認知症の家族が起こすトラブルへの対処法|徘徊、万引き、火の不始末…施設退去など
親が認知症に…。家族のショックは大きいかもしれない。認知症を患う同居する親が起こすトラブルに備えた対策を専門家に教えてもらった。
徘徊や事故のリスクに備えるためにできること
親のみならず、高齢の夫婦世帯にも問題は生じる。徐々に認知症が進行する夫を介護する東京都在住の70代女性が語る。
「目を離すと夫が自転車で出かけて、迷子になってしまいます。そのうち人に怪我でもさせないかと不安な毎日です」
認知症になっても自動車や自転車の運転を続ける人は少なくない。介護評論家の佐藤恒伯氏が解説する。
「認知症が進むと、外出願望が強く出る方が少なからずいます。『仕事のため』とか『親しい人に会うため』など、本人にとっては明確な理由があるという認識です。
そこで『出ていっちゃだめ』と禁止するのは逆効果。『お茶を飲んでからにしましょう』『もう遅いから明日にしましょう』など、意識が他に向くように誘導するのが効果的です」
認知症保険を検討する手も
一方、徘徊して物を壊すなどの損害を出してしまった場合、これを補償する制度がある。
認知症の保険に詳しいファイナンシャルプランナーの小吹文紀氏が解説する。
「物を壊したり、事故を起こしたときの損害を補償する『個人賠償責任保険』があります。最近では自治体が公費で用意するケースも増えてきており、最大数億円まで補償されます。ケアマネジャーや地域の高齢福祉課、地域包括支援センターに問い合わせましょう」
→地域包括支援センターとは?役割と利用方法【介護の基礎知識】公的制度<5>
同居する認知症家族の困った…に、どう対処する?
●夜間に寝てくれない
・対策の考え方:昼間に運動して疲れてもらう
・具体的な対策・対応:通所介護のレクリエーションを受ける
・費用:要介護1:約1000円(1回)※7時間以上8時間未満利用
→認知症の人が通う料理体験デイサービスはポップだった!【オバ記者は見た!新しいシニアライフ】【連載】
●着替えや入浴を拒否
・対策の考え方:無理に着替えさせたり風呂に入れたりせずに、介護サービスを組み込む
・具体的な対策・対応:訪問介護や通所介護の入浴サービスを利用する
・費用:訪問介護・約250円(1回20〜30分未満)、通所介護:約1000〜1500円(1回)
→介護サービスは案外多い!知って得する公的制度、自治体・民間の支援を紹介
●火の不始末
・対策の考え方:なるべく火から遠ざける
・具体的な対策・対応:家族が毎回元栓を締める、IH式調理器に交換する
・費用:約1万〜5万円(IH式調理器)
●車や自転車で事故
・対策の考え方:免許返納や廃車を進めながら損害保険の加入を考える
・具体的な対策・対応:自治体や民間の認知症保険に加入する
・費用:自治体:無料、民間(月額):約3000〜5000円
→人生100年時代に…50代から本当に必要な介護保険&認知症保険6選
●万引きをする
・対策の考え方:同じお店で起こしやすいので店をチェックする
・具体的な対策・対応:店員と連絡を取り合い弁償する
・費用:万引きした商品の代金
●トイレ粗相の頻度が増え弄便がみられる
・対策の考え方:家族での介護が限界になってくるので施設入居も考える
・具体的な対策・対応:「認知症グループホーム」などの施設へ入居する
・費用:入居一時金:0〜100万円、月額:10万〜20万円
「施設暮らし」はケアの限度の確認を
要介護度が上がり、介護施設に入居している場合も、トラブルが原因で施設を追い出される懸念が出てくる。
「住宅型の老人ホームに入居する父が、夜中に隣の部屋に入り込んで他の入居者を殴るなどのトラブルを立て続けに起こし、退去を勧告されました」
と言うのは、埼玉県在住の50代男性だ。
前出の佐藤氏は「施設に入る前にどんな状態まで看てもらえるのか、入念な確認が重要です」と指摘する。
「入居する前に利用する側が施設のスペックを理解していないと、想定外の事態に直面することになりかねません。
施設側に『うちでは手に負えない』と判断されることもあります。医師が常駐していれば入居者が暴れても安定剤などで対応できますが、そうでない場合は“施設のスペックが足りない”ということです」
また、認知症も身体の衰えも進行していよいよというときに、施設が「看取りに対応していない」というケースもある。あらかじめ終身で入居できる「認知症グループホーム」を選択肢に入れるなどの備えが大切だ。