「古い通帳はいつまで保管すべき?」期間や破棄方法、すぐに捨てないほうがいい理由。デジタル通帳のメリットデメリットも【FP解説】
電子マネーやオンラインバンキングなどデジタル化が進む中、紙の「通帳」の管理はどうしたらよいのだろうか。シニア世代にとって馴染深い通帳だが、繰り越した古いものが何冊も溜まっている人もいるのではないだろうか。そこで通帳の保管期限や処分方法などについて、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
「古い通帳」どうしていますか?
通帳に記帳された内容をよく見ると、意外に多くの情報が含まれていることに気づきます。
左端には「取引年月日」、その横には「摘要欄(例:給与振込・口座振替など)」があり、次に「お支払金額」「お預り金額」「差引残高」が並びます。
この数行の記録から、「収入の金額」「毎月の支出の傾向」「預金残高の推移」など、生活状況やお金の使い方が一目で分かります。また、生前贈与や相続などで大きな金額の入出金がある場合も、通帳を見るだけで確認できます。つまり、通帳は、これまでのお金の歩みを記録したノートのようなものです。
さて、通帳を繰り越したあと(古い通帳)は、いったいどのくらいの期間、保管しておくべきなのでしょうか。
古い通帳は「少なくとも7年、できれば10年保管する」
古い通帳をどこまで保管するべきか、相続や税務調査の場面を考えると意外に重要な問題です。使わなくなった通帳は保管に場所を取るため処分したくなりますが、相続税や贈与税の確認資料となる点を踏まえると、少なくとも7年間、できれば10年間は保管しておくことをおすすめします。
まず、贈与税には原則6年の時効が設けられていて、時効が過ぎると納税義務が消失します。脱税目的で贈与を隠すなどの悪質な場合は7年となります。また、令和6年1月1日以降の贈与については、生前贈与加算(持ち戻し)期間が相続開始前3年から7年へと拡大されました(経過措置あり)。
つまり、相続開始から7年前の贈与まで相続財産に加算されることになるため、贈与の確認資料となる通帳の保管期間は少なくとも7年を見込む必要があります。
相続が発生すると、税務署は被相続人(亡くなったかた)の預金の入出金を詳細に確認します。一般的には、死亡直前から過去3〜5年程度の取引をさかのぼって調べますが、生前贈与や名義預金、不自然な資金移動が疑われる場合には、過去10年分の通帳提出を求められることもあります。なお、制度変更の影響で、今後は調査でも7年分を確認される可能性があります。
すでに通帳を破棄している場合でも、相続発生時には金融機関に手数料を支払うことで取引履歴を取り寄せることができます。
通帳の保管・廃棄方法
紙の通帳の保管方法としては、年度ごとに封筒やファイルに分けて整理しておくと、相続手続きの際に必要な部分をすぐに取り出せて便利です。
なお、古い通帳を処分する際には、氏名・口座番号などの個人情報を油性マジックなどで確実に塗りつぶした上で、シュレッダーやハサミで細かく切り刻んでから廃棄することが必要です。
このように、通帳は「繰り越したらすぐ捨ててよい」ものではなく、相続や贈与の確認資料として長期間保管すべき重要な書類です。相続を見据える場合には、7年間、可能であれば10年間の保管を目安にしておくと安心です。
※参照 相続税法第37条(贈与税についての更正、決定等の期間制限の特則)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073#Mp-Ch_5
※参照 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
デジタル通帳のメリット・デメリット
紙の通帳について理解したところで、近年増えている「デジタル通帳」についても触れておきます。
最近では、銀行の通帳も「紙」から「デジタル」へと移行が進んでおり、金融機関側も積極的にデジタル通帳(インターネット通帳)への切り替えを推奨しています。名称も「Eco通帳」「ダイレクト通帳」「WEB通帳」など、銀行によってさまざまです。
デジタル通帳は、スマートフォンやパソコンから預金残高や入出金履歴をいつでも確認できる便利なサービスで、紙資源の削減にもつながり、環境への配慮という点でも注目されています。デジタル通帳のメリットは次の通りです。
・通帳記帳や新通帳発行の手間がなくなる
・紛失や盗難の心配がない
・ATMや窓口に行く手間を省ける
・いつでもスマホ・PCで残高や取引明細を確認できる
・長期間の取引履歴を簡単に照会・印刷できる
さらに、デジタル通帳の利用はインターネットバンキング(ダイレクトバンキング)の利用にもつながります。これにより、振込や公共料金の支払い、税金の納付などが自宅で簡単に行えるようになります。
一方で、高齢のかたにとっては、スマホやパソコンの操作に慣れるまで時間がかかるという課題もあります。また、デジタル通帳は紙の通帳のように「目に見える形で残らない」ため、相続が発生した際に 遺族が口座の存在に気づきにくいというデメリットがあります。
インターネットバンキングのIDやパスワードを家族が知らないままだと、口座の存在を見落とす可能性がある点には注意が必要です。
また、デジタル通帳も相続や贈与の確認資料として活用できます。ただし、銀行によって閲覧の期限は異なる場合があるので?確認しておくといいでしょう。
デジタル通帳のメリット・デメリット
【メリット】
・通帳記帳や通帳発行の手間がなくなる。
・通帳の紛失、盗難の心配がなくなる。
・ATMや銀行窓口に行く時間を節約できる。
・いつでもスマホやパソコンで残高、取引明細の確認ができる。
・長期間の照会が手軽にできる。
・ネット上で手軽に各種振込や税金・公共料金の支払ができる。
【デメリット】
・所有するスマホやパソコンが古い機種の場合、サービスが利用できない可能性がある 。
・窓口での取引では、キャッシュカードのほかに本人確認書類や印鑑が求められる場合がある。
・デジタル通帳に切り替えた場合、紙の通帳は使えない。
・デジタル通帳は、IDやパスワードの管理が必要なので、忘れたり知られないままだと家族が口座の存在に気づけないリスクがある。
※参照/一般社団法人 全国銀行協会 「デジタル通帳に切り替えると何が変わる?」
https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-e/17399
高齢者が注意すべき通帳の管理
高齢になると、通帳の置き場所を忘れてしまったり、複数の銀行口座を把握できなくなってしまったりするケースも少なくありません。認知症を発症すると、自分で入出金の記録を確認できなくなり、家族が状況を把握するまでに時間がかかるため、相続発生時に通帳の所在がわからず手続きが遅れることもあります。
また、デジタル通帳を利用している場合は、紙のように形が残らないため、家族が口座の存在に気づかず、残高がそのまま放置されてしまうリスクもあります。
高齢の家族がいる場合は、口座の数や保管場所、利用している金融機関などをエンディングノートにまとめ、家族と共有しておくなど、早めの情報整理が大切です。
古い通帳の管理について【まとめ】
通帳は繰り越した場合でもすぐには捨てず、最低でも7年間、可能であれば10年間の保管を目安にしておくと安心です。紙の通帳は形として残るため、相続の際に家族が見つけやすいというメリットがありますが、保管場所を忘れたり紛失したりするリスクもあります。保管場所を家族で共有しておくとよいでしょう。
また、金融機関で過去の取引履歴を発行してもらうことはできますが、手数料がかかる場合もある点には注意が必要です。一方、デジタル通帳は便利な反面、紙と違って目に見える形で残らないため、家族が口座の存在に気づけない場合があります。エンディングノートなどに、紙の通帳の保管場所だけでなく、利用している銀行名、デジタル通帳のID・パスワードの管理方法なども記載し、家族と共有しておくと安心です。
