「高額医療・高額介護合算療養費制度」もある。
たとえば、平均月収28万~50万円の世帯なら、自己負担の上限は年間67万円。それを超えると還付を受けられる。
世帯分離で介護費用を軽減
介護費用についてはさらに安くできる裏技もある。
静岡県在住の主婦、澤田保子さん(仮名・55才)は、同居している親が認知症になり、その介護費用が家計を圧迫していたが、「世帯分離」を行ってずいぶん楽になったという。
「父の住民票を移して、別世帯にしました。介護保険サービスは、世帯収入で自己負担額の上限が決まります。父は年金収入しかないため負担額が下がり、それまでの上限額月額4万4400円から、2万4600円と、月に2万円も安くなりました」
同居していても世帯を分けることは認められている。積極的に活用したい。
「夫の年金」諦めていた1000万円が戻ってきた
年金の受給開始年齢は、通常65才からだが、受給を60才からに繰り上げると30%減額され、逆に70才まで繰り下げると42%増額されるという制度がある。
この、何才から受給開始するかで頭を悩ます人は多い。
繰り下げた方が圧倒的にお得である半面、受給開始できる年齢が遅いため、年金をほとんど受け取れないまま寿命を迎えることになる可能性もあるからだ。
だが、一度「繰り下げ」を選択した後でも、その選択を「なかったこと」にできることはあまり知られていない。
神奈川県在住の主婦、佐藤香さん(仮名・67才)が話す。
「夫は、年金の受給開始を70才からにしていたのですが、67才でがんになってしまいました。夫は2年後の69才で他界したため、1円も年金を受け取れなかったと諦めていたのですが、年金事務所に相談したところ、65才にさかのぼって年金を受け取れることを知りました」
佐藤さんは、65才から69才までの4年間で受け取っていたはずの年金をすぐに請求したところ、国民年金と厚生年金を合わせて、「未支給年金」として約1000万円を一括で受け取ることができた。
井戸さんが話す。
「年金を受け取る権利は5年と定められています。そのため、5年までなら夫が存命でも、死亡していても一括で受け取ることができるのです」
ただ、気をつけなければならないのは、一旦70才で受給を開始してしまうと「なかったこと」にはできない。受給前だからこそ適用される。
また、妻が夫より年下で、夫が65才から受給を開始した場合、妻は65才になるまで月約3万2000円の「加給年金」を受け取れるが、夫が70才からの繰り下げ受給を選ぶと、この加給年金はもらえなくなる。年金の受け取り方で金額が大きく変わるため、慎重に選択したい。
※女性セブン2019年1月31日号